9、自由に生きる!
ヒロインはてっきり無条件で愛されるのだと思っていた。ゲームではそうだったから。
けれど……。
ひなちゃんを見た蒼くんは「君は同じクラスの……」と名前がすぐに出て来ない様子。
「桃木ひなさんだよ」と教えたら、私とひなちゃんを交互に見て「もしかして手紙の?」と私に小さく聞く。顰めた表情で。
苦く笑うだけで留めておいた。
さっき、感じ悪いと言っていたからね。
ひなちゃんがそれを知って、私の所為で印象が悪くなったと言って来そうだ。
すでに、シナリオから外れたのは私の所為だと言って来た彼女だからね。また私の所為にされるかもしれない。
今、ハーレムメンバーが三人もいるから浮かれているし、私なんて眼中には無いみたいだった。
蒼くんに近付く為にまたもや押し退けられる。
それを注意してくれようとしたが、ひなちゃんの後ろから手を振って首を横に振って、注意いらないと伝えた。納得いかなそうな表情だったけど、口を閉じてくれた。
後で当たりが強くなりそうだから、遠慮したい。蒼くん達には悪いけど。
中身はゲームとは偉く違うものの、外見は流石ヒロイン。可愛いんだよな~。
蒼くんに必死に話し掛けている姿だけなら、本当に可愛い。
さっきの……存在価値云々言われてなきゃ、影ながらお手伝いしていたかもしれない。
でも、私は根に持つから。
存在価値なんて知るか!
ヒロインには縛られずに、サポ子は自由に生きる!!
自由に恋するもん!!!!!
ロリコンじゃない素敵な彼氏がきっと出来る!!!
さて、そろそろ帰るか。
授業が終わるチャイムも鳴ったことだし。
眺めているだけでも、退屈はしなかった。
一応、話し掛けたら答えてくれる蒼くんを保健室に引っ張り込んでひなちゃんは話し続けていた。蒼くんの表情見てあげて、何か疲れた表情しているから。
玄井先生は机に向かって、たぶんお仕事していた。美味しいお茶も淹れてくれて、ありがたや。
千夏ちゃんは……寝とるね!ひなちゃんが結構うるさいと思うのに、平然と寝とる。あまりにぐっすりだから、額に「肉」と書いてやりたかったのは心に秘めとく。
少ししたら廊下を通る生徒達の声が聞こえてきて、そのタイミングで立ち上がった。
「私、そろそろ帰ります。先生、美味しいココアありがとうございました!」
「あ、俺も帰ります!」
蒼くん便乗してきた。
ひなちゃんから逃げる気だな。
そして、睨まれるのは私。……解せぬ。
蒼くん以外とはぜんぜん話せていないから帰りたくなさそうだけど、ひなちゃんも帰る様に促され、ならばとまた蒼くんにくっつく。一緒に「帰ろ」と語尾にハートマークが付いていそうな甘えた声で言う。
すると、ここでも飛び火。蒼くんが「手助と帰る約束してるから」と出て行こうとした私を引き寄せた。うおぃ、約束してないぞ?
「……そうなんだぁ。じゃあ、わたしも一緒良いよね?」と笑顔の圧。……怖っわ!!良いとしか言わせない感が伝わって来て、頷くしかなかった。
私がこんなやり取りをしている間に玄井先生に叩き起こされた千夏ちゃんがぶつくさ言いながら、ベッドから立ち上がっていた。
ってことで、四人で保健室を出ることになった。
「一年は気を付けて帰れ。朱薪は残りの授業にキチンと出ろよ。このまま帰ったら白金に言うからな」
と千夏ちゃんにはしっかり釘を刺す。
まだ逢っていない攻略対象の名前も頂きました!
ゲームでの設定そのままなのか?
一歳違いの幼馴染みなんだよね。
ここでも変わらないのか、聞いてみたさもある。
勝手にゲームのままだと思い込んでいたけど、ヒロインに攻略対象が惹かれていないところを見ると全部が全部同じじゃないみたいだからね。
節くんと玄井先生が本当に従兄弟なのかも実際どうなのか聞いてみたいとわからないし。
でも、入学したての赤の他人が聞く訳にはいくまいよ。
【サポートキャラだって恋したい!】