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第三話


シュウが向かった先はゲルニルに伝えた、ルベルトという人物が住んでいる場所だ。

一区の壁際に近い場所はアガルタがある場所と違い、治安は悪い。

ライも所属するカロスだが、人数不足もありアブロガ全域を見守れていない。

そうした外れ地域にはならず者が集まり治安が悪くなっていく。

助け合いの精神が無いならず者がする行動など、考えなくても分かるものだ。


「相変わらずこの辺りの連中は目が怖いねぇ」


襲う価値のある者だと思われた際は人生にお別れを告げる事になる場所を、シュウは戯けながら歩く。

周りに睨まれながら歩いて数分、シュウは目的地に近付くにつれて嫌な匂いがする事に気付く。


「あぁ~あ。これだから嫌われ者になるんでさぁ、ゲルニルのあんさんは」


予想通りではありますがね、そんな顔をしながらシュウは目的地へと辿り着く。

そこは木造のボロい長屋の一つ。

扉だったであろう部分が壊されてあり、家の中へと入るのを拒むものは無かった。


「というかあの人のデカさじゃ扉を壊しでもしない限り入れなさそうでさぁ」


シュウは外から中を覗く。

そこには人であっただろうモノがあった。

腹から血と内蔵が飛び散りと家の中を赤一色に変えてしまっていた。

生きたまま腹を裂かれたであろうその死体は、苦悶の顔が浮かんでいた。


「ご冥福をお祈りしますよルベルトさん。しかしルベルトさんも相手が悪かったね。あのゲルニルのあんさんに喧嘩を売るなんて」


常人ならば叫ぶなり怯えたりするものだが、シュウは慣れているようで死体に向かって話始める。


「喧嘩、というよりはただあの人にぶつかっただけ、でしたっけね。まぁそれがあの人にとって気に障る事だったのが運の尽きでしょうぜ」


そういう男なのだ、と死体へ言う。聞こえてる訳はないだろうが。


「本当なら弔いでもしてやりたい所でさぁ。だけどね、この世界じゃ今のルベルトさんを喜んで欲しがる輩も居るんでさぁ」


周りからの視線を感じながらシュウはそれを最後に、その家から離れる。

そして少し離れた所から聞こえる騒音を目指してシュウは再び歩く。



「派手にやってらぁ」


騒音の元に到着したシュウの感想だ。

シュウの前には家だった物が数軒あり、今なおそういった物が増えていっている。

住人には不幸な事だが、原因に巻き込まれなかっただけまだ幸せなのかもしれない。

そして原因である二人だが。


「おらおらぁ!どうした若造?俺を取り締まるんじゃなかったのかぁ!?」


「見かけによらず俊敏に動く豚めっ!」


「褒め言葉かぁ?ありがとよっ!これは、お礼だっ」


巨体が両腕を振り上げた後、そのまま急降下させる。目標は金髪の男だ。

寸前に防御をしていた彼に回避は間に合わず、防御せざるをえない。

しかし、巨体から繰り出された一撃はその防御を容易く崩す。


「ガハッ!!」


地面へと打ち付けられた金髪の男は、直ぐ様回避を取り巨体から離れる。

金髪の男からは巨体の相手に致命打を与えることは出来ておらず、彼の怪我が増えるばかりだ。


「がははっ!よく持つ方だと褒めてやろう若造。しかし、それもいつまで続くかな?」


「くっ!!」


対する巨体の男は未だに余裕がある様子であり、遠からず勝敗はついてしまうだろう。

巨体の男は次なる一撃を放とうと構える、が。


「おっと。試合終了ですぜ、ゲルニルのあんさん。これ以上は止めていただきたいねぇ」


巨体の男ゲルニルと、金髪の男ライの間に入るシュウ。


「シュウ!?どうしてここに!」


「何でも屋か。お前も相手してくれるってのかぁ?」


ライは驚いているが、ゲルニルの方は喜んでいた。


「残念ながらあっしにそのつもりは無いですぜ。弟を迎えに来ただけでさぁ」


「…俺がそれを許すとでも?」


「あんさんの本来の要件は済んだ筈ですぜ。後は帰って寝てくださいな。それに、楽しみは後に残しておいた方が良いですぜ?」


ゲルニルはライの顔を見た後にシュウへと視線を向ける。


「まぁそれでもヤルってんなら覚悟してくだせぇ。二対一は流石にキツイんじゃないですかい?」


既に抜いてあるサビトウを構えながらシュウは言う。

ゲルニルはそれを聞きニタァと笑みを浮かべる。


「ここじゃ暇潰しするモノが少ねえからなぁ…。残しておくのは賛成だ」


そう言ってゲルニルは背を向けて二人の前から去っていった。

残ったのはライとシュウ、遠巻きにこちらを見ているこの辺りの住人達だ。


「さて、帰りやしょうかね」


サビトウを直しながらライへとそう言うシュウ。しかしライの反応は無かった。


「あららぁ?もしかして気を失っちまってます?」


「シュウ、すまない」


ライの目の前で手を振るシュウに、返事が返ってくる。


「なんであっしに謝るんですかい?」


「君が来なければ、恐らく私は…」


「ま、状況判断が出来るだけ成長したって事でさぁ。昔のライさんなら突っかかって来たでしょうぜ。『君が邪魔しなければ』ってね」


「ふんっ。そこまで愚かではない」


「ゲルニルのあんさんの行き先を調べて一人で突撃することが愚かじゃないって事ですかい?正義感があるのは良い事でさぁね。でも自分の力量と相手の力量を量り間違えちゃいけませんぜ」


「むっ……う」


流石に言い返せない様子のライ。


シュウにゲルニルが頼むことはそう多くない。

偶に頼むことはもっぱら情報、それも人探しだ。

ならば今日の要件もそれだと考え、ライは食事後にカロスのツテを使ってそれを調べた。

…結果はこれだが。


「ま、兄としてそれぐらいは予想済みって事でさぁ。さて、途中で医者にも寄ってきやすか」


「っつぅ!!」


あえて傷がある背中を叩いて歩き始めるシュウ。


「痛いって事は生きてるって事。命大事に、ですぜ」


「あぁ、そうだな」


目の前の男の傷だらけの身体を見て、ライも頷き後を付いていくのだった。

ヒロイン出ないなぁ・・・。

あっ、ちゃんと女の子出ますよ?

女の子の為に書いてるようなものですし。

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