11、明日が怖いね!?
夕べ?から今朝に掛けての幸せな時間を思い出して、顔が緩んでいた。
あれが夢だったとしても、この先生きて行ける!
当然だ!前世でも推しの夢なんて見たことがないんだからね!?
あんな推しとの甘々な時間を夢に見れただけで人生最良の日と言えよう。
フフフ
「フ…………っんに"ゃ!?」
浸り過ぎて、ちゃんと前見てなかった。
ぶつかったのは電柱?
ぶつかる寸前に誰かの「あ」って声がしたけど、もっと早く気付いて声を掛けてほしかったなあ!?
後ろに倒れるところを受け止めてくれたことはありがとう!
「大丈夫か?」と聞いてくるのも、受け止めてくれたのも、蒼くんだったか。
鼻を押さえて見上げると心配そうな表情を向けていた。その向こうにめっちゃ睨んでいるひなちゃんがいる……こわい。
蒼くんが寸前まで気付かなかったのはひなちゃんが理由かな? 私がいた反対側を歩いて頻りに蒼くんに話し掛けていたもんね~。
私が邪魔した感じになっちゃった?
どんな話をしていたか、途中から聞いてなかったから知らんけど。
とりあえず、ちょっと痛いけど「だいじょうぶ」と返した。
なのに、両頬を包み込む様に大きな手を添えて、じっくり確認される。
やだっ……イケメンはこんなことする時もイケメン!
でも、息が掛かりそうなぐらい近くから見なくても良いんじゃない?
そんなじっくり見なくてもぶつかった鼻は一目で赤いの解るしさぁ。
毛穴まで見られる。
十代のピッチピチなお肌だから見られても平気だけどね!!
サポ子のお肌は下手すりゃあ、赤ちゃん肌!
今日も蒼くんの手は温かで、ほっこりする。
……するんだけどね~。
「顔もちっちゃ」「やわっ」と頬っぺたむにむにし出す。ほんと!これさえ無きゃ良い男!
たぶん、時間にして二、三分ぐらいだと思う。
一応、大丈夫なのを確認されてから、また三人で歩き出した。
と言っても、そこからすぐのところにあるひなちゃんのシェアハウスに着いちゃったんだけどね。
因みに、私のシェアハウスは通りを二本行ったところを右にずっと進んだ先にある。
シェアハウスは町のあちこちにあるみたいだから、まさかひなちゃんのハウスと近かったのは驚いた。
外観もだいぶ違った。
私のハウスの外観は和風っぽかったから。中は木を結構使って温かみのある雰囲気。畳や襖も所々にあるけど、生活し易い様に洋も取り入れられている。
ひなちゃんのハウスの外観は周りの家から浮かない洋風。なんて言うか……普通だね!中も変わりはないのかな?和風っぽかったりする?
外観から違うと他のハウスも見に行きたくなる。
が、ひなちゃんは蒼くんを中に誘うけど、私にはこっそり耳打ちして「空気読んで帰って」と冷たく言う。
解っていましたよ。そう言われることぐらいね。
しかし、空気読んでと言われても、蒼くんは仔犬の如く「くぅ~ん」と鳴いていそうな甘える様な、助けを求める様な視線を私に向けて来る訳ですよ。こっちの空気も読むべきじゃない?
手ぇ離してくれないものね!
だが、知らん!
他のハウス気になるけど、シェアメイトの許可があるか解らないところに上がらせてもらうことはしない。
ひなちゃんは私に帰ってほしいみたいだし、帰らせて頂きます。
蒼くんは自分で何とかしてね!
「じゃあ、私帰るね」
「え!」
え!じゃないんだ。
捨てられた仔犬みたいな顔して見ないで。
ひなちゃんは嬉しそうに笑って、中に入ろうと蒼くんの腕をぐいぐい引く。動かないけど。
じっと私を見て来るけど、目を合わせないでいると……。
「手助のことも家まで送りたいし、俺ももう行くよ」
出しにされた。
ひなちゃんのことだけ送って、私だけそのまま帰すのはどうかと思うからね。
紳士的なイケメンで良いんじゃない?
ひなちゃんから逃げたいだけだと思うけど。
「え、でも……」と物言いたげなひなちゃん。
蒼くんの視線がひなちゃんから外れると睨んできた。あんた遠慮しなさいよ、と言うところだろう。
見て見ぬフリをして、「桃木さん、また明日」と笑顔で手を振って歩き出した。
蒼くんも「また」と言って、私の横に並んで付いて来る。
また、は本当はしたくないよ。
怖いじゃん!めっちゃ睨んでくるんだもん!
でも、同じクラスだから、どうしたって私も蒼くんも、また、になるんだもん!
明日が怖いね!?
【サポートキャラだって恋したい!】




