プロローグ
△ 西村 玲也
「次何歌うー?」
俺はマイクをテーブルの上に置き、一緒に来ている大輔に声をかける。
「カラオケ来たの久しぶりだし、アニソン歌うかー」
そう言って大輔はデンモクに入れる曲をスマホで調べ始めた。
今は3月の中旬で大学生である俺たちは春休みの最中だ。そんなわけでこの長い休みを利用して俺は大輔と2人で久しぶりにカラオケに来ていた。
「そういや玲也って今アニメなんか見てる?」
「んー、最近は見てないな。今は小説にハマっててさ」
「そう言えばそんなこと言ってたな」
高校の頃は部活が終わってから家でよく見ていたが、大学受験でアニメから離れたことであまり見なくなり、大学の通学中に読めるネット小説にハマってからは小説を買って読むことが多くなっていた。
「俺は小説はダメなんだよなー、文字ばっかりだと読む気が失せてくる」
「大輔は相変わらず文字が苦手だよなぁ。そんなだからテストも点が取れないんだよ」
俺はそう言って肩を竦めた。
「単位が取れればそれでいいんだよ。そんなことより次の曲入れるぞー」
会話しながらも曲を探していた大輔が「決めた!」と言ってパネルをタッチする。
「あれ?反応しねぇ」
「ん?どうした?充電切れか?」
充電の残量を見ると白い枠の中に緑の長方形が敷き詰められている。
「充電が無いわけじゃねぇな、もしかして壊れたか?」
そう言って大輔が軽く叩いた次の瞬間、カラオケボックスが白い光に包まれた。
「「ッ!?」」
光はボックス内を何白く染めあげ、やがて徐々に弱くなり、最後には何事も無かったかのように白い光は消えていった。
そこにはまるで最初から人などいなかったかのように、普段通りのボックス内が監視カメラに映されていた。