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第一話 

アブロガ一区。そこで何でも屋を営む一人の男が居た。


「そうだ。暇しているならいつもの頼んでいいか?」


「あいあい。報酬もいつもの頼みますぜ」


「あぁ任せろ」


ここ、料理屋『アガルタ』の店主ザッカードからの頼みの内容は至って簡単である。

食材の調達。

当然ながら、料理というものは食材が無ければ作ることは出来ない。

しかし、食材があっても料理が出来ないという事も勿論ある。

それは料理人の腕だったり道具の不足だったり、と。

なのでこうした料理屋というものがアブロガでは何店も存在する。

食材を持ち寄り、その食材で料理を作ってもらえる。料理屋というのはそういう認識で良いだろう。

まぁ。店側に得があるように多少多めに持ち寄ったりしなければならないが。


「そういえば何か希望はありますんで?無ければ適当に持ってきますけど」


「甘味系の在庫が少ない。その辺りを頼む」


「了解でさぁ。ではちょっくら行ってきますよ」


彼の名はシュベルト。

アブロガで『何でも屋のシュウ』としてある程度名前は知られている。

彼自身の腕は良いので仕事は舞い込んでくるが、それを選り好みするのが彼の悪い所なのだとある人が言った。

ここで仕事が貰えるだけでもありがたいと、同業の者は不平や妬みを感じているがそういったおこぼれを貰う事もあり直接言う事はない。


「さて、ザックのダンナが気に入りそうなものでもあれば良いんですがねぇ」


彼はそう言い、アブロガ一区での廃棄場バスレロへと歩いていく。

アブロガの全てのモノの始まりの地とも言えるその場所は、誰もが嫌い、そして利用する場所。

ここを利用せずには生きていけないのだから、どうしたってそうなるのだが。

そう、バスレロとは。

カミに廃棄処分されたモノたちの行き着く先、ここアブロガへの入り口だ。



「うーむ…。あまり目ぼしい物はありませんでしたが、そんな時もありまさぁね。しかしまぁ、カミサマ達も勿体無いことしますぜ」


彼、シュウが袋から取り出した食材には傷や食いかけの跡がある食材ばかり。

その内の一つ、リンゴをかじりながら呟く。

しかし、それらは味が悪いわけでも毒があるわけでもなかった。

廃棄処分された物だから、つまりはそういう事が当然なのだが、アブロガの住人からすれば勿体無いことこの上ない。

…とはいえアブロガの住人は何も廃棄されなければ生きていないのだから、質が悪い。


「ってつい食っちまいましたが、リンゴは甘味に含まれましたっけ?ザックのダンナに何も言われなければ良いんですがねぇ」


彼はそう言うも、芯まで食べ終えるとお腹を擦る。

傍目から見ても彼が満足そうにしているのは直ぐ分かる。

そして証拠隠滅も兼ねているのだから、何も問題は無かった。…彼の中では。

まぁザックもたとえそれを知ったとしても気にはしないだろうが、気分の問題というのは大事だろう。



「ん?何か事件でもありましたかね?ちょっと覗いていきますか」


進行方向、アガルタへの道すがら人だかりが出来ている場所があった。

端を通れば抜けるには問題なさそうだが、シュウは興味本位で人だかりへと突っ込んだ。

人混みを抜け、事件の中心であろう場所に来ると。


「おやおや、ライさんでしたか。ってことはカロス関連ですかねぇ」


どうやらシュウの知り合いの様で、ライと呼ぶ金髪の男へと近付いていく。

辺りの人が驚くが、それも無理はない。

ライとやらとその目の前に倒れた男が居る状況で、誰もが少し離れて見る中、近付く奴は中々居ない。

その驚きも近付く人物を見て直ぐに収まったが。


「やぁやぁライさん。お仕事お疲れ様ですぜ」


「シュウか。君のそれを見るとアガルタに向かう途中か?」


「そうですぜ。良かったらライさんもどうです?」


「丁度私も行こうとしていた所だ。邪魔が入ったが」


ライは身なりを整えると倒れた男に目を配り、そしてシュウと共に歩き始めた。

観客もそれに続いて解散をしていき、残ったのは倒れた男だけになった。



「はぁやれやれ。こう何度も襲われるとたまったものではないな」


「おっとぉ?治安維持が間に合って無いんじゃないですかい、カロス一区隊長さん」


「ぐ…。それを言われると返す言葉も無い」


アブロガが造られ住人が集まった当初、秩序が乱れるのは仕方のない事だった。

しかし、それを良しとしない一部の人間が集まり、治安維持を目的とした組織を作った。

それが警備隊『カロス』だ。

主に暴力行為を取り締まるので、そういった恐怖に怯える弱者達の強い味方だろう。

アブロガが造られてから既に数十年経っているわけだが、ある程度の秩序が守られているのはカロスのお陰だろう。

その中アブロガ一区を任せられているライの実力と統率も、それに相応しいものではあるのだが…。

如何せんそのライの年齢が若い為に舐められることが多く、先程のような者が居るのだ。


その事を知っていてあえて言っているシュウだが、真面目なライはそれに気付かず落ち込んでいる。


「ま、あっしみたいな弱者の味方が居るのはあっしらにとっては心強い事ですぜ。そう落ち込みなさんな」


「…そう言って貰えると助かる」


ライは何か言いたいことがあった様子だったが、あえて言わずにお礼を言った。


「シュウの方は変わりなさそうだな。アガルタに入り浸っているのが目に浮かぶ」


「最近はザックのダンナからしか依頼受けてませんからねぇ」


「そうやって生きていけるのなら問題はあるまい。ザックがお得意様で助かるな」


「少なくとも食に困ることはないですしねぇ。食があればここでは何とか生きていけまさぁ」


「違いない」


二人が他愛もない会話をしていると、アガルタ前で掃除をしていたザックが二人に気付き話しかけてくる。


「またシュウが絡まれでもしていたか?」


「ザックのダンナ、そりゃひでぇですぜ」


「はは、絡まれたのは私の方だ。そこで偶々会ったので一緒に来たんだ」


「そうか。しかし、タイミングが悪いな…」


ザックはライの方を向きながら気まずい様子だ。

しかし話さない訳にもいかないようで店を指差す。


「シュウ、お前にお客さんだ。相手は…ゲルニルだ」


「あららぁ。そりゃ確かにタイミングが悪い。そんじゃまぁ、さっさと話を聞きに行きますかねぇ」


シュウはライに方をチラリと見るが、直ぐに店へと入っていった。

残されたザックは、見るからに不機嫌な様子のライをどうしたものかと悩み始めるのだった。

いつも通り 更新は未定☆

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