7、決められたくない!
「いつまでわたしを待たせるつもりなの!?」
知らんがな。
送り主の名前も書いていない不審な手紙を下駄箱に入れて、勝手に待っていただけじゃん。
正直、応える理由も無かったのに、わざわざ図書室に来た私を褒めてほしいくらいです。
それにしても似合わないな~。
仁王立ちするヒロインって……。
外見ゆるふわ系だからね。
……いや、見る人が見れば可愛く見えるのか?
ゲームでは無いだろうレアショットだから、写真に収めておくべき?
「ちょっと聞いてるの!?」
怒られそ……。
すでにぷりぷり怒っているみたいだし。
何か反応返すないとな~。
「同じクラスの桃木さん、だったよね?あなたがこの手紙を?」
「そうよ。だから、待ってたんじゃない」
やっぱりそうっすか。
「なんで、わざわざこんなところに?」
呼び出して、お友達になりましょう!感はないもんな。仁王立ちだし。
「そんなの決まってるじゃない!あんたはヒロインのサポートキャラなのよ!?わたしのサポートちゃんとやりなさいよ!!」
うわぁ、マジか。
同じ転生者だった。
「あんたがサポートしないせいでシナリオ通りに進まないじゃない!」
私の所為なのか?
ん~、まぁ、そうかもしれないけど……。
「せっかく、シェアハウスを選んだのにモブしかいないし!」
あ、そうなんだ。
でも、シェアハウス選んだってことは……。
「ハーレムルートに入らないと節くんルートにも入れないでしょ!」
節くん推しか!!?
どう返すべきかな?
同じ転生者ってことは隠しておくか、言っちゃうか。
言ったら言ったで、ゲーム通りにやれ!って言われそう。残念ながら、節くんルートに入る前に前世は終わっているからシナリオなんて知らんけど。
ここは恍けておこう。
「……えーっと、桃木さん?何の話?」
小首を傾げる。
小さなサポ子がやったら可愛いんじゃない!?
と思ったけど……。
「はあ?そっちこそ何言ってんのよ。余計なこと考えずにヒロインのサポートしろ。サポ子の存在価値なんてそれしかないんだから」
一蹴された。
一蹴どころじゃないな。
存在価値とまで言われた。
呆然とした。
たぶん、今何を言っても否定されるだけな気がする。
だからといって、「わかりました」とは言いたくない。
「まずは節くん捜して。学園内にはいるでしょ。それから、他の攻略対象の情報も集めて、攻略の手伝いしなさい。あんたのせいでシナリオがめちゃくちゃになったんだから」
めちゃくちゃなのはあなたの方だと思うけど?
ゲーム通りの優しいヒロインなら、協力していたかもしれない。
でも、この人には協力したくない。
ここはゲームが元になった世界なんだろうけど、今は現実だから。
現実だから、勝手に他人に存在価値を決められたくない!ざけんな!!
「……ぃ、嫌です!やりません!!」
言って、すぐに図書室を飛び出した。
拒否したら、殴られそうじゃん?殴らないかもしれないけど。
何か彼女が怒鳴る様な声が聞こえた。
無視して、玄関まで走った。
先生に見付かったら怒られそうだけど、構わない。全力疾走だ。
だから、下駄箱の手前で人にぶつかってしまった。
「ぎゃっ」と可愛くない声が出た。
小柄で体重も軽い私は弾き飛ばされ、尻餅をつく。痛い……。
相手は大丈夫だろうか、前を見たら学生服のズボン。立っているから、大丈夫かな?
「ごめんなさい」と謝りながら、視線を上げていくとよく知る顔がよく知る無愛想な表情を浮かべていた。
よく知ってはいるけど、初対面なその人は二人目の攻略対象として紹介されている……
『朱薪 千夏』、だった。
【サポートキャラだって恋したい!】