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前から2人の女子生徒が話しながら歩いてきた。2人とも背が高くスタイルがいい。可愛さだけだと珠理ちゃんの方が上だが、雰囲気がとても派手でいわゆるイケてる女子だ。きゃきゃと猿のような高い笑い声を時折上げている。その空気に押されて綾香ちゃんが珠理ちゃんの後ろに行き少し乱れた1列になった。彼女たちが当たり前のように2列で横を通り過ぎた。
でも、何かがおかしい。直観だが確信はあった。
「どうしたの。あの子たち可愛かったよね。」
僕の様子に気が付いた綾香ちゃんが話しかけてきた。その声に反応して珠理ちゃんが足を止めてこちらを見てきた。何か言いたげな顔をしていたが無視をした。
「今、何人居た?」
綾香ちゃんに話しかけた。
「2人だけど。もっといた?」
「2人だけど。」
後ろを振り返った。もう一度彼女を見た。左の色白の彼女だ。舐めるように下から上へと目線を動かした。後ろから真冬の氷のように冷たく痛い視線を感じた。
「綾香ちゃんちょっといい?」
そう言うと身を少しかがめ彼女のスカートを触った。そして、スカートを見比べた。
「ちょっと何するのよ。」
そう言ったのは珠理ちゃんだった。慌ててスカートから手を離した。キレた鬼のような顔でこちらを見てきたが、やっぱり無視した。
「スカートが違う。てゆうかスカートが二枚。」
ひらひらと揺れるスカートが段段になっていて変にフリルが付いたように見える。それに派手そうに見える女子にしてはスカートが長い気がする。
よく見ると靴下の少し上の部分だけがまるで日焼けしたように黒い。それ以上は息を飲むような白さなのに。
「重なっているのよ。達也君にはスカートから下しか見えてないのよ。私には、学校の制服を着たもうひとりが彼女に重なってみえるけどね。見えない幽霊なの、人をね。こういうこと結構あるの。」
珠理ちゃんが言った。
「そんな偶然あるんの?」
僕が言った。自分の目が大きく開いたのが分かった。
「別にたまたまじゃないよ。見えてないけど、共鳴し合っているの。彼女はたぶん今までずっと幽霊と一緒にいたんだと思う。そして、これからもずっとねえ。何も害はないわあ。幽霊にも人間にも。互いに存在自体も知らない。それでも、一緒に暮らしている。」
そう言うと再び歩き始めた。彼女の言い方はとても説得力があり、不安で壊れそうな僕を支えてくれる。
もっと知りたいと思った。幽霊についても彼女についても。