Episode1序章 「転移」
―――生物はいつしか死ぬ。
しかし人間という生き物は長生きなもんで蝉のように1一週間だけの命の中大空へ羽ばたき生きる喜びを知ったり、カゲロウのように、一日の命の中で子孫を残すために懸命に働く必要もない。
しかしどの生物も羨むその長い命を投げ捨てる人間もいる。
投げ捨てるというのは言わゆる自殺というやつだ。
原因は「いじめられたから?」「多額の借金を抱えたから?」
いや違う。そんなものは建前にすぎない。
恐らく多くの人間が「『生きる』のがめんどくさくなったから」だろう。
本当にバカバカしい。
人の先祖は初めは海に住む小さな微生物だったそうだ。
その小さくちっぽけな命は、ほかの生き物と共存し、合体することで当時、『猛毒』だった酸素にも対応できるようになった。
しかし今はどうだろうか、お互いに殺しあったり片方を一方的に殺すこともある。
今まで少しづつ紡いでくれたその命を。
しかしある一部の人間は、自分の身を犠牲にして他人や他の生き物を助ける事もある。
なぜ自分の身を犠牲にする?
なぜ長い寿命を捨ててちっぽけな命を救う?
答えは、単純。
それは……人間には『心』があるからだ。
他の生き物にはない、代々と受け継がれ人間が唯一捨てずに抱きかかえているもの。
ソレが『心』だ
どんなに凶悪な犯罪者や殺人犯にだって心はある。
じゃあなぜ犯罪を犯すのか。なぜ、分かちあわないのか。なぜ同じ人間を否定するのか。
それは『彼らにだって信じるものがあるからだ』
彼らなりの『正義』で世の中へ立ち向かい孤独に戦う。
周りからは『アンチ』などと言われ、「お前は間違っている」などと否定される。
しかしそんな彼らのおかげで救われた命もある。
ダイヤモンドの指輪を盗み多額の金に変え、その金を世の中から差別されている貧民街の学校の建設費に当てる。
他の人間たちよりもずっと人間らしい事をしている。
『心』をもつ者として彼らなりに考えたのだ。
世界は広く広大で決して恵まれた人達だけではない。
だったら『そんな世の中を変えよう』そう彼らは思ったのだ。
やり方はどうであり彼らは確かに世の中を変えたくさんの人々を救おうとした。
ダイヤモンドの指輪を一人が手にしゲラゲラ笑っている姿をみるより、ダイヤモンドの粉をばら撒きみんなが幸せそうに笑っている姿を見る方がよっぽどマシだと思わないか。
そんな様に思ったのだろう。彼らは……
そして多くの命が救われ、いつしか世の中から追放された『アンチ』はその街の中でたった一人の『ヒーロー』になっていた。
しかしその後そのたった一人のヒーローは捕まり拷問され処刑される。
世間は狭く暑苦しく身動きが取れない。
全く、やはり死んでいった人間は哀れだ。
そしてそんな『哀れな』人間が今日も増えた。
その中にある少年が一人いた。
そいつは今まで散々いじめにあい、周りにホラを吹かれ騙され、傷つけられ周りから「キモオタク」と言われてきた少年だ。
そして今日、上から落ちてくる鉄棒から猫をかばおうとするが無残にも突き刺さった鉄棒は猫にも刺さり共に死んでしまった。
お察しの通りそいつがこの物語の主人公、神守リクという少年だ。
この物語には終わりはない
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「起きて……起きて……」
耳元から透き通った声が聞こえてくる。
その声は幼い少女のような声で全く聞き覚えのない声だった。
意識が曖昧で目が開かない……
『俺は一体……何を……』
「起きて……起きてってば!」
「うわっ!」
幼い少女のような声は一瞬にして怒り狂った鬼のような声に変わり思わず声が出てしまった。
「もぉ〜。この寝坊助」
少し怒り気味ではあるが彼女の声は元に戻った。
「う、うぅぅ」
とリクは唸り声をあげ、ウトウトしながら辺りを見渡すと見覚えのない部屋の中にいた。
その部屋はお世辞にも綺麗とは言えず、物が散らかっておりホコリまみれでおおよそ人が住めるような場所ではない。
しかしリクはその見覚えのない部屋に全く動じず
「夢か……」
と言い残しバタッと音をたて、リクはまた眠りにつこうとした。
すると、隣から
「いい加減に……」
ん?また声がしたような……
「しろー!!」
先程耳元で聞こえた鬼のような声が部屋中に響き渡った。
リクは反射的に正座し頭を下げて
「はい!すんませんしたー!!」
と声をあげた。
人は命に気機が迫る時とっさに体が動く生き物である。
しかし部屋は急に静けさにみまわれ漫画であればここで『ヒュー』と風の描写が描かれている場面である。
そんな静けさの中、リクはそっと頭をあげると目の前には、1人の少女がいた。
その姿は、まるでラノベのメインヒロインに出てきそうで、背丈はリクよりはだいぶ低く、華奢な体付きで、透き通った肌にポツンと青色の大きな目があり、彼女のキラキラとした赤毛の髪は肩に届くか届かないか位の長さである。胸はそこまで大きくなく程よい膨らみがある。
その思わず『可愛い。』と声が漏れそうになるくらいの美少女がリクの前で正座している。
しばらく見とれていると彼女はムスッとした顔になり、
「何を寝ぼけてやがるんですか、あなた死にやがったんですよ?」
と彼女はリクにとって意味不明なことを抜かした。
リクは、『は?』と言うような顔で口を開けたまま頭上でクエスチョンマークを出し続けていた。
気を取り直しリクは
「ん?もう一回言って、聞こえなかった。」
と何かの間違えかと思い聞いてみた。
彼女は指を頬に当て呆れた顔で
「え?あなたは死にやがりましたよ?」
と余裕の表情でこちらに答えた。
リクは彼女の口から出た衝撃の一言におもわず声が漏れた。
「嘘だろ?」
「いいえ。嘘じゃねぇですよ。あなたは確かに死にやがりました。」
「なんで?」
リクは、震えた声で尋ねる。
「工事中のビルから鉄棒が落ちてきやがったんです。」
「それが俺に刺さったのか?」
リクがそう尋ねると彼女はクスクスと何かを抑えながら
「はい……」
とリクに告げた。
彼女は急に『めそめそ』と泣きだし可哀想な子犬を見るような目でこちらを見つめた。
数分後...
彼女は正気を取り戻し『コホンッ』と咳払いをした後に
「まぁ、理由はどうであり死にやがりましたので転移致します♪」
と人の死を『今日お皿が割れちゃったから新しいものを買っておきますね♪』的なノリで喋った。
リクは少々怒り気味で
「なんでそんなに気楽なんだ俺の人生をなんだと思ってんだ!」
と声をあげた。
すると彼女は少しばかり考えこう答えた
「まぁ例えるなら〜……ラーメンを食べて皿の底に残ったコショウくらい?」
その一言でリクはガクッという効果音と共に膝から崩れ落ちた。
「すげぇどうでもいい部分じゃん……」
とリクが落ち込むと彼女は頬を緩めて微笑みを浮かべた。
「冗談ですよーでも転移するのは本当ですしー」
と余裕そうに答えた
「はぁ」
呆れてしまいリクもしばらくして落ち着き、転移について尋ねてみた。
「なぁ、転移って言わゆる異世界ってやつに召喚されるのか?」
彼女は少し驚いた顔で
「あら、ご存知なのですか?」
と質問してきた。
リクは大の娯楽好きでラノベや漫画はたくさん読んできた。
異世界転生やら転移やらはかなり読み尽くしており、なんとなく展開が読めていた。
しかしその状況がまさか自分に降りかかるとは想像の余地を超えている。
「まあな、図書館の本に書いてあったのを読んだことがあるんだ」
と実際嘘では無いことをしっかりと彼女に伝える。
「そーでやがるんですか!そちらの世界にはそのような知識が書かれた本もありやがるのですか!?」
急に興奮し、身を乗り出し顔をリクに近づけてきた。
うわぁ女の子ってこんないい匂いするんだ。と決して言葉にしてはいけない事を思ってしまう。
「あ……あの〜ち……近いんですけどー」
リクがそう言うと彼女はさっきまで白く透き通っていた頬を赤く染めリクからササッと離れていった。
さすがにあまり女の子に免疫のないリクは、その可愛い少女の前に硬かった頬が緩みボーっと顔が赤くなった。
「す、すみません」
彼女は髪を手でクルクルさせながら少々動揺しつつも謝ってきた。
「いいって別に、気にすんな。」
りくの中ではむしろその恥ずかしがる顔を見れて嬉しい自分がいた。
そんな風に思っていることをよそに彼女は口を開いた。
「そ……それで本題に入りますがこの世界では……」
ゴゴゴゴォ
彼女が話そうとすると空間が揺れだしリク達がいた部屋の床は抜けてしまった。
「掴まれ!」
とリクは声をあげ彼女の手を取りそのまま抱きしめ、
二人で「うわあああああっ!」と声をあげ暗い闇の中へ落ちていった。
どうも皆さんこんにちは!この度は『オレナイ』こと『俺は主人公にはなれない』を読んでいただきありがとうございます♪
作者の鬼ヶ島ヤマキです!
普段は学生でだいたい月に3回は更新したいと思います。というかします!
不束者ですがどうぞよろしくお願い致します♪
さて次回は主人公リクと謎の美少女との冒険が始まりますねー楽しみですねウフフ(´ψψ`)
彼はこの世界で何を学ぶのか