135話:「妖精の仮宿 (フェアリーロッジ)」
王都ガルヴァスの入洛は一騒動あったが何とか事なきを得た。
肩に服を掛け半裸の状態で戻ってきた俺に発情したメスどもをチョップで宥めすかした後
門を潜るとそこには人の往来と綺麗な街並みが待っていた。
都市というだけあって主要な通りは幅広く、以前訪れた旧王都フランプールの倍近くある。
行き交う人も比べるほどもなく多種多様で全体的に身なりが良かった。
これでけでもこの都市が他よりも一歩先を進んだ場所だという事を窺わせる。
さて人ばかり見ててもしょうがないのでこの都市の拠点となる宿屋を探しますか。
流石はドライゴン帝国の主要都市だけあって宿屋の数も多い。
今視界に見えているだけでも三軒の宿屋があった。
おそらくこの場所の他にもまだあるはずなのでどこにするか迷ってしまう。
そう思っていたちょうどその時、馬車の進行方向に二人組の衛兵の姿が見えたので話しかけた。
「そこの兵士の方、一つお聞きしたいことがあるのですがよろしいですか?」
「ん? 旅の方ですか、僕に何か?」
一見髪の短いボーイッシュな女の子と思ったがどうやら見た目女の子に見える男の子
俗に言う“男の娘”だったようだ。
衛兵にしては珍しい男の衛兵さんだったので気兼ねなく俺は質問した。
「初めてこの都市に来たのですがどこかおすすめの宿屋はありますでしょうか?
見たところ何軒かあるようなのですが、よくわからなくて」
いつもの営業スマイルを浮かべ、問いかけると何故か答えが返ってこない。
よく見ると俺の顔を呆然と見つめたまま「ぽー」っという言葉を口にしている。
この世界の女性が良く俺に向けてくる顔と似ていたので俺の顔に見とれていると理解するのに時間はかからなかった。
もう一人の女の衛兵は両手を組みながら「行きずりの美青年とマルコがっ、受けはどっちかしらっ!?」
という腐った属性を振りまいてきたが俺が苦笑いを浮かべると正気に戻った彼が俺の質問に答え出す。
彼曰く、この先の通りを進んで5番目の路地を左に曲がると大通りが見えてくるのでそこを右方向に進んだ先にある
【妖精の仮宿】という宿がおすすめらしい。
値段は少々お高いが他の宿よりも質のいいベッドに行き届いたサービス、そして一番のおすすめ理由として
その宿ご自慢の食事だそうだ。
食事は確かに美味い方がいい、特にこの世界では元の世界と同等の質を持った料理は数えるほどだ。
料理自体の技術が拙いというのも理由の一つだが、基本的には料理人が極端に少ないのだ。
その代わり元の世界よりも食材の質がいいため単純な調理である程度はどんなものでも美味い。
食事処自体も宿屋と併設された宿屋兼酒場のような店が多く、料理だけを提供するという営業形態の店は珍しかった。
もちろん軽食などを提供するような屋台は数多くみられるがレパートリーに富んではいない。
だからこそ、俺にとって食事が美味いというのは宿を決定付ける何よりの好材料であった。
俺はお礼を言いながら男の娘の髪をくしゃくしゃと撫でてやるとそのまま馬車を走らせた。
後ろから、女兵士の黄色い声と彼女に悪態を付く彼の言葉を聞き流しながら俺たちは【妖精の仮宿】に向かった。
彼の言った通りの道を辿ると、進行方向右手に【妖精の仮宿】という名前が書かれた看板が見えてきた。
俺は馬車を止めリナたちに馬車を厩舎に預けてきてくれと頼むと早速宿の中に足を踏み入れた。
アイテムボックスに預けることもできたが人前でやると大騒ぎになると思い自重した。
内装はどこにでもある普通の宿だが、細かい気配りが行き届いていることが窺える年季の入った感じだ。
昼飯時ということもあってか受付から見える食堂は多くの客とその対応に追われる宿の従業員で賑わっていた。
個人的な感想としては従業員の女の子は接客業という事もあってか、見た目がお宜しい子ばかりだった。
食堂に視線を向けていたからか受付にいた妙齢の女性がぶっきらぼうな口調で話しかけてきた。
「昼飯時はいつもこんな感じで混んじまうんだよな、まああと30分くらいで昼のピークは落ち着くと思うから
食事したいならもうちょっと待った方がいいかもな」
そう言うと彼女のは片足を椅子の座る場所に置くと、膝に腕を置きながらニヤリと笑った。
その体勢のお陰なのかせいなのかどちらなのかはわからないが、タンクトップから彼女の膨らみが自己を主張する。
元々薄着でいたこともあって目のやり場に少々困るところではあるが、女性経験はないが俺もウブではないのでポーカーフェイスを気取って
彼女の服装やチラリズムは流すことにした。
というかこの手のチラリズムはさんざん見せられてるしね(見たくないのに・・・・・・)
「人数は六人なのですが、部屋数はいくら空いてますか?」
俺はまず空いている部屋の数を聞いた。
すると三部屋空いているとのことなので、とりあえず全部屋を三日分ほど借りることにした。
それ以上滞在する時は追加で支払うと受付に告げ部屋の鍵を受け取る。
料金は一日一部屋1200ゼリルで合計10800ゼリルだった。
あの兵士の言った通り相場の1.5倍ほど一部屋当たりの料金が高かったがこれも必要経費だと思って、甘んじて支払おう。
金は腐るほど持っているのでこれくらいの散財は許してもらうとしよう。
そんなことを考えていると、艶のある色っぽい声音で受付の女性が口説いてきた。
「兄ちゃん、いい男だねぇ。 よかったらどうだい、アタシとこれからいいことしないかぃ?」
「このあとのお仕事はどうするのですか?」
俺はできるだけ彼女のチラリズムしている胸を見ずに正論をぶつける。
そんなこと知ったこっちゃないという態度で彼女は獲物を見定める獣の様相で舌なめずりをする。
「固い事言うんじゃないよぉ、いいじゃないか? なぁサービスしちゃう―――」
彼女が俺をさらに口説き落とそうと身を乗り出したところにまるでチンピラが睨みつけるような負のオーラを漂わせた
5人の女性が受付の女性を取り囲む。
「「「「「間に合ってます!!」」」」」
有無を言わせぬ態度と取り囲まれている状況に彼女はたじろぎそれ以上何も言ってこなくなった。
言うまでもないことだが、この5人の女性というのはリナたちだった。
いつもの彼女たちとは違う雰囲気に俺ですら近寄りがたいものを感じたがすぐにいつもの彼女たちの態度に戻ったので
俺はさっきの光景は幻だったと結論付けることにした。
とりあえず部屋は三つあるので部屋割りを決めることにしたが一つは俺が使うとして後の二つの部屋割りは5人で決めてもらうことにした。
幸いにも借りた部屋の一つが三つベッドがあったため俺が一つ部屋を取っても残りの二つの部屋でちょうど5人割り振れるのだ。
ちなみに俺の部屋は二人用だったがあいつらと同じ部屋で寝るとほぼ間違いなく夜這いをしてくるので少々勿体ないが二人用の部屋を一人で使うことにした。
これも全ては俺の貞操を守るためなのだ。
部屋割りはリナとフレイヤ、そしてエルノア、マーリン、マチルダという部屋割りとなった。
この旅で仲良くなったのか意外な組み合わせとしてリナとフレイヤが同室になった。
喧嘩するよりかは大分いいので、良い傾向だと捉えておくことにした。
かくして俺たちはドライゴン帝国王都ガルヴァスに入った。
3部【ビルド大陸上陸編】 第2章 「目指せ、ドライゴン帝国!」 完




