化け狸とこらぼれーしょん-1
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『 You topic Animal Co.Ltd.』
元々はタレントマネージメントの芸能事務所であったが、vtuber黎明期に事業を転換。
個人で行うvtuberが多い中、企業の確かなバックアップを持って環境的にも経済的にも安定した配信活動を可能とした。
それは趣味の範疇を脱しきれていなかった業界へ大きな衝撃を与え、テレビや映画で活躍する俳優・タレントと同様に芸能活動としての一部門を形成したのだ。
『ゆーとぴあプロダクション』
通称ゆープロ。
You topic Animal Co.Ltd. の運営するvtuber部門。
発足当初の3名のvtuberを1期生とし、それぞれ3名体制で現在4期生までの12名がタレントとして活動している。(※詳細は以下)
-1期生-
・月猫キティ
・柴原こいぬ
・小鳥遊ひよこ
-2期生-
・ユリアナ=セイレーン
・リンカ=ウルフィー
・ルーフェンシア=オル=ドラガ
-3期生-
・雪豹セラ
・兎隠キャシー
・相馬ラン
-4期生-
・九郎つむぎ
・狐宮しらぬい
・羽生じゃのめ
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我は今朝からめたばぁす空間のブースに籠り、目を皿のようにして調べ物をしておる。
深鏡の野郎がとんでもない爆弾発言をぶち込みよったからだ。
狐宮しらぬい、通称ぬいちゃんとのこらぼ。
最近は我も横文字を学んできたからの。
こらぼ、ってのは一緒に何かやるってことじゃろ……?
我が……ぬいちゃんと……。
「ぬお〜〜〜〜〜〜っ! 憧れのぬいちゃんと話せるのは嬉しいがあ! 一体全体何を話せと言うのじゃあ!」
そう思ったからこそこうやって下調べをしておるのじゃあ。
思えばvtuberになると言っておきながら、この業界のことをなーんも知らん。
焼け石に水じゃと分かってはいるが、下手に失礼なことを言って嫌われたら敵わん!
せめて相手方の素性くらいは調べておいて損はないじゃろう。
調べたところによると、ぬいちゃんの所属している『ゆーとぴあぷろだくしょん』とやらはぶいちゅうばあ業界ではかなり幅を利かせているのだと。
大元の企業の力か分からんが、ねっとでの配信活動にとどまることなく大規模な音楽らいぶや、おりじなるぐっずの販売など視聴者の需要に十二分に応えておる。
更には他企業からの案件、つまりは仕事としてのぶいちゅうばあ活動じゃな。
それも盛んじゃ。
大元が信用のある企業だから先方も安心して頼めるのじゃろうな。
所属しておるぶいちゅうばあも錚々たるものじゃ。
『ゆーとぴあぷろだくしょん』のほーむぺーじを見ると、ようちゅーぶでのちゃんねる登録数が載っておる。
12人おるその全てが登録者数50万人を軽く超えて、1期生の月猫きてぃとやらは登録者数150万人と圧巻の人気じゃあ。
我らはぬいちゃんは……65万人。
一番には遠く及ばないながらも我からすれば雲の上のような存在じゃなあ。
我のちゃんねるも当然あるぞ?
深鏡に運営は任せておったが、初配信の後に登録者数を聞いたところ今は3万5000人じゃと。
深鏡が言うにはこれでも相当な数字らしいが、上を見ると自分がちっぽけに思えるのう。
いや、3万5000人ってよく考えるととんでもない人数なんじゃけどな?
因みに我らみかがみぷろじぇくとで一番の登録数は善童の6万2000人じゃ。
やはり現代日本は変態が多くなってしまったんじゃなあ……。
自分より多くの登録者を抱える善童を見てひめはほっぺたを膨らませておった。
「ずるいずるい! ヒメより1万人も多いの納得できなーい!」
ぽかぽかと善童に殴りかかっておったが、彼奴は鬼ぞ?
特に痛みを感じる様子もなく困った顔をしながら我に「助けて」と視線を送ってきよったから、仕方なく綿の襟巻きでひめを拘束して助けてやった。
ひめはむーむー言っておったが、すぐに両手で襟巻きを掴んで左右に引きちぎりよった。
「あーっ! 何してんじゃこのクソガキィ!」
「もーっ! ワタちゃんもワタちゃんだよ! ヒメを差し置いて人気のvtuberとコラボとかずるすぎーっ! ヒメ、メガネにこーぎしてくるっ!!」
ひめは肩を怒らせながらわーっと駆け出してそのままどっかに行ってしまった。
おぉ……我の襟巻きがぁ……。
ま、妖術でちょちょいと直したんじゃけど。
そんなんでひめがいなくなって静けさを取り戻した我はそのままぶーすに籠り今に至るのじゃあ。
ほーむぺーじのぬいちゃんの顔写真を選択する。
ぬいちゃんの全身写真とぷろふぃーるが表示された。
「うんうん、今日もぬいちゃんは愛らしいのお〜……」
この可愛いぬいちゃんと我が話すことになると考えると、それだけで初配信の時以上に冷や汗が出て背中がしっとりしてくる。
よく考えるのじゃ。
爆弾発言の後、陰険眼鏡を問い詰めて得た情報によると我は小一時間程度ぬいちゃんと一対一で対談をせねばならんらしい。
……んー。
我の初配信を見たじゃろ?
多分我を失ってぬいちゃんへの愛を語りまくるぞ?
愛に嘘はないが、我の溢れんばかりの情熱を直接ぶつけにぶつけるのは躊躇われる。
ふぁんとして接するのであればそれでも良いのかもしれんが、同じ土俵に立つ以上ふぁんの自分は一旦封印すべきじゃろうと思う。
しかしそれが出来るのかのう?
というかあの熱烈配信でぬいちゃんにひかれちゃおらんだろうか……?
知らない奴に愛を語られる程怖気の走るものはないものなあ……。
ぞくり。
背に一筋の汗が伝い、鳥肌が立つ。
深鏡からは「ご自身のお好きなように話していただいて構いませんよ」と、よく言えば我を信頼した、悪く言えば投げやりな、有難いお言葉を頂いた。
彼奴我をいじめて楽しんどるよなあ……!
これは邪推じゃないぞ?
じゃってこの時、言葉には出てなかったけども明らかに口の端が吊り上がってるのを我見たもんね。
「……っはぁ〜〜〜」
画面から目を離して、綿の座布団に大の字で身を投げる。
「……こんな気持ちになるんじゃったら、そもそもぶいちゅうばあになんてならんほうが良かったのかもなあ……ふぁんのままでいた方がぬいちゃんに自分の気持ちをありのまま伝えられたしの……じゃが、ぶいちゅうばあになってなければぬいちゃんと直接話す機会など得られなかったじゃろうしなあ……うれしい悲鳴とはこのことじゃのう……」
画面を見続けていたせいもあって目の奥が痛む。
座布団に顔を埋めて目を閉じると、睡魔の奴がそろそろと我に忍び寄ってきよった。
……我も永い時を生きておるが、此奴ほど厄介な野郎にはついぞ出会ったことがない。
「昔っから此奴にだけは勝てた試しがないんじゃよなぁ……」
諦めて睡魔に身を委ねると、我の体は座布団を通り抜けて深い深い眠りの海に落ちていった。
……後のことは後の我が頑張ってくれ。
……明日また考えるとしようかのう。
ーーーコラボ配信まで後3日。
某大手V事務所のアーカイブを漁る毎日。たのしいですね。
いつも評価やブックマークありがとうございます。
自分の作品にこれだけの反響があって嬉しい反面驚きの気持ちも強いです。
ガンバッゾォ。




