133話:「洞窟攻略とパーティー戦」
「ここが【ラゼルの洞窟】か・・・・・・」
迷いの森を抜けた先にある大きく口の開いた洞窟の入り口を見てぽつりと独り言を呟く。
「ヤマトさまどうやらこの先モンスターが多数いるようですのでご注意を・・・・・・」
俺の独り言に答える形でエルノアが注意を呼び掛けて来た。
その言葉に返事をする代わりに頭を撫でてやると顔を赤く染めながら上目遣いで見上げてくる。
凄まじい破壊力に理性を持っていかれそうになるが今はそんなことをしてる場合ではないので
意識をエルノアから洞窟へと向けることにした。
俺の行方不明騒動から一夜明けた今日、俺たちは山脈を越えるためのルートの一つであるこのラゼルの洞窟を
攻略しようとしていた。
お互いが最低限度の間合いを保ちつつ、不測の事態に即座に対処できるよう慎重に進んでいく。
洞窟内は想像していたよりも湿り気はないが視界が若干暗くなっていることと僅かばかり凸凹した地面のため
なかなか思う様に歩を進めることができない。
加えてそんな状況下でモンスターの不意打ちにも対応しないといけないため、自然と神経が研ぎ澄まされた状態になる。
人の手が入っていない細めの道を進んでいくと先ほどとは打って変わって20メートル四方ほどの空洞に出た。
天井の高さは今までよりも2、3メートルほど高い位置まであり広間というのが正しい表現だ。
「ここは一体なんですか?」
「小娘ども、油断するでないぞ」
「何か嫌な予感がします」
「この感覚は・・・・・・来るですのん」
「っ! 敵襲です!!」
それぞれリナ、フレイヤ、マチルダ、マーリン、エルノアの順で言葉を発すると
モンスターの群れが姿を現す。
どうやらこの洞窟をテリトリーとする固有種のようで名前の冒頭に『ラゼル』という
単語があることからこの洞窟にしかいない種なのだろう。
ちなみに出てきたのはマーリンくらいの大きさのネズミ5匹、人の頭ほどの大きさの蜂十数匹、数メートルはあろうかという大蛇2匹
そして、粘着質を帯びた液体を身体に纏ったスライム十数匹といった感じだ。
それぞれラゼルラット、ラゼルホーネット、ラゼルハイスネーク、そしてラゼルスライムという名前だ。
ステータスを確認してみると大体レベル30代後半から40代の辺りで構成されておりかなりの強敵だ。
だがこちらもレベル40が二人にレベル60が二人そしてレベル100オーバーが一人という戦力的には
こちらの方が勝っている。 なによりレベルカンストの俺もいるしね。
「お前ら任せたぞ」
「承知いたしました」
「ちょちょっとヤマト様も戦ってくださいよっ」
「ヤマトさまのために頑張ります!!」
「やれやれですのん」
「あの蛇、美味そうだな・・・・・・」
俺は5人にこの戦いを丸投げすると腕を組み高みの見物を決め込む。
だがそれは決して戦うのが面倒だとかいうものではなくちゃんと理由がある。
この世界を旅してわかったことがあるのだが、今いるような洞窟や迷宮やダンジョンといった特定の場所以外の
モンスターの出現率はそんなに高くはないらしくこの洞窟にたどり着くまでの道中もそれほど大したモンスターは出なかった。
これは俺の個人的な意見だが、戦闘においてパラメーターの高さよりもどれくらい戦闘を経験しているかが重要だったりする。
出産に例えるなら初めて子供を出産する時より二回目以降の方が一度経験しているという事もあり気楽だったりするのではないだろうか・・・・・・。
俺は男だから出産の経験はないが分かり易く例えるならそんな感じだ。
経験が少ない者より経験豊富な者の方がどんな分野でも有利に事を進めることができる。
そして、現在の我々のパーティーとしの強さはというと―――。
「ちょっと何するんですかっ!!」
「貴様こそ我の邪魔をするでないわ!!」
「はああ!」
「えーい!!」
「マチルダ、エルノアだめですのん! 前に出すぎですのん!!」
お分かりいただけただろうか?
この会話で今の俺たちのパーティとしての強さがまるでなっていないことに。
今回のモンスターの強さと俺を除いた5人の強さを天秤に掛ければ間違いなく5人の方が強いと断言できる。
だが個々の能力が勝っていようとも連携を用いたパーティーとしての強さは今回のモンスター達に軍配が上がっている。
数が多いラゼルホーネットとラゼルスライムが体力を奪うべく数で押し、ラゼルラットはホーネットとスライムがやられそうになると
間に入って加勢する遊撃をこなし残りのラゼルハイスネークは未だ様子見という連携を取っている。
俺の予想ではこのラゼルハイスネークはおそらくラゼルスネークが進化した上位種でこのモンスターの群れの指揮系統を担っているのだろう。
一方俺たちのパーティの連携は見るも無残なものだ。
知能が低いはずのモンスターでさえちゃんとした連携を取れているのにも関わらずこいつらときたら。
俺は呆れた顔を表に出さないよう努めて無表情を作り戦いの行く末を見ている。
ここで一つ疑問に思ったのではないだろうか。
パーティーとしての連携ができていないのならなぜ今まで勝ててこれたのか答えはこれだ。
「全員避けろ!!」
そう言うとフレイヤは大きく息を吸い込むと火炎の吐息を吐き出す。
そうだブレス攻撃だ。
この広範囲高威力の攻撃によって相手モンスターの連携を崩し、生き残った敵を各個撃破というのが大体のパターンだ。
要するにフレイヤのブレス攻撃でのごり押しなのだ。
最初のうちはそれでもよかったが後々のことを考えるとやはり今後連携について教えておいた方がいいだろう。
そんなことを考えながら俺は数の暴力ならぬごり押しの暴力を目の当たりにしながらモンスターが美女たちに蹂躙されていくのをただ見つめていた。
その後モンスターの群れが出現する度に連携についてレクチャーするのだが今まで慣れ親しんだ戦い方はなかなか抜けないもので
結局はフレイヤがブレスで片付けてしまうという場面が何回も繰り広げられたが、人間とは学習する生き物である存在なわけで
ようやく連携らしい連携を少しは取れるようにはなった。 (そう思いたい・・・・・・)
このラゼルの洞窟自体の規模はそんなに大きくないため数時間もあれば抜けることはできたが、こいつらに連携の実践訓練を
レクチャーしていたため洞窟を抜けると辺りはすっかりと暗くなっていた。
急いでテントを設営し、周りに敵感知系と撃退系の魔法を張り巡らせると俺はすぐさまテントの中で意識を手放した。
余談だがこの二つの魔法は主に襲ってくるモンスターのために張ったものだったのだがまさかそれに仲間が引っかかるとは思わなかった。
どんな理由で引っかかたのかは最早言うまでもないことなので割愛させていただく。
全くあの痴女どもめ、少しはつつしみを持ちやがれってんだ!!




