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死霊屋敷の攻防戦は続く、奴らもバカじゃない、次々と攻略法を仕掛けて来た。



またもう一度エレファントガンの轟音が鳴り響き、入り口ゲートで死骸をどけて道を作る2体のデカいアナザーの内一体の腕を吹き飛ばしたが、道路から更にもう1体でかいアナザーが姿を現し、突入できずにいるヒューマンやアナザーの為に路上に転がる死体の山を片付けて道を作り始めた。


俺は明石に振り向いた。


「景行!あのでかい奴は厄介だよ!

 第1バリケードに誰か送って栞菜に『加奈・アゼネトレシュ』を届けて栞菜とポジションを替わらせるべきだと思う!」

「彩斗、満点の答えだな!

 四郎に『加奈・アゼネトレシュ』を持って行き栞菜がでかいアナザーを始末、四郎は栞菜とポジションを替わって側面を守ってくれ!」

「よし来た!」


四郎がニヤリとして鐘楼を駆け下りて行った。

そして、『加奈・アゼネトレシュ』を肩に担ぎ、予備の弾を入れたバッグを肩にかけて第1バリケードに走って行った。

そして栞菜にエレファントガンとバッグを投げ渡し、中央にポジションを変えた栞菜の代わりに側面から回り込む敵に備えた。

栞菜がすかさず『加奈・アゼネトレシュ』を構えて2発撃ち腕を吹き飛ばされた奴ともう1体のデカいアナザーを射殺した。

1体はそのまま灰の山になり、もう1体は腐肉の塊になって余計に奴らの侵入口を塞いだ。

あまり銃などの飛び道具を持っていない奴らからの射撃の勢いは弱く、手持ちの武器のリーチが届くまでしゃにむに突き進んでこなければならないが、今の所真鈴と栞菜、四郎が加わったバリケード班は奴らを寄せ付ける前に殺しまくっていた。

リリーの方角からもう一度エレファントガンの轟音が聞こえ、残った1体のデカいアナザーの頭を吹き飛ばした。


「彩斗!

 今の所入口付近のデカい奴らは始末したわ!

 でも、後続の奴らの列の中にもう何体かでかい奴が混じっているよ!」

「リリー!コピー!

 栞菜!今の聞いたか!

 まだでかい奴らが来るぞ!」

「彩斗、コピー!

 う~弾が足りなくなるかも、バッグに40発も無いですぅ!

 誰かドンキで買って来て欲しいですぅ!」

「うふふ、栞菜、私の故郷の高知県にはドン・キホーテ無いんだよ~!」


派手な銃声に混じって真鈴の声が割り込んだ。


「…ええええええ~!真鈴!それ、本当ですかぁ!

 本当なんですかぁ~!」

「本当よ栞菜!

 そら!またでかい奴が顔を出したわ!

 撃って!」


そしてまた栞菜のエレファントガンが火を噴いた。

この撃ち合いの最中に何を呑気な事をと思ったが、俺も真鈴の故郷の高知県にドン・キホーテが無い事に少しびっくりした。


入り口ゲートはデカいアナザーの灰の山と腐肉の塊で塞がれて侵入してくる奴らの勢いが落ちたが、ドローンの映像で見るとまだまだでかいアナザーが奴らの列をかき分け吠えながら死霊屋敷への道をこちらに進んで来ていた。

俺は明石に顔を向けた。


「景行、そろそろドローンを…。」

「そうだな彩斗、あのでかい奴を通してから少し後続の方達にお待ちいただこうか。」


俺はクラに火炎瓶を積んだドローンをでかいアナザー達のすぐ後ろに突っ込ませることを命令した。

こうすれば火炎瓶ドローンが作り出す火の壁で行進を途切れさせ、その間に前の奴らを減らせば少し息を付ける。


「コピー!

 大爆発させます!

 これは見ものですよ!

 お見逃しなく!」


クラの声が聞こえ、上空を飛ぶ監視用ドローンの画像で火炎瓶ドローンが奴らの行進の列に突っ込む瞬間を見た。

3つの火球と火柱。

ガソリンに砂糖やその他薬品を混ぜ込み、粘り気と燃焼温度を上げた物が突入の衝撃で割れ、ビンの横に張り付けた薬品を染み込ませたものと化学反応して爆発的に発火し、ナパーム化したガソリンが周囲のヒューマンやアナザーに降り注いだ。

一度これが体にこびりつくと地面に転がったり布か何かで叩いてもなかなか消えず、人体を燃焼させながら体の奥へ奥へと焼き進んでゆく。

3機の火炎瓶ドローンの突入で優に100を下らない奴らが火だるまになり地面を転げまわったが火は全く消えず、更にその周囲のものに火を点けて行く。

地獄のような光景が生まれた。

火炎地獄だな…。

俺があそこにいなくて良かったと思いながら、今画面に映っているあの地獄を作り出したのは俺達だと思い返して俺は身震いした。

炎の壁の先を進んでいた最後尾にいたでかいアナザーが炎を消して通路を作ろうと炎の壁に身体を投げ出した。

自分の体で火を消そうと思ったのだろうが、あいにくとナパーム化した炎は容易に消えず、アナザーの再生能力を遥かに上回る勢いでその体を焼きながら体の奥に焼き進んでゆく。

火だるまになったでかいアナザーはこの鐘楼にまで聞こえるような絶叫を上げながら火だるまの身体で転げまわり、さらに多くのヒューマンやアナザーを巻き添えにしていった。


「これでしばらく後続を断ち切れるな。

 彩斗、今のうちに火の壁から前の奴らを減らすぞ。

 出来れば前に進んだ奴らを全滅させたいところだ。

 そうなれば俺達は奴らの4000以上は始末できたと言う訳だ。」


明石は冷静な口調で言い、眉一つ動かさずに画面を見ていた。

400年以上戦場を見て来た男はこれ位の地獄では動じないのだろう。


俺は気を取り直して入り口ゲートや塀を見回した。

入り口ゲートはかなり奴らの勢いが減り、充分持ちこたえられそうだ。

塀の方は、塀を乗り越えた奴らが次々と堀に落ち続け、徐々に堀が埋まって行く。

あの堀の下ではかなりの奴らが押しつぶされているだろう。

もう、1000を超える程は死んでいるだろうか。

5メートルの深さに掘った堀は鐘楼から見てもかなり浅くなっているが、依然塀を乗り越えた奴らで埋まり続けていた。


その間鐘楼と俺達の家にいる狙撃班が銃などの飛び道具を持った奴らを優先的に狙撃し続けていた。

塀際を守備している松浦達も堀から登ってくる奴らを射撃して数を減らし続けていた。


炎の壁がどれだけ奴らの後続を足止めできるだろうか。

その間に炎の先の奴らを全滅させることが出来れば4000以上始末した事になると明石は言った。

だが、4000始末してもまだ9000からの奴らがいるのだ。


『加奈・アゼネトレシュ』の轟音が立て続けに鳴り響いて、でかいアナザーの死体をどかそうとした新手のデカいアナザーの頭を吹き飛ばした。


その時、入口ゲートの方角から、宙を飛んで数体のアナザーがバリケード班のど真ん中に飛び降りて来て、体を丸めて着地すると立ち上がり手持ちの刃物を振りかざしてバリケード班に襲い掛かった。

栞菜は『加奈・アゼネトレシュ』を投げ捨てククリナイフを抜き、危うくバリケード班の初老の男性を斬りつけるアナザーの刃を撥ね退け、四郎も射撃を中止してサーベルを抜いて宙を飛んで飛び込んできたアナザーと切り結んだ。


バリケード班のヒューマン達が混乱しているが真鈴が入り口ゲートに射撃を続けながら必死に声を掛け、飛んできたアナザーは栞菜と四郎に任せて入り口ゲートを射撃するように叫んでいた。


「おお!奴ら何を!」


俺と明石は双眼鏡を覗き込んだ。

道路ではでかいアナザーが次々と集まって来たアナザーを掴んで死霊屋敷の敷地に放り込んでいた。


「くそ!喜朗おじ、聞こえるか!

 やつら、アナザーを中に放り込んできている!

 バリケード班が崩れる!

 加勢に行ってくれ!」

「判った任せろ!」


喜朗おじの声が聞こえ、ガレージから物凄い咆哮が聞こえるとハルク化した喜朗おじが凶悪な棘付き棍棒を振りかざして飛び出し、バリケードの加勢に行った。

だが、入り口ゲートだけでなく、塀の所からも何体かのアナザーがでかいアナザーに投げられて死霊屋敷の敷地に飛び込んで来た。


「くそ!彩斗!俺が行く!

 ここの指揮は任せたぞ!」


そう言うと明石は江雪左文字を抜いて鐘楼から飛び降りると、新手のアナザーが降って来た塀に向かって怒号を上げながら走って行った。


「圭子さん!中に飛び込んできたアナザーを撃ち殺して!

 景行やバリケード班を援護してくれ!」

「彩斗!コピーよ!

 各狙撃班!中に飛び込んできたアナザーを撃ち殺して!

 BC班は入り口ゲート!D班は塀の方向を撃て!」


そして圭子さんが鐘楼にいる狙撃班の母親達に塀の方向のアナザーを撃つように命じ、各自狙撃を始めた。

俺はちらりと彼女達の足元を見た空の薬莢とマガジンが沢山転がっている。

強力なSR-25狙撃銃の弾丸は既に3分の2は使い切っていた。


俺はドローンの映像を見た。

炎の壁はまだ後続を通せんぼしている、後続の奴らが土を掛けて必死に火を消し止めようとしていたがまだしばらくは通れないだろう。


そして、炎の壁の先にはまだ奴らが2000位がいて、死霊屋敷への突入を続けていた。


俺は凛に、誰かが鐘楼にSR-25の予備の弾丸を持って来させるように、そして凛とクラに入り口ゲートと塀に送る増援部隊の準備を命じた。


その間もアナザーは次々と宙を飛んで死霊屋敷の敷地に飛び込んで来た。

担架を担いだ救護班が第1バリケードに走って行く。

見ると、バリケード班の母親らしき女性が腕を斬り裂かれて倒れていた。

遂にバリケード班に負傷者が出た。


俺はガレージ地下と死霊屋敷の子供達やユキ達に隣の巨石まで避難する準備をするように命じ、スコルピオの分隊に地下道の出口を守備して子供達が避難して来たら巨石の結界まで誘導するように伝えた。


俺の隣でSR-25を撃っていた大宮さんがウッと唸り崩れ落ちた。

見ると大宮さんのヘルメットに穴が開きそこから血が噴き出している。

俺はインターコムに鐘楼に負傷者と叫び、大宮さんのSR-25を取り、敷地に飛び込んできたアナザーに射撃を開始した。


救護班が階段を駆けあがって来て、倒れて指をぴくぴくしている大宮さのヘルメットを脱がした。

そして、むぅ、と声を漏らした。

かなり深刻そうな傷の様だった。


「こては…とても…。」


射撃を続ける圭子さんが救護班に尋ねた。


「彼女のメダルは!

 彼女のメダルは何色なの!」

「待ってください…青です!青のメダルです!」


圭子さんが射撃をやめ、大宮さんの身体のそばにしゃがみこみ大宮さんの腕に噛みついて血を吸い、そして自分の腕を噛み裂くと大宮さんの口に押し付けた。


「生きて!生きてよ大宮さん!

 あなた子供がいるでしょ!

 死ねないのよ!生きて!」


圭子さんが叫んだ。


堀はどんどんと埋まっている。

塀に腰かけて様子を見ていた奴らの一人が埋もれて行く堀を見て道路に合図をした。

物凄い音が立て続けに聞こえた。

道路側にいたでかいアナザーが塀に体当たりをして塀を倒そうとしていた。

奴らは堀が埋まって来たので一気に突破口を作ろうとしている。


俺はインターコムで堀に向けて並んだヲタ地雷の爆破準備を命じた。






続く 


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