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化け狸とこらぼれーしょん-3

ぱ〜ぱらっぱっぱっぱ〜♪


【はーいみんなーこんみやぁー! あーっとそこの君ィ、チャンネルは間違ってないから安心して! ここはちゃーんとミカガミプロジェクト白雲ワタヌキちゃんのチャンネルですよー! フフフフフ驚きましたか驚きましたよね! いやいや、私が一番驚いているんですよ! まさか初配信の次にコラボ配信企画するなんてフツーありえないじゃないですかー? 流石のミカガミと言わざるを得ません! 今日はみんなも大注目のミカガミプロジェクト、そのリーダーとも称される白雲ワタヌキさんにインタビューすべく私は馳せ参じたのでございます! あ、今コメントの方にもいましたけど、変なふうに邪推しないでくださいね! もともと私の方から熱烈オファーしたんですから! 実は私、今日が楽しみで夜も8時間しか眠れませんでした! って私のことはこれくらいにしておいて今日の主役にそろそろご登場いただきましょうかねえ! それでは皆さまお待ちかねご登場いただきましょう! 張り切ってどうぞ!】


【え、ちょ、まだ心の準備がっ!? ……ふぅー……お、おう人間ども、こんたぬき。我こそ化け狸系ぶいちゅうばあ御伽の古狸こと白雲ワタヌキ様じゃあ……】


【わー! ワタヌキさんはじめまして! ゆープロ4期生の狐宮しらぬいです! 会いたかったですよー!】


【あ、ああ、あああぁ……ぬ、ぬいちゃんじゃあ……本物じゃあ……ほんとにほんとだったのじゃなあ……】


【あれ? なんかテンション低いですね?】


【あっ、いや、違うのじゃ……思いっきり自制せんと、また前みたいに暴走しまうからのう……ぬ、ぬいちゃんに我の醜態晒して嫌われちまうかと思うと……おおぅ】


【そんなことならモーマンタイですよ! 私嬉しかったですもん! 私のことを好きでいてくれる人を嫌いになるはずないじゃないですかあ! 軽く聞こえちゃうかもですけど、私ワタヌキさんのこと憎からず思ってますよ?】


【んグゥッ!?】


【どうしたんですかっ!? 急に心臓を抑えて!】


【生のぬいちゃんが、ここまで殺傷力が高いとは……想定外じゃあ】


【殺傷力っ!?】


【いやっ、違うんじゃ違うんじゃ! 一瞬心臓が止まったのは事実じゃが、これは我の持病みたいなもんで……とにかく、気にしないで欲しいのじゃっ!】


【ワタヌキさんのお身体が心配ではありますが、大丈夫ですか? このまま進めても?】


【心配ご無用、じゃあ。あー……なんじゃ顔が火照ってしまうのう! ……あ、そうじゃ氷霞からもらったこれがあるんじゃった……よっと、ふひぃいい!!】


【どうしました!? ワタヌキさんっ!?】


【うぅ、ぶるぶるっ、いや何でもないのじゃあ。ちょっと興奮気味じゃったからのう。頭を冷やしただけじゃい。ぶるぶる】


***


ぶるぶる、助かったぞ氷霞よ。

お陰ですっかり頭が冷えたわい(物理)。

でもまさか小袋を開けたら真冬の信州もかくやといった吹雪が襲ってくるとは誰も思わんじゃろう。

頭だけじゃなく肝も冷えたわ。


しかし生のぬいちゃんの破壊力もとい殺傷力は段違いじゃな。

その一挙手一投足が我の理性を粉々に砕かんと群れを成して襲ってきよる。


それに聞いたか?

憎からず思っている、じゃって!

言い換えれば好きってことじゃないかい!

おっと、また頭に血が……ふひぃい、ぶるぶる。


勿論実際にぬいちゃんが横にいるわけではない。

おんらいんで通話をしているだけじゃあ。


しかし配信画面でぬいちゃんが我の横にちゃんとおるのじゃ。

そして今までは大多数に向けて放たれていたぬいちゃんの言葉が、今は我だけに目掛けて飛んできているのだぞ。


幸福の弾丸が我を貫きよる。

昔、東北に行った時に地元のマタギに撃たれた時だってこんな衝撃は受けんかった。


我このまま死ぬんじゃなかろうかあ?


「おーい、ワタヌキさーん!」


「ハッ!? 昇天しかけとった!」


「ワタヌキさんは時折何処かにトんでいってしまうようですね〜。ダメじゃないですか。今、私と話してるんですから余所見したらだめですよ?」


ぬいちゃんのほっぺたぷくー!

我に致命的な損傷あり!

回復の小袋を使用する!


「ぬンゥッ……ふひぃ、ぶるぶる。いやあ、申し訳ない。この歳になると呆けちまっていかんのう」


「あ、そうそう! 私気になってたんです。ワタヌキさんは古狸って言ってますけど、どのくらいお年を召してらっしゃるんです?」


「……うーん。歳かあ。歳のう……。正直あんまり覚えてないんじゃよなあ。二百か三百までくらいは覚えとったんじゃけどそこからは数えるのも億劫での。まあ、そんじょそこらの奴らよりは歳食っとる自信があるわい」


「はへぇ〜すっごい長生きなんですね〜……。長寿の秘密とかあったり?」


「秘密も何ものんべんだらりと隠居しとったらいつの間にか長生きしちまっただけじゃからのう。実際ここ百年くらいは住処でぼんやりしとったからのう。ぬいちゃんに出会って久々に活力を取り戻したんじゃよ。だからぬいちゃんには感謝しとるんじゃあ」


「へへへ。そういう風に素直に感謝されると照れますねー」


「ンふゥっ……!」


ぬいちゃんの無邪気な笑顔!

我に深刻な異常あり!

秘密の小袋を使用する!


「んぅ〜ぶるぶる。……頭が茹って死んでしまいそうじゃのう」


「ところでぇ、私ワタヌキさんにお願いがひとつあるんですけど聞いてもらえますぅ?」


ぬいちゃんの上目遣い!

我の血管が沸騰する!

冷却の小袋を使用する!


「んんんんん〜っ! なんじゃあ?」


「私、ワタヌキさんとこれからも仲良くしていきたいんです。ほら、私って狐じゃないですか? 狐といえば狸というくらい定番ですよね。きっと相性抜群です! これからもちょこちょこ一緒に配信しましょう! なんならユニットで活動しちゃいますー?」


「エッ! でもぉ、んん〜?」


うん、それはどうなんじゃろ?

ぬいちゃんに相性抜群と言われるのは光栄じゃが、実のところあんまり狐であるぬいちゃんと一緒にいることは避けたいかもしれん。


狐はなあ……。

基本的にやたらこちらを敵対視してきよるから面倒なんじゃよ。

そりゃあ風来坊で狐らしくない白孫のような奴もおるが、殆どの狐は態々我らを煽るような真似をしよるから小競り合いが絶えないんじゃあ。


狸は日和見が多い性質じゃが、四国狸どものように血気盛んな奴らもおることはおる。

反狐派を名乗る奴らの目に今の我の姿を見られたら酷い罵声を浴びせられるんだろうなあ……。


おお、煩わしいことこの上ないぞお……!

我はそういう七面倒くさい派閥争いとかが嫌で隠居してたんじゃから!


あの狸どもがようちゅーぶを見ているとは思わんが、我と関係していることでぬいちゃんに累が及ぶことは絶対にあってはならん。


ぬいちゃんには悪いがここは断らせてもら、


「ダメですかあ……?」


「おう……」


ンーッ! なんじゃあ!

その目をうるうるさせて上目遣いでおねだりするような小悪魔的言動はっ!


決意が揺らぎそうになる。


だ、だめじゃっ!

ここで断るのもぬいちゃんの為じゃい!


「ねえワタヌキさぁーん……?」


追撃っ!?

ぬおお、可愛いぬいちゃんにおねだりされちゃあ仕方なぁーい!

いやいや、だからだめなんじゃって!

頭に血が昇ってきおった……!


助けておくれ!

氷霞の小袋よ!


「ふっひぃ……ありゃ?」


ちょっと待ってくれい。

あれ小袋を開けたのに冷気が出てこんのだけどぉ?

このっ! 故障かっ!


小袋を逆さにしてぶんぶん振ってみる。

袋の中からひらひらと小さな紙切れが落ちてきた。


『冷気を補充中です♡ ちょっと待ってからまた使ってね♡』


よくよく見ると紙の端に小さく丸に毛の生えたような顔が描いてあった。

この絵見覚えがあるぞ……!

深鏡ィィィ! これもお前の差金かいっ!!


あっだめじゃ、頭に、血が昇って……。


「お願いしますよぅ……!」


「ハイっ! ぬいちゃんの言うことなら喜んでェッ!!」


ほーら、暴走しちまったじゃないかい。

あたたかくなり朝の微睡もより一層気持ちが良くなる季節です。

評価やブックマーク、いいねもいつも有難うございます。励みになります。

がんばろーぜぇ。

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