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158話:「アリシア救出までの流れと賢者と勇者の思い掛けない邂逅」


 アリシアを救出するためガリウスが黒装束の男と戦っている最中の事、俺はアリシア救出のために

動こうとしていたのだが、それに待ったをかけた人物がいた。



 「そんなこと認められません!!」



 悲鳴に近い叫びで俺がこれから取る行動に異を唱えたのはリナだった。

 俺自身の身を案じて言ってくれていることは嬉しいのだが今回は緊急を要する事態であるため

彼女の意見には同意し兼ねる。



 「すまないがこれはもう決定事項だ。 この方法しか選択肢はない。

 それともリナ? 今すぐアリシアを見つけ出すことができる方法があるのなら教えてくれ。

 俺がこれからする事以外に今すぐ彼女を見つけ出せる方法があるのならな」


 「うっ」



 そう言われてしまい、二の句を繋げることができずに顔をしかめるリナ。

 俺がこれからやろうとしているのはアリシアを探し出す方法だがそれが少し特殊だ。

 俺は転移魔法の【テレポート】を使うことができるのだが、大概の場合テレポートの指定先は

街やその土地の名前などが基本なのだが、それを今回はアリシアを指定する方法だ。

 そうすることで拠点ではなくアリシアのいる場所にそのまま転移することが可能となる。



 ただしこれにもデメリットが当然ある。 それは転移できるのは俺だけだという事だ。

 アリシアが誘拐された以上彼女のいる先には間違いなく誘拐した犯人がいるだろう。

 しかも今回の相手は人ならざるものである魔人が相手だ。

 だからこそリナは俺の提案を安易に了承することはできなかったのだろう。

 自分の好きな相手が死ぬかもしれない死地に行こうというのだ。

 それを止めるのは人として女のとしては当然の行動であったのだが――。



 「それでもわたしは反対です……」


 「リナ、お前が俺を心配してくれるのはわかるしすごく嬉しい、ありがとう。

 だがな今はそんなことを言っている場合でないという事もお前なら分かってるはずだ」


 「……」



 俺がさとすようにリナに話しかけると視線を逸らし俯く、他の者も心配そうな面持ちで俺を見据える。

 そこでふととある奴を思い出した俺はそいつの名前を呼んだ。



 「ノーム、いるか?」


 「うん? ヤマトどうしただっぴゃ?」



 すると何もない空間から大地の精霊であるノームが姿を現す。

 「またボキのこと忘れたのかと思っただっぴゃ」と悪態を付いているがそれを無視して用件だけを伝える。



 「俺はこれから誘拐された女の子を助けに行くんだが、それまでこいつらを守ってやってくれないか?」


 「うーん、別に構わないだっぴゃが、ボキがそんなことをする必要あるんだっぴゃ?」


 「ずっと精霊空間にいるのも暇だろ? だから暇つぶしだと思ってやってくれよ」


 「なんか取ってつけたような気もするだっぴゃけど、分かっただっぴゃ」



 俺の提案にいぶかししげな態度を見せるもなんとか了承してもらえた。

 本音を言えばホントにただの暇つぶしだったのだが真実を伝える必要はないだろう、うん。

さて、事は一刻を争うので遊びはこれくらいにしてシリアスモードでいくとするか。



 「捜索サーチ《アリシア》」


 

 俺はアリシアの所に転移する精度を上げるため探索系スキルの『捜索』を発動し、アリシアの現在地を特定する。

 このスキルはかつてオンラインゲーム【タワー・ファイナル】をプレイしていた時に修得したもので

指定した特定の人物やモンスターの位置を探ることができる使い勝手のいいスキルなのだ。

 さあ、さっき使ったスキルの説明も済んだところでアリシアの場所が判明した。

 どうやら王都ガルヴァスから北西数十キロ地点に反応があり何故そんなところにという疑問が

浮かんだもののそんなことはどうでもいいとその考えを破棄する。



 「じゃあ行ってくる」


 「ヤマト様、陛下の事よろしくお願いいたします」


 「わかりました。 アリシアは必ず助けます」



 わらにもすがる思いで懇願するマリースさんに俺は了解の意を込め首を縦に振る。

 その後リナたちから「無事に戻ってきてくださいよ」と懇願されそれに頷きながら一つの魔法を使った。



 「テレポート《アリシア》」



 テレポートを使った瞬間王宮の一室からどこかの地下基地のような場所に飛ばされたがそんなことを

考えている状況でないことに気付いた。

 目の前にいる狼男モドキが自らの爪を立て、それをアリシアに突き立てようとしていたのだ。

 俺はすぐさま下半身に力を込め狼男めがけ突進していく。



 「ヤマトどのおおおおおおぉおおおおおおお!!!」



 まるで最後の断末魔の声を出すかのような呼びかけを叫んだとほぼ同時に

俺の揃えた両足が狼男の顔面に直撃する。 俗に言う『ドロップキック』だ。

 「ぐはっ」という俺の蹴りを食らったことで上げられた狼男のうめき声が聞こえそのまま壁まで吹き飛ばされていった。

 そして俺はというと、一応名前を呼ばれたので何となくだがそれに返答してみた。



 「呼ばれて飛び出て、ほほいのほーい」

 


 一瞬何が起こったのか理解できないといった表情をアリシアは浮かべたが

俺の姿を認識したと同時に滝のような涙と鼻水を流しながら悲鳴に近い声で俺の名を絶叫した。



 「や、やまとどのおおおぉぉぉおおおおおお!!」


 「うぇ、アリシア……すごく……汚いです……」



 俺の正直な感想を述べた。 なぜならアリシアの顔は彼女が作り出した汁だらけになっていたからだ。

 汁だらけと言っても決して卑猥ひわいなものでは断じてなく、なんというか涙やら鼻水やら汗やらといった類のものだが、とにかく表現としては汁という表現が適切だったためそこは勘弁願いたい。

 俺の感想に不満を持ったのか頬を膨らませながら抗議の声を上げるものの、俺が助けに来たことで

なんとか平静を取り戻したようだ。 だからと言ってドレスの裾で鼻水を拭うのは見たくはなかったが。



 「ぬぅ、いっ一体何が起きたのだ?」


 「あらあらあの子は確かわたしが殺した勇者ではなかったかしら?」


 「なっなんだと? 勇者? おい女、今お前勇者と言ったのか?」


 「ん? だからそう言ってるじゃないあの子はわたしが殺した勇者だって。

 どうやら死んでなかったみたいね」



 片膝を付きながらもガリウスは先ほどまで戦っていたサーヒルンのことなど忘れてしまうほど

今しがたやって来た男を凝視していた。

 それも仕方のない事だろう、何せ勇者という存在を十年以上も探し求めたガリウスにとって

勇者という存在に並々ならぬ思いを抱いていたのだ。

 ただ彼の名誉のために弁明しておくが彼は決してそっち系の趣味は持ってはいない。

 どちらかと言えば今対峙しているサーヒルンのような女性が好みだったりする。 ってこれは余計な情報だな。



 「あれが、勇者か……」



 一日千秋の想いで勇者が現れるのを待ち望んでいた想いが言葉となってこぼれ出る。

 ガリウスの呟いた短い一言がその想いを如実に物語っていた。

 この瞬間こそ【剣の賢者】であるガリウス・ブラウンと【神託の勇者】小橋大和が邂逅かいこうした決定的瞬間だった。

 そして、彼が大和の元に行こうと体に力を入れようとしたその時――。



 ――DOGOOOOOOOOON!!



 突如として崩れ落ちた岩からガルブが忌々(いまいま)しそうに崩れた瓦礫がれきの中から姿を現す。

 そして、首を左右に捻りながら大和に向かって歩き出した。

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