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彼女は美少女でしかも霊媒師  作者: 松山カイト
左足の靴下が右足のそれに比べて3cmほど短い幽霊
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3

学校から帰ってすぐにチャイムが鳴った。部屋に入りカバンを降ろす前に鳴った、まるで何処かから監視されているようで怖かったが、何度も鳴らされたので出るしかなかった。


 ドアを開けると黒のスーツのビジネスマンと見るからにわかる長身の男が立っていた。訓練された精巧な作り笑いでこちらを見た。


「すみません。私、第一幽霊保険会社の田中田の申します。」


そう言って黒い名刺を渡してきた。そこには、白い文字で聞きなれない怪しげな会社名と名前が書かれていた。それを受け取ると間髪入れず言った。


「佐藤達也さんでよろしいでしょうか。今少々お時間をいただきあなた様にとってとても大事なことなので、聞いていただきたいのですが。この度は、佐藤様が幽霊をご覧になったと伺いまして、ご訪問させていただきました。確認ですが、幽霊はご覧になりましたか。」


「まあ、ハイ。」

戸惑いながら体が勝手に反応した。


「どのような幽霊でしょうか。見た目や格好具体的に教えて下さい。」


何だこの人。どうしてこの人は僕が幽霊を見たことを知っているんだ、今頃なって気が付いた。彼に対して嫌悪感しかない。だがここは早く帰ってもらうために質問されたことをただ答えることにした。


「見た目は女性でした。とても綺麗で高校生ぐらいでした。あと、左右の靴下の長さが違いました。」

覚えていた限りのことを棒読みした。


「ありがとうございます。どうやら、女性の幽霊のようですね。」


まあ、そう言ったからね。見た目は女性と。彼は年をとった若手役者みたいな演技かかった言い方だ。

彼はカバンの中から、パンフレットを出してきた。


「弊社はその名の通り幽霊が起こしたこと専門の保険会社であり、多数ある幽霊保険会社の中ではおかげさまで顧客満足度が25年連続ナンバーワンであります。ところで、幽霊保険とはご存知でしょうか。」

僕は首を横に振った。


「誠に勝手ながら説明させていただきます。幽霊とはご存知の通り見える人見えない人がいます。あなた様のように見える人は残念ながら極少数でありまし、世の中には幽霊の存在を否定する人が多数いらっしゃいます。そのような方々には、幽霊に襲われて怪我を負わされた、家で幽霊が暴れだし大切な家具が壊れたと申し上げたところで、信じてもらえません。さらに慰謝料や賠償金は幽霊に請求するなんてことは叶いません。そこで必要となるのがこの幽霊保険です。」


そう言って週刊誌ほどの厚さがあるパンフレットを開いて見せた。


「弊社では様々なプランをご用意しております。まずこちらの基本プランですが、対物、対人保証に加えて除霊、占い、霊との意思疎通など私ども独自のサービスを用意させて頂いています。ちなみに、対物、対人とは幽霊から受けた被害だけでなく、通常のケガや病気にも適用されます。この基本プランに死亡保険をプラスすることもできます。その場合も幽霊以外にも適用されます。

 さらに弊社独自のサービスとしまして、家族全員に適用される、幽霊家族プランと言うものも用意しております。こちらに入られますと家族全員が同じサービスを受けられるものとなっております。通常の幽霊保険会社ですと、幽霊を見ることが出来る本人様しかサービスを受けられませんが私どもは特別に国の許可を得ていますので、可能となっております。」


首を時々縦に動かしながら彼の話を聞いた。今まで全く何を言っているのか分からない。彼はさらに続けた。


「弊社はお客様がいつでもサービスが受けるよう24時間で対応させて頂いています。幽霊と言えば夜とイメージがあると思いますが、昼夜問わず心配が伴っています。そこで、24時間365日いつでもお電話一本で最短5分で駆けつけさせて頂きます。こちらのサービスがお客様に大変好評です。その他にも多彩なサービスを用意させて頂いておりますので、こちらを見ていただくと恐縮です。ぜひとも、弊社を検討させて頂きたいと思います。」


はいと小さな声で頷いた。とても満足そうだった。


「失礼ですがおいくつですか?」


「17です。」


「そうですか。ぜひとも、ご家族の方に相談していただきますと恐縮です。あなた様にとってとても大事なことなのですので。あと、こちらのアンケートに記入していただくと全員にこちらの新幽霊大辞典をプレゼントさせて頂いています。幽霊の対象方法、幽霊とのコミュニケーションの取り方、幽霊に人気のおしゃれなお店の情報など大変お役に立てるものとなっておりますので、是非ともご記入を。アンケートはこちらの封筒に入れて切符は要りませんので、封をしてそのままポストに投下してください。本日はお時間を割いて頂きまことにありがとうございます。では、失礼致します。」


玄関の外に出てもう一度頭を下げて帰った。


 ふうと息を漏らし、立ち竦んでいるとすぐに、またチャイムが鳴った。


「こんばんは、世界中央幽霊生命保険です。」

頭が痛くなってきた。玄関の扉閉めておけばよかった。



 それから2、3人の相手を処理した。もう完全にマヒして、幽霊と言うのは地震と同じようなものなんだなあと、外に出て月に向かって呟いてしまった。そのとき、ポストがパンパンになって大量の紙が外に漏れていたのを見た。それらは全て幽霊保険会社の資料と名刺だった。それらを全て抱えて自分の部屋に持っていき机の上にぶちまけた。



 そして、すぐに彼女に電話した。すぐに出た、まるでいや分かっていたのだろう。


「もうしてきたの。早くない?まあ、明日でいい?放課後あなたの教室行くから。」

とても機嫌悪そうな声だ。


「あれは何ですか?幽霊保険って聞いたことないけど。」


「聞いている?今からお風呂入るの。じゃあね、バイバイ。」


一方的に電話を切られ、たった15秒で通話は終わってしまった。

 はあと大きなため息が漏れた。





 死ぬようにベッドに倒れた。制服を着たまま布団の上で寝てしまった。


起きたらもうすでに日が昇っていた。とても身体が重たかった。

 


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