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奴らは『ひだまり』周辺に集まり始めていた…そして、ドローンによる前哨戦が始まった。



俺は鐘楼の鐘を置いてあるIWRCサブマシンガンで何度も叩いた。

そしてインターコムに怒鳴った。


「襲撃!襲撃!

 皆配置につけ!

 戦闘員以外はガレージ地下と死霊屋敷に避難!急げ!」


鐘をIWRCサブマシンガンで叩きながら下を見ると、朝の仕事を始めた人達が上を見上げ、そしてやりかけの仕事を放り出し配置場所と避難場所に走って行った。

洗濯をしていた母親達は洗濯物を放り捨て、近くにいる子供に声を掛け、幼い子供を誰彼構わず脇に抱いて死霊屋敷とガレージに走って行く。

草原で堀を掘っている喜朗おじや父親たちもスコップなどを置き捨ててこちらに走って来た。

皆が、大人も子供も仕事や遊びを放り出して配置場所と避難場所に走って行った。

幸いに誰もが急いでいるがパニックを起こしたりはしていないようだ。


「はなちゃん!敵はどれくらい?

 どこから来る?」

「彩斗!奴らは『ひだまり』の辺りに集まってきておるじゃの!

 今は3,4千人くらいじゃの!

 まだまだ町の方から集まってきておる!」


SR-25狙撃銃と予備弾薬を入れた袋を持った圭子さんと鐘楼からの狙撃班の母親3人が、そして明石と四郎が鐘楼に駆け上って来た。

圭子さんと母親達は予備の弾倉袋を足元に置き、髪を後ろにまとめてヘルメットを被ると手すりにSR-25を据えた。

四郎と明石は双眼鏡で周囲を見回している。


その間も俺のインターコムに次々と報告の言葉が入って来る。


「A機銃射台、配置についた!」

「B機銃射台も配置完了!」


「狙撃B班、位置につきました!」

「狙撃C班、位置につきました!」

「バリケード班も集合!

 第1配置につくわ!」

「狙撃D班も配置に、位置につきました!」

「こちら彩斗!報告全部所コピー、皆、落ち着いて命令があるまで絶対に撃つな!

 そして慌てて仲間を撃たないように気を付けろ!

 奴らを絶対にここに入れるな!

 バリケード班真鈴!始まったら射撃しやすいように入り口ゲートを開けるぞ!

 皆に慌てないように伝えろ!」


俺がそう答えると、各部署からコピーと返事が来た。

多少声が引きつっている者もいたがおおむね落ち着いているようだった。


これで入り口ゲートの左右300メートルを見渡せる狙撃位置に俺とユキの家、喜朗おじと栞菜の家、明石一家の家に狙撃チームが、そして、入り口ゲート以外の塀を乗り越えてくる敵をなぎ倒す為に設置した重機関銃座も準備完了だ。


「オタ地雷も通電チェック完了!爆破準備完了!いつでも吹き飛ばせるぞ!」


喜朗おじの声も聞こえて来た。

これで鐘楼から状況を見た俺達の合図で各エリアに設置したヲタ地雷をいつでも順次爆破できる準備が整った。


死霊屋敷、ガレージの入口を守備する者達からも配置についた旨、連絡が入り死霊屋敷の防御機能が動き始めた。

明石と四郎が双眼鏡を取って辺りを見回した。

俺は先ほどはなちゃんが言った事を明石達に伝えた。

明石が双眼鏡を覗き込みながら言った。


「なるほど、いかんせん、素人の集まりだ『ひだまり』を集結地に選んだんだろうな。

 はなちゃん、他の方向から何か来ているか?」

「景行!

 山側や隣の敷地や反対側の敷地からは何も感じられないじゃの!」

「そうか、奴らは数にものを言わせて正面から一気に押し掛けるつもりだな。

 よしよし。」


また、インターコムから声が聞こえた。

ユキの声だった。


「彩斗!死霊屋敷に子供達の避難完了!

 全員、いるわ!」

「コピー、ユキ、もう一度確認の点呼を取ってくれ!

 始まったら屋敷のシャッターを全部閉める!

 その時は多少暗くなるけど全員落ち着いて伏せるように伝えてくれ。」

「彩斗、コピーよ!」

「こちら凛!ガレージ地下の子供達も避難完了!

 確認でもう一度点呼を取るわ!」

「コピー、凛!」


次々と連絡が入って来る。

子供達の避難も完了して、これで俺達は存分に戦える。


「彩斗、こちらスコルピオ、リリーよ!

 念の為装甲バンを3台道路に出すわ!

 1台は山側の道路からの監視。

 2台は死霊屋敷の入り口の方向を監視する!

 景行の作戦通りの事が進めば、道路側からも装甲バンを突撃させる!」

「リリー!コピー!」


これで今の所脱出口の確保も出来たようだ。

どうやら死霊屋敷の臨戦態勢が整ったようだった。


「彩斗!敵はまだ集結しきれていないようじゃの!

 今は5千くらい集まっておるじゃの!

 まだまだ町の方から集まってくる奴らがいるじゃの!

 いったいどれだけ集まるか見当もつかんじゃの!」

「そうか、はなちゃん、サンキュウー!」

「彩斗、コピーと言えじゃの!」


俺は苦笑を浮かべながら、はなちゃんコピーと答えた。

明石が双眼鏡を下ろしてにやりとした。


「やれやれ、数が多いから集結に手間取っているようだな。

 しかし、裏側、搦め手の心配が無くなってホッとしたぞ。

 しかし周囲の偵察は必要だな。」

「景行、われがひとっ飛びして奴らの周りを見て来るか?」

「四郎、万が一奴らもでかいライフルを持っていて四郎カラスを撃墜されてもかなわんからな…ここはクラ達に任せよう。」


明石がそう答えるとインターコムで死霊屋敷の守備についているクラにインターコムで話しかけた。


「クラ、ドローンの用意は出来ているよな?」

「景行さん、準備万端、3機飛ばせます。」

「よし、1機は屋敷の山側を監視に、残りの2機は奴らが集まって来ている『ひだまり』周辺に飛ばせて様子を見てくれ。

 町の方からももっとやって来るらしい。

 その列がどこまで続いているか調べろ。」

「コピー!」


屋敷から3機のドローンが飛び立ち、それぞれの方向に飛んで行った。


「やれやれ、便利な世の中になったものだ。

 カラスのわれの出番は無いか。」


服を脱ぎかけてやめた四郎が飛び去るドローンを見て呟いた。


「くそ!あいつらもドローンを持っていやがる!」


クラのドローンとすれ違う様に『ひだまり』の方角からもドローンが飛んで来た。


「どうする景行?

 撃ち落とす?」


圭子さん達がSR-25の照準をドローンに合わせて言った。


「そうだな圭子、奴らにこの中を覗かれてもつまらんぞ。

 撃ち落とせ。」

「コピー、景行。

 B、C、D各狙撃班、偵察に来たドローンを撃ち落とせ!

 あまり無駄弾撃たない様に良く狙って!」


圭子さんと母親チームの狙撃班が奴らのドローンを撃ち始めた。


敵方のドローンは全部で8機いた。


圭子さん達が最初の2機を見事に撃ち落とした。

母親達の歓声があがるが、その後残った6機のドローンたちが不規則に飛び始め、中々撃ち落とせなくなった。


「くそ!ちょこちょこと…。」


圭子さんがそう呟きながら狙いすまして撃った。

見事にドローンのボディ真ん中を弾丸が貫いたその途端にドローンが派手に炎を上げて火球と化した。


「おお!何だあれは!」


俺達は驚いて残りのドローンを双眼鏡で追った。

何機かのドローンのボディに火炎瓶がくくり付けられていた。


「くそ!奴ら火事を起こす気だ!」

「圭子、火炎瓶をくっつけたドローンを優先して撃ち落とせ!」


火炎瓶を抱いたドローンが死霊屋敷などに突っ込んでこられたら堪らない。

俺も四郎も明石もIWRCサブマシンガンを構えて屋敷に近づいてくるドローンに向かって射撃を始めた。


次々とドローンが撃ち落とされ、火炎瓶をくくり付けたドローンの最後の1機に誰か母親が撃った弾が当たった。

そのドローンはローターを吹き飛ばされてフラフラと飛び、屋敷の近くの木立に当たって火を上げた。

木が燃え始めたが、屋敷や俺達の家には燃え移らないようで安心した。


圭子さん達は残った2機のドローンに射撃を続けた。


「あ!だめよ!

 駄目よ司!外に出ちゃ駄目!」


インターコムからユキの切迫した声が聞こえた。


「ユキ!どうした!報告しろ!」

「彩斗!司が外に出たの!

 思い出の木が燃えちゃうって泣きながら…いま何人かのお母さんが後を追ってる!」

「なに?」


俺達が鐘楼から下を見るとプールから汲んだ水が入ったバケツを手によたよたと燃え盛る木に走って行く司の姿が見えた。


ああ!燃えちゃう!燃えちゃう!思い出の木がぁ!


司の涙ながらの心の叫びが、泣きながら叫ぶ司の声が俺の心に響いて来た。


あの木は司が、恐らく司の初恋の男の子が転校してゆく時に皆で根元にタイムカプセルを埋めた木だった。


まだドローンが一機残っているが圭子さんが射撃をやめて司を見下ろした。


「司!戻ってきなさい!」


圭子さんが鐘楼を駆け下りようとしたのを明石が抱き止めた。


「圭子!持ち場を離れるな!

 射撃を続けろ!」

「だって司が!」

「大丈夫だ、見ろ!

 ちゃんとお母さん達が司を連れ戻してくれる!

 お前は残りのドローンを撃ち落とせ!」


確かに明石が言うように2人の母親が司の後を追って走っている。

重いバケツを持った司にすぐ追いついて連れ戻してくれるだろう。

その時はなちゃんがいきなり叫んだ。


「皆!上から来るじゃの!

 アナザーじゃの!

 くそ!気配を消して遥か上を飛んでいたじゃの!」


遥か高空から、巨大な鷲が奇声をあげながら急降下して来て司の後を追う母親の一人の肩をその鋭い爪で切り裂いた。

母親が悲鳴を上げ血しぶきをあげて倒れた。









続く


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