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オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)  作者: こばやん2号
2部【アース大陸横断編】 第1章 「目指せドグロブニク 漫遊編」
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72話:「恋の始まりは突然に」

ベルゼは自信が出せる最速のスピードでリリスのもとに向かっていた。

理由は何故かはわからないが大和と同じ場所にいるのが嫌だったのだ。

ただ大和の顔を見るとやたらと心臓が鼓動をフル回転させ脈打ち胸が苦しくなる。

ベルゼはそれが胸のときめきだということを知らなかった。

ここにもまた大和の毒牙にかかってしまった女の子がいたのだ。


大和から逃げるようにリリスのもとに向かうベルゼだったが

猛スピードで飛行していたはずの彼女が突如止まってしまう。

理由は簡単、先ほど置き去りにしてきたはずの人物が彼女の進行方向で待っていたからだ。

大和はおどけた雰囲気でベルゼに問いかける。


「はっはっはっ! どこに行こうというのかね?」


まるで眼鏡をかけたどこぞの大佐のようなセリフを言い放ち

ベルゼの前に立ちふさがる。


「そんな馬鹿なっ! 確かに置いてきたはずなのに

どういう魔法を使ったのっ!?」


彼女の最速のスピードに追いつくということは

転移系の魔法を使ったのだとベルゼ自身は予想していた。

だが大和の口からは予想とは全く別の答えが返ってくる。


「うん? 逃げるから追いかけて来ただけだけど?」


迂闊だった、自分よりも強者である大和が

自分のスピードに付いてこられないわけがなかった。

寧ろ自分よりも早く動けて然るべきなのだ。


自らの行動がとんでもない失態だったと反省したと同時に

この後彼がどういう行動に出るのかわからなかった。

だが答えは至ってシンプルだった。


「じゃあみんなの所に戻ろうか?」


そう一言だけ話すとベルゼに背を向けリナたちが待つ場所へと戻って行こうとしたが

それは彼女の問いかけによって阻止された。


「どうして何もしないのよっ!!」


思わず叫んでしまった。

だがそれは彼女の心の底から出た疑問であったため

叫んだことを悔いてはいない、寧ろ逆だった。

なぜ彼が追い付いてきたのか?

何か目的があったからではなかったのか?

気が変わって自分を殺すために追いついたのではないのか?


様々な憶測を巡らせてみたもののしっくりくる答えが見つからなかったため

直接本人に聞くことで頭の中の疑問を解決しようとしたのだ。

だが彼の返答は彼女の予想とはかけ離れたそれでいて衝撃的なものだった。


「え? 何もするわけないじゃん、勝負はもう着いたんだし。

 ただ君と一緒にみんなの所に戻りたかっただけだよっ!」


彼の言葉が胸に突き刺さる。

まるで名匠によって鍛えられた業物の槍で心臓を射抜かれたような衝撃が

身体の隅々まで響き渡ると同時に肉体に熱が込み上げてくる。

彼女は知らなかった。

それは好きな人を前にしたときに起こる所謂【照れ】だということを。

初めて経験する感覚に戸惑いながらも大和が爽やかな笑顔を向けてくる。


(なぜなの? なぜこんなに胸がドキドキするのかしら?)


思わず大和から視線を外すと顔を俯かせる。

それに対して大和は柔らかな口調で話しかけてくる。


「みんなも心配してると思うから、戻ろうか?」


そう言って改めて彼女に背を向けるとゆっくりと進んでいった。

その後リナたちのところにたどり着くまで二人の間に会話は無かったが

ベルゼはその時間がとても心地いいものに思えて仕方がなかったのである。


こうしてまた一人大和の意図しないところで

彼に恋をしてしまった女の子が増えてしまったのだ。

だがベルゼ自身が大和に恋をしてしまったことを自覚するのは

もうしばらく経ってからの話となる。








一騎打ちの勝負がついてから数十分後大和とベルゼは

それぞれの仲間のもとに帰還した。


「ヤマト様、ご無事でなりよりです。 ではただいまのチューを!」


「やめい!!」


また訳の分からないことを言いながら

口を蛸のように窄めながら迫ってくるリナに対し顔を押さえ込む。

全くいい加減そう言うのは逆効果だというのを自覚してほしいものだ。


「二人が無事だということは引き分けですのん?」


今の状況を見れば確かに引き分けたと言われても信じられる状況だが

大和はきっぱりとマーリンに宣言する。


「もちろん勝ったぜ! なかなか強かったけど俺の敵じゃないね。 はっはっはっ!!」


とわざとらしく笑って見せるがこれは彼の本心だ。

確かに今まで戦ってきたどの相手よりもベルゼは強かった。

それは大和も認めているし事実だったが、それ以上に大和が強すぎたというのが

客観的な立場から見た結果だろう。


「ヤマトさま心配しました。 途中映像が乱れて見れなくなってしまった時は

生きた心地がしませんでしたよ?」


「映像? どういうことだ?」


エルノアの説明によればリリスの水晶玉で途中まで一騎打ちの様子を

観戦していたのだが最終局面になった時に映像が乱れ見れなくなってしまったのだそうだ。


「でもこうして無事にお戻りになられたので安心しましたっ!」


本当に心配だったのだろう目の端に大粒の涙を貯めて瞳を輝かせるエルノア。

それがちょっと色っぽくて照れ臭くなってしまったことは黙っておいた方がいいだろう。

それにしても一騎打ちの様子を見られていたとは迂闊だった。

おそらく映像が乱れたのは大和が最後に使用したマキシム級の魔法の影響だろう。

あまりに膨大な魔力なため魔力を使用しての映像化の魔法が掻き消されてしまったのだ。


ともかく最後に使用した魔法を見られなくてよかったと大和は心の底から思った。

次からは使う魔法を選んだ方がよさそうだな。

一緒に戻ってきたベルゼもリリスと何やら話し込んでいたがしばらくすると

大和たちに向き直り話し出す。


「小橋大和・・・・さん、今回はわたくしたちの負けということにしておいてあげますわ!

 ただし次こそは必ずその命奪って見せますわ!!」


そう宣言するベルゼに向かって俺は爽やかな笑顔でこう答えた。


「殺されるのは勘弁だけど、君みたいな綺麗な子に殺されるなら

本望かもねっ! なんてね!!」


そう言って片目を瞑って答えるがなんだか後ろにいる女の子たちの視線が

俺の背中に向けられているが無視してベルゼを見ると


「~~~~~っ!!」


顔を真っ赤に染め上げ俯いている。

少々きざな物言いだったから照れと言うよりも恥ずかしいのだろうと大和は解釈する。


「りっリリス! 帰るわよっ!!」

「はっはいわかりました。 じゃあまたねヤマト!」


俺にだけ聞こえる音量でそれだけ話すとベルゼと共に闇の中に消えていった。


突然襲ってきた魔族の幹部との一騎打ちに勝利した大和だったが

結局当初の目的であった洞窟の魔物とやらは現れず

洞窟自体もなくなってしまったため4人は町に戻ることにした。


町まで戻る道すがらリナたちが先ほどの大和の言葉を巡って

大和に尋問することになったのは言うまでもない事だろう。

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