20、嫉妬ですね!
節くんは8時過ぎてから帰っで来た。
「ただいま」「おかえりなさい」を言い合うの良い。
疲れているのに私の分のホットココアも淹れてくれて、リビングのソファーでまったりする。
気持ちはぜんぜんまったりじゃないけどね。
だって、肩が当たる距離感で好きな人が座っているんだもん。
ついでに、学校でのことを更に聞かれたし。
告げ口みたいで嫌だから個人の名前は出さずにちょっと困ったこととか話した。
「もっと困ったことになる前に相談して」と言ってくれたけど、なんていうか……相談したら、もっと過激になるかもしれないから言いたくない。ひなちゃんに呼び出された時に彼女の言葉からして節くん推しだから、言ったら、節くんがヒロインに近付く切っ掛けになる。今日、ヒロインが節くんのアルバイト先に来てたし……よく言われている強制力みたいなのが働いたら嫌だ。
悶々としてくる。
そんな折り、「……ああ、そうだ」と節くんが思い出した様に言う。
「まだアルバイト先決めていないなら、オレのとこにおいで?」
「おれの、とこ……?」
「今日来てくれた喫茶。あそこ、オレ以外のバイトはいなくてね。新しい子を入れようって話しているところだったんだ」
それで私に?
嬉しいけど……。
「良いんですか?」
「うん、働くなら一緒にいて安心出来る人が良いからね。実は前からそういう人いたら連れて来いって言われていたんだよ。オレも同じ理由で誘われて始めたから」
そういう感じのところもあるんだ。
まぁ、店主の匙加減か?
店主さんに嫌われたら、止めないとってことかな?
ん~、節くんと一緒なのは嬉しいけど……。
「新しい子は二人入ってもらおうと思っているんだ。もう一人には先にメールで詳細送って、今返事待ち」
あ、そうなんだ。
他にも……節くんの、安心出来る人?
女の子だったり?それは…………嫌だな。
私が断ったら、その子と二人でってなるから断りたくない。
うん、嫉妬ですね!
「ちゃ、ちゃんと出来るかわからないけど……やってみたい、です」
「ありがとう。大丈夫だよ?オレもいるからわからないことは教える」
手をぎゅって握って安心させてくれる。
節くんのこういうところも好き。
それから、もう一人にも送っただろう詳細というものを聞いた。
後になってから思ったことだけど、これが面接代わりだったのかもしれない。
寝る前になって、もう一人から連絡が来たらしく、明日一緒に店に行くことになった。
予定が無かったら……と言われたが、休日にまで逢う程仲の良い友達はまだいない。
もっと町の散策をしてみようかな?って思っていたぐらいだしね。
のんびり二連休を過ごした後の通常授業はキツイから、動き回るつもりだった。
……顔合わせ、になるのかな?
ドキドキだ、色んな意味で。
と思っていた私を待っていたのは……。
「蒼くん?」
どうせ行くならモーニングも喫茶店で、と節くんに誘われて行ったら蒼くんがいた。
店の特製スムージーを飲みながら、手をひらりと振って「はよ」とテンション低めだ。
学校ではいつも明るい雰囲気だから、別人みたい。
……なんだか誰かを彷彿とさせるが、気のせいだろう。
「おはよ……なんでいるの?」
「ん?聞いてない?昨日、黄王地先輩に喫茶店で働いてみないかって連絡来たんだよ。店の雰囲気良いし、料理も美味かったから、是非!って返事した」
「そうなんだ」
「手助もだろ?」
「う、うん」
もう一人は蒼くんだった!
良かった!!
節くんに促されて蒼くんの横に座って、それから店主さんの作ってくれたモーニングを食べながらお話を聞いた。
節くんは今年受験生だから勉強の時間を増やす為にアルバイト時間を減らすので、新しいアルバイトの子を入れたかったらしい。
そこで珍しく……というか、初めて?節くんがこの店に知り合いを呼んだのがまだアルバイト先も決まっていない一年生の私だったから、明るく接客してくれそうだしということで節くんに声を掛けさせたのだという。
蒼くんは……イケメンだったからかな?
節くんがアルバイトをここで始めた時にドッと女性客が増えた。簡単な話、節くんが客寄せパンダだったのだ。
でも、節くんが時間を減らせば、その分お客さんも減るので代わりの蒼くんを立てようという算段。
どっちかというと……私の方がオマケじゃね?
と思っていたけど、私が一緒だと節くんのキラキラしたサービススマイルが増える様で、更にお客さんが増えてしまうことを……後に知る。
ついでに蒼くんも節くんと一緒の時より、幾分も私と一緒の時の方が雰囲気が柔らかになるとか。
マスコット効果か!?
嫉妬もされるけど、一部のお姉様方には可愛がられることになる。
【サポートキャラだって恋したい!】




