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彼女は美少女でしかも霊媒師  作者: 松山カイト
幽霊よりも怖いもの
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バカじゃないの

「バカじゃないの、あんた。それ騙されたんだよ。」


昼食をとりながら昨日の話をすると、いきなり珠理ちゃんが叫んだ。第四理科室には僕と彼女の二人きりだ。綾香ちゃんは図書委員の仕事があるらしい。


彼女が口の中に何も入れてなくてよかった。もしそうだったらここ辺り一帯にご飯が飛び散っていただろう。


「そんなはずないでしょう。」


だって一万円も払っているんだから。心の中で言った。


「そのお守りっていうのを見せてよ。」


僕がポケットからお守りを出し彼女に渡す。


「これね、確かに見たことないね。」


「でしょう。だって金色で文字が書いてあるんだよ。絶対本物でしょう。」

彼女の反応に嬉しくなった。


「ちょっと待って、これ。」

彼女がお守りの文字の部分を爪で擦り始めた。止めようとすると何かがはがれたがあった。


「これシールね。」


そう言われて見ると金色の文字だった部分が彼女の手に在った。なぜそんな簡単なことに気が付かなかったのか自分を疑った。


 確かにおかしなことはいくつもあった。

まず、どうしてこんなにも都合よく助けられたんだ。漫画じゃあるまいし。普通の住宅街で幽霊に襲われる確率とさらにそれを助ける人が現れる確率を掛け合わせると一体何パーセントなんだ。


 それはもはや奇跡か、誰かの罠かしかないだろう。


 勿論その時は、奇跡と思っていたのだが。


 それにあの幽霊はなぜ走って逃げたのか?幽霊なら幽霊らしく、消えればいいのに。(チーちゃんも僕の部屋から移動するときは、スーと消え突然現れる。ただ、散歩することはあるが。)


 そして何より一番おかしなことは、チーちゃんが未だに見えていたことだ。でも、そのときは、チーちゃんは可愛いから効果がないのだろうと思っていた。だってカワイイは最強だからという勝手に解釈して。


「まあ、交通安全って書いてあるから事故には遭わないんじゃない。一万円で授かったんだし。」

呆然とするしかなかった。大切な今月の食費が一万円も失われたのだから。一体何日食つなぐことが出来たか。


「幽霊を見られなくすることがそんなに簡単できるはずないじゃない。バカじゃないの。」

そんなにバカ、バカ言われなくても分かっている。もう泣きそうだ。

「助けてもらったし、それのお金だと思えば。」

自分に言い聞かせた。


 だが失敗した。


 心の中で思っているだけだったら、それを糧にして生きることが出来たのに。それを聞いた彼女が大きなため息をついた。


 そして言った。

「だから、バカなの。それも含めて全部騙されているのよ。」


「え?」


「バカみたいな声出さないでよ。かわいそうで涙が出ちゃう。幽霊が達也君を襲って、それを助けてあなたに高いお守りを売る。何てべたなやり方なのかね。よくこんなのに引っ掛かったわね。バカじゃないの。恥ずかしいから絶対に他の人には言わないでね。家の前撒かれた白い粉だって、小麦粉かなんかじゃないの。」


彼女は本当に迷惑そうな顔をした。さらに傷つく。せめて塩にしておいてほしかった。じゃなくて

「幽霊に騙されたってこと?」


「幽霊のはずないじゃん。あなたの言っている真っ白の格好に真っ白の肌?そんな、おとぎ話に出てくるような幽霊なんていないよ。達也君もたくさんの幽霊見たけどそんなの居た?居ないよね。見たことないよね。人と区別つかないのがほとんどだよね。バカ。」


もうだめ、焼きそばパンの袋を開けるのはやめた。食欲がない。

「だから、気を付けなさいと言ったでしょう。達也君は幽霊が見えることは知られてしまっているんだから。こんなことにならないためにも保険に入らないといけないのよ。だから、早くハンコ貰ってきて。」


その発言も何だか怖い。まさかと言う顔をしてしまったらしい、彼女が怒りながら言った。


「何その疑いの目。私も詐欺師と同じって言いたいの。達也君のために言っているのよ。狙うならもっと金持ちにするよ。」


「え?」


「冗談よ。バカ。」


顔を真っ赤にして出て行ってしまった。ひとり残され、心が空虚になった気がした。


すぐに身支度し教室に戻った。


 騙されたのが分かり彼女に散々バカバカ言われて午後からの授業は、完全に死んでいた。シャーペンを持った記憶すらない。


 亡霊のようにふらつきながら学校を出た。


 学校を下校中、横断歩道を渡る幽霊を見た。




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