91話:「マチルダ襲撃後の出来事」
リナたちが突入してきてから数分後、マチルダさんは床に正座させられた状態で
3人から尋問という名の説教を食らっていた。
流石に全裸の状態で説教するのはいかがなものかと言うことで
俺が寝る予定だったベッドのシーツに体を包ませているところだ。
マチルダさんの言い分を聞いた3人は彼女の奇行に一応の理解は示してくれたが
3人とも納得はしていないといった面持ちで彼女の取った行動を強く批判した。
「大体いきなり押しかけて殿方を誘惑するなどはしたないにも程があります!!」
「そもそもヤマト様はわたくしのものですので勝手に手を出さないでください!!」
「いつからヤマトさんはリナさんの物になったんですのん?
いい加減なこと言わないで欲しいですのん!!」
それぞれが互いの意見を述べたところでマチルダさんが口を開く。
「私は自分が見込んだ相手に思いを伝えただけです。
この思いに偽りはありません! ですからあなたたちにとやかく言われる筋合いもありません!!」
俺のもとにやってきたときはお詫び的なことを言っていた気がするが
どうやら俺の人となりを知って何か思うところがあったのかどうやら彼女も俺に惚れたらしい。
(全く俺のどこがいいんだか・・・・)
未だにこの世界の美的感覚に付いていけてない俺を差し置き
3対1の両者一歩も引かない状態が続いていた。
そんな状況に嫌気がさした俺は4人に声を掛ける。
「4人ともそれぐらいにしたらどうだ?
今俺たちがすべきことは仲間割れじゃない、次の道に進むための戦いの準備だ。
お互いに譲れないものがあるかもしれないけど、俺たちの足並みが揃ってないと
勝てる戦いも勝てない、そう思わないか?」
大和の至極真っ当な正論に反論する声は上がらず、4人とも俯く。
ややあってマーリンが静寂を打ち払うようにマチルダに話す。
「今回は初犯ということで見逃すですのん。 ですけど次は容赦しないですのん」
落ち着いた口調ではあるが、その言葉には力強さがあり
その場にいた全員が反論の余地すらないほどだった。
それに続けとばかりに二人が追撃する。
「あなたも一端の女なら正々堂々勝負してください!」
「ヤマト様はわたくしのものっ・・・・」
エルノアが真面目な言葉を紡ぐ中、リナはこの期に及んでふざけたことをのたまう。
それを見かねてマーリンが大人の対応で自分たちの部屋に強制連行する。
そして、女性陣の中で形だけとはいえ今回の『昼間から夜這い事件』は一応の決着に至る。
まだ言いたいことは山ほどあるといった感じで女性陣が自分たちの部屋に帰還していく。
残ったのは部屋の主である俺と襲撃者のマチルダさんの二人だ。
「「・・・・・・」」
先ほどの行為を思い出してしまい気まずい雰囲気が二人を支配する。
だがここは男として何か彼女に言ってやるべきだと思った俺は
口下手ながらも率直な感想を述べることにした。
「マチルダさん、その・・・・今回のことはお互いなかったことにしましょう。
あなたは今日ここには来なかったし、何もしなかった。 いいですね?」
気まずい雰囲気を何とか解こうと思って言った一言だったが
どうやらその言葉は彼女にとっては衝撃的な一言だったようで大きな目をさらに大きく見開きながら。
「そんなこと無理です! わたくしはもうあなたのことを・・・・」
「皆まで言わなくともわかるでしょ?」とばかりに途中で言葉を切る。
そんな彼女のしおらしい態度に大和も正面から向き合うと心に誓う。
そして、彼女の頭に手をぽんと乗せやさしく撫でながら諭すように話しかける。
「いいかい? この戦いが終われば俺はビルド大陸に行く。
下手をすればもう二度と会えないかもしれない。
そんな男を好きになっても君は幸せにはなれないんだわかるだろ?
正直君みたいな綺麗な女性が好意を寄せてくれるのは男身寄りに尽きる、だからこそ!!」
大和は一度そこで言葉を切り、彼女の頭を撫でていた手を頬にスライドさせるように持っていき
まるでキスをするかように自分に顔を向けさせながらリナたちが気絶した悩殺スマイルを顔に浮べ囁いた。
「君には幸せになって欲しいんだ、君のことを本当に大切にしてくれる男と一緒に・・・・」
窓から差し込む柔らかな太陽光に照らされながら彼の眩しい笑顔がさらに光り輝く。
磯の香りを携えた爽やかな風と共に発せられた彼の甘い言葉は彼女を納得させるには十分過ぎるほどで。
「見てなさいよ! あなたがあたしを振ったこと後悔させてやるんだからっ!!」
彼女の潤んだ瞳から零れ落ちた小さな涙と共にその言葉を真摯に受け止めた大和。
そして、涙で濡れながらも彼女が見せた彼女自身が持つ魅力的な微笑みに胸の鼓動が早まるのを抑えながら
彼女の背中にそっと両腕を回し、耳元で「ありがとう」とだけ小さく呟いた。




