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5ショートストーリーズ7

ビール、最高の一杯

年末年始も近づいて、お酒を飲む機会も増えますよね、お父さん!

 俺は酒が好きだ。もちろん俺は大人だから酒を飲んでも何の問題

は無い。


 最近、特にハマっているのがビールだ。あ、正確にはビール風の

発泡酒だ。


 まあ、ビールも発泡酒も俺には同じ様なもん。そこにはそんなに

拘りが無いのが俺のいい所。

 第一、ビールに比べて安いでしょ? 毎日飲むから積み重ねれば

それなりの違いが出ちゃうんですよ。聞いてる安倍サン? 第三の

ビールの税率を上げるってマジっすか? それがアベノミクスっす

か? そうなったらオレ、ビール一揆を起こしますぜ? イッキ。

そう、ビールだけにって。


 で、そのビール風発泡酒ですが。まあ、めんどくさいのでもうビ

ールって言っちゃいますが。ごめんなさい、エ●スビールさん。あ、

何となく謝っちゃいましたけど。深い意味は無いんですよ。ええ。


 で、そのビールですけど。ただ飲むより、我慢して我慢してよう

やく飲むと一層美味しいんですよね。そう! 動き回って、汗をか

いて、そうしてやっと飲むビール。


 特に真夏がいいよね。ジリジリと照りつける太陽。もう肌が熱い

っていうより痛いっていう感じ。そんな夏の日に、敢えて帽子もか

ぶらずに外に出てさ。


 熱中症も何のその、水分も敢えて控えて、走り回って。そう、ま

るでいっつも走ってる子供みたいに。あ、子供って意味無く走るよ

ね? だからすぐ転んだりして。あ、まあそんな感じで動き回って

汗かいて。


 で、お風呂に入ってさ。もう、咽がカラカラのそんな時。ビールを

グラスに注いで一息に飲む。ゴキュン、ゴキュンって音が鳴っちゃう

位。


 あ~、もう最高ですぜ、お客さん。それが一番上手いビールの飲み

方じゃないですかね。


 しかし人間というものは欲の深いもの。もっと美味しいビールの

飲み方はないかと考える訳ですよ。特に季節に関係なく、一年中使

える方法。うん。考えちゃうんですよ。で、出た結論。


 やっぱり我慢の限界点の取り方。それに尽きるんじゃないかって。

間単に言えば、我慢すればするほど美味しいビールを飲めるんじゃ

ないかってね。

 

 でね、やってみました。うん。つい最近の事です。


 まずは三日間のプチ断食。これを試したんです。ええ。


 事の始まりはネットで見たんです。これをやると体調が良くなる。

しかも断食開けの最初の食事が奇跡的に美味いって。


 マジっすか! 食事が美味いなら当然最初のビールならどんだ

け? ってな理由わけ


 はじめはキツかったですよ。でも、人間、慣れれば何とかなるも

んです。美味しいそのビールを想像して何とかやり遂げました。で、

断食開けに最初に飲んだビールの一杯、これの何と美味しかった事

か! 砂漠の砂に水が染込むが如く、自分の体に染込んでいくビー

ル。もう、絶頂ですわ。ドーパミン、ドバドバってなくらい。


 しかし欲には欲が勝るもの。もっと美味しいビールが飲みたい。

その欲望は日々大きくなって、もうどうしようもありません。


 断食するには時間がかかる。もっと楽に出来る方法は…。


 と、ひらめきました! サウナ風呂があったじゃん。短時間で身

体をカラカラに出来る方法。しかも駅前にある温泉施設でお手軽に。

何でもっと早く気がつかなかったのか、この俺のおバカさんめが!

と言いながらも笑顔になる俺。


 念の為、サウナにいく前に一汗かいてと。ジョギングを十キロほ

ど。もちろん水分はとってません。これも昨日から。


 いよいよサウナに入ります。入り続けます。途中で意識が遠のき

ますが、まだまだ我慢! ここでやめたらせっかくの努力も水の泡。

だって一番美味しいビールが飲みたいんだから! 


 俺の気合の入り方に、身体に模様のあるある種の方も、俺を避け

てるみたい。俺の周りにはまるでバリアでもあるかのように人は寄

り付かない。きっと余程の情念が感じられるんでしょう。だから余

計に気合も入りますわ。


 今なら言えます! おい、そこのヤー公、お前さん、もう出るの

かい? 根性ねえなぁって。俺はまだまだ我慢出来るぜ! そうま

だまだ。


 まだまだ! まだまだ…ん? もう限界が近いかな? もういい

かな? もうすぐ至福の一杯が…そう思っているところで意識が…

遠のいていって…


 次に意識が戻ったのは救急車の中らしい。


「大丈夫ですか? 私がわかりますか?」


 耳元で微かに聞こえる救急隊員さんの声。


「えぇ、ぁ、ぉ願ぃですから点滴は打たなぃで…」

 やっと搾り出すようにして出た言葉は、救急隊員さんには…通じ

なかったようだ。


「はい、大丈夫ですよ、すぐに点滴を打ちますからね。そうすれば

すぐに良くなりますから」


 救急隊員さんは天使のような微笑を浮かべながらそう言った。


「そうじゃなくて…その前にどうかビールを、ビールを一杯くださ

い…最高の一杯の為に俺は…」


 やっぱり俺のその言葉は、救急車のサイレンにかき消されて、誰

にも届かなかった。

  


 

そこまでしても美味しい一杯が…やっぱり飲みたいんです!

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