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番外編3・『狩りの始まり』

 東京都六本木中央総合病院。

 文字通り六本木に位置するこの総合病院の精神科施設。そのさらに中にある小さな病室に、私は足を運んでいた。

 小さな椅子に座り、ただ何も言わずに目の前にいるベットに寝ている人物――――自身の母を見る。

 白色一色のベットで、静かにずっと人工呼吸器による空気送入音と心電図モニターの定期的な電子音しか聞こえないこの静けさ。

 気まずい、などとは一片たりとも思わない。

 私以外に見舞いに来ている者などいないのだから。


「……お母さん」


 点滴のために外に出されている右腕をさすり、そっとその先の手を握る。

 とても冷たい。まるで死体のような冷たさだ。だけど、生きている。このようになっても、生きているのだ。私の母は。

 こんな無様を晒してまでも、必死にしがみ付いているのだ。

 此処で終わらせて堪るか、と泣き叫ぶように。

 私の母の名前は、柊雪乃ひいらぎゆきの――――少なくとも履歴上ではそうなっている。当然、私が四苦八苦して書き換えた偽の戸籍だ。本名は、緋乃柊あけのひいらぎ雪葉ゆきは。私と違い、戸籍改竄前はかなり名が広まっていたため、不本意ながら本名まで変えて過ごさなければならなくなってしまった、私の母は。

 見ていて苦しくなる。

 もう昏睡状態になってから、四年が経とうとしている。

 激しい頭痛と疲労が同時に襲撃するが、無理やり跳ね除ける。


「……こんな所で……終わらせて堪るもんですか……!!」


 唇をかんで眠気を強制的に吹き飛ばすと、握っていた母の手をより強く握りしめる。

 ――――すべてあの男のせいだ。

 衣渉ころもわたり我堂がどう。私たち家族が、こんな目になったすべての現況。

 今もなお息をしている、諸悪の根源。


「……殺す」


 何年も前から言ってきたこの言葉を、再度母の前で誓うことで確実なものとする。

 どんなことがあろうとも、どんな状況になろうとも。

 刺し違えてでも、殺す。

 それが私の唯一の望み。ただの憂さ晴らし。


「だからどうした……!」


 どんなに避難されようとも、これまでこのためだけに生きてきたのだ。

 今まで払った犠牲を無駄にはしない。

 もう失うものなんて何もない。

 全てをなげうってでも、地獄に落ちようとも這い上がって殺す。

 まるで狂気のような誓いを心の中で何度もして、ようやく母の手を離す。


「ほんと……どうしてこうあったんだろ。……なんで」


 ただ一人で、そう呟き続ける。

 誰も応えてくれないこの一室で、ひっそりと孤独にまみれながら。

 復讐心を静かに燃え上がらせながら。

 ふと右の太もも辺りから振動を感じる。触ってみると、自身のスマートフォンが風る得ているのがわかる。取り出して画面を見ると、そこには『不明』と書かれた液晶。一秒だけ迷った末、緑の通話ボタンをタップし、耳に当てる。


「……もしもし」

『ようやく繋がったか』

「……椎奈結城?」


 そこから聞こえてきたのはつい先日顔を合わせた第一協力者、椎奈結城の声だった。

 一体何事かと思ったが、まさかもう衣渉我堂の居場所が特定できたというのか。自分が数年かけても見つけられなかったのに。


「何の用。……いや、そもそもどうやって私の番号を」

『携帯会社の登録データベースを軽くハックして、お前の名前を片っ端から照合した。三十分かかったが、変に履歴とか覗いてもどうせ在住先なんて改竄しているだろうし、あまり意味は無いと思ってな。こうして携帯で通信するほうがまだ確実だろ』

「ええ、確かにそうね。でも次から同じ携帯には繋がらないと思ってちょうだい」

『へいへいそりゃどーも。それで早速本題に入るぞ』

「話が早くて助かるわ」


 息を飲む。ついに願った情報が手に入るかもしれない。

 今私は高揚する気分を抑えるので精いっぱいだった。それほど、興奮しかけている。


『率直に言えば、駄目だった』

「……は?」


 一瞬本気でキレそうになる。ふざけているのか、この馬鹿は。


『ちゃんと話を聞け。駄目、というより無理、のほうが近い』

「……どういうことよ」

『その衣渉ってやつの指紋以外のバイオメトリクスを奴の出ている動画から採取して、とりあえず全世界の映像・通信記録と照合してみた。かなりの数の照合結果が出たが、ついさっきその結果がはじき出された』

「それがどう『無理』っていう結論と繋がるのかしら」

『奴の最後の照合記録――――行方不明になった時期とピッタリ。ドンピシャだよ糞が。情報なんて一切残さず消えやがった』

「な……」

『そりゃあ、お前が何年調べても特定できないわけだ。なんせ、最初から何もないもんな。無い物は出てくるわけがない……ハッ、全く、糞みてぇな結果だ畜生が』


 嘘だと信じたかった。

 これまでの時間が、すべて無駄だった。そんな事実を突きつけられたのだ。

 精神が一瞬瓦解しそうになる――――が、結城に一言でそれはどうにか食い止められた。


『安心しろ。まだ吊り橋の縄が切れたわけじゃない。当てはある』

「……本当、に?」

『らしくないな。声が震えているぞ。……それに、人間だれしも完璧に痕跡を残さず消えられるわけがない。それも大企業の社長なら尚更だ。確実に尻尾の跡は残していってる』

「……そう」


 つい先日まで氷塊の票に冷たかった雪の声は、今だけは極寒の地で唯一燃えている焚き火の温かみのように感じた。小さくも確かな希望。それがあれば、私は何度だって立ち上がれる。

 たとえ壊れようとも、無理やり直して立ち上がる。そう心に誓っているんのだ。私の覚悟は半端なものではない。絶対に。


『かなり有力な情報屋を知っている。居場所はかなり不味い場所だが……まぁ、そこはこっちで何とかする。お前はとりあえず、飯でも食って待ってろ』

「私がそう悠長なことしていると思う? 私もつれていきなさい』

『断固断る。バレたらテメーの社会的地位はダダ堕ちだ。今回だけは本心からやめとけ。下手したら死ぬぞ』

「……どこよ、そこ」


 少なくともそんな所、自分の記憶が確かならばこんな場所の近くにある筈ない。東京で来訪したら下手したら死ぬところなど、有る筈ない。そう断言はできないが、少なくとも木の消えkんがある場所なんてないはずだ。

 しかし結城は呆れ気味に、こう言い放った。

 東京裏世界の中でも最高の機密を。



『東京地下街最深部・VIP専用特別建設無法地帯。別名、裏世界繁華街――――最高レベルの闇が溜まっているロクデナシどもの集まり場で、大金有り余しているギャンブラーと兵器密輸系の日本マフィア共の聖地だよ。俺の荒稼ぎ場でもある糞溜めだ』



――――――



「――――はぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!?」

「声がデカい」


 現在街道を歩く途中、草薙綾斗が唐突に驚嘆の声を上げる。

 その声で周囲の人々の視線が一瞬でこちらに集まり、俺は無意識に草薙を睨んだ。


「す、すまん……ていうか、本気か? 裏世界繁華街に行くなんて。つかアレ実在したのかよ。都市伝説の類だと思ったぞ俺は」

「まぁ、どちらかというと都市伝説をどこかのもの好きが現実にしたっていう類だ。アホみたいな金をかけた結果、そこでデカい金が一気に動くようになって作った奴は大儲け。ただしそいつは建設から数年後に死去したがな。今では立派な無法地帯と成り果ててるよ」

「……お前、ちなみにそれをどうやって知ったんだ?」

「なぁに、ちょっとだけ金を積んだら金持ちどもがベラベラ喋ってくれてさ。そこでちょっと小遣い稼いで生活資金の足しにしてたんだよ」

「未成年でギャンブルってお前……俺でもまだやったことねぇのに」

「まだ、だろ。これからやることになるから覚悟しとけ」


 予め予約をしておいた洋服店に入る。直ぐに店員が駆けつけてきて俺たちを追い返そうとする。

 当り前だ。ここは東京でも最高級のオーダーメイド洋服店『リ・リファイン』。少なくとも俺たちの様な泥臭い餓鬼どもが来るような場所ではない。

 それも俺がポケットから出した予約券一枚で防がれるが。

 店員からの謝罪を受けながら店の奥へと入る。周りには高そうなスーツやドレスがずらりと並んでいる。値段は普通の社会人が見たら卒倒しそうになる額ばかり。草薙も同様で頭を押さえて顔を青ざめていた。


「な、なんでこんなところに」

「近々行く予定だったんでな、ここでスーツ作らせてた。お前も適当なもの見繕っておけ」

「いや俺、こんなもん買う余裕なんて無いぞ」

「俺が払いから、好きなもん選べ。どうせ使い捨てだしな」

「は?」


 頭の上に疑問符を浮かべる草薙を無視して一人で店の奥へと入る。

 予約券を職員に渡すと、職員は店の裏へと行き目的の物を持って帰ってくる。そこにあったのはオーダーメイドのレディーススーツと、特注の銀色アタッシュケース。

 代金はもうすでに前払いしてある。それらを無言で受け取って試着室に入って、着替えた。

 手慣れた動作でスーツを着て、服の端を整えて髪をかき上げ、ヘアスプレーを軽くかけ固定。香水も体に眩し、特製のカラーコンタクトと絆創膏型変声機を喉のあたりに付ければ――――そこには原型とはややかけ離れた青少年が出来上がっていた。

 最後に軽くネクタイを整え、更衣室のカーテンを開く。


「うおっスゲーっ! これ着心地スゲェいい! 始めて着たぞこんなの!」

「ええ。私達の作る洋服はいつでも天然素材だけで作られていますので。機能性もバッチリです。よかったら微調整をしますか?そうすればもっと――――」

「その話はまた今度だ。行くぞ草薙」

「え? お前誰――――どわっ!?」


 こんな服を着ただけで馬鹿みたいに燥ぐ草薙の首根っことを掴んで引きずる。レジのスキャナーに店員のカード、その後に値札のバーコードとスマートフォンを当てて支払いを適当に済ませ、店を出た。

 先程からもがいている草薙がウザったい。なんだ先程から。


「だぁぁっ! 放せっつってんだろ自分で歩けるわ! つかお前誰だよ!?」

「……俺だよ」


 変声機を外して本来の声に戻すと、草薙の顔が如何にも変なものを見た様な顔になる。

 舌打ちして変声機を張り直す。


「お前結城か? なんだその恰好は」

「ただの変装だよ。裏の世界に行くのにお前は身分を特定されたいのか?」

「あ」

「あじゃねぇよ。ほら、これとこれ付けとけ」


 俺の同じ型の変声機とラップアラウンド型の黒いサングラスを渡す。

 それらを草薙かつけた直後、懐からスプレーを取り出して徐に草薙の髪に掛けた。


「うわっ!?」


 直ぐに避けるが、もう遅い。これは一秒でも当たれば髪全体を変色させる特製のスプレーだ。

 ちなみに藍色に変色させるタイプで、予想通り草薙の髪は金から藍に変わっていた。


「な、なにすんだ! 折角染めた髪を……」

「それ、温水で洗えばすぐに取れるから気にするな」


 さすがに取れないように作ってはいない。

 自分にも金色のスプレーをかけて髪を変色させ、再び歩を進めた。

 目指すのは都心に立つ、一番高く目立っているビルディング。『天樹・世界貿易管理センター』。

 日本の貿易管理の中核部分であり、腹を肥やす金持ち共の集まり場でもある。それだけあそこで巨額の金が動いているという事だろうが――――本命はやはり地下だろう。

 あの平気で数千万という大金が何百回も動き続ける人間の欲望の塊のような場所に向かわねばならないと意識するとため息しか出てこない。しかし今回はそれを抑えてでも行く価値はある。

 衣渉我堂には個人的な恨みもあるからな。

 あの柊紗雪という女をスケープゴートにできるなら、今回はする価値大ありといったところだろう。

 数十分歩いて、ビルディングに着く。警備に会員カードを見せてスマートフォンを認証機械に当てて自動ドアを開き、その奥にあるボディーチェッカーに体を検査され奥へととおされる。後ろから何やら草薙がギャアギャアとわめいているが気にはしない。ただし警備員に一回だけ視線は送ったが。

 なんだかんだで俺たち二人は奥へと通され、広大な一階部分に足を付ける。


「……今更だがそのアタッシュケース、何入ってんだ?」

「交渉材料だ。ただの、な」

「アタッシュケースに交渉材料……金か?」

「あまりいい回答とは言えないが、無理に言えば大体あってる――――いいから早くついてこい」


 スニーカーの調子を整えると、すぐに足を動かす。

 受付の前まで来ると、受付嬢が営業スマイルで「どんな御用でしょうか」と聞いてきたので、無表情で「金髪ローリングガールは超キュート」と抑揚のない声で告げる。周りからしてみれば何言ってんだこいつと思われただろうが、気にしない。

 これが合言葉なのだから。


「……どうぞ」


 笑顔から真顔になった受付嬢に促されるまま受付の奥へと案内される。草薙も当然付いてくる。

 連れてこられたのは業務用エレベータ。かなりの広さで三十人は余裕で入れそうな空間だ。貨物用エレベータと言っても特に違和感はないだろう。

 受付嬢はそこで案内をやめ、俺と草薙はエレベータの中に入る。そして財布から取り出したカードをスキャナーに差し込み、エレベータの電源をオンにする。

 それからすぐに最下層ボタンを押して『閉』ボタンをタップ。ドアが閉まってエレベータが高速で下降を始める。名状しがたい浮遊感が発生し、壁についているバーを掴んで足を地面に固定。

 こうでもしないと軽い無重力状態になってしまうのだ。

 今悲鳴を上げながら浮いている草薙のように。


「うぉぉぉなんじゃごりゃぁぁぁああああああ!!」

「おい気ぃ付けろ。さもないと顔を地面に叩き付けることになる――――」

「うおふげっ!?」


 遅かった。

 エレベータは急停止し、浮遊感は無くなる。同時に宙に浮いていた草薙は地面にキスをすることになった。死にはしないだろうが、かなり痛いだろう。


「……大丈夫か」

「お、おぅ……いてぇ」

「だから言ったろが」


 足先で草薙の顔を小突きながらエレベータを出る。

 ここはB128。一階層が大体高さ五メートルほどなので、単純計算でここは地表から640mほど下に位置する。地熱の影響で温度は少々高め。軽く服の襟を整えながら額から流れる汗をハンカチで拭く。

 足を一歩踏み出せば、そこは黄金郷。全ての物が光り輝き、貴金属で彩られている。そこら辺を歩くものはほぼ全員豪華そうなドレスや礼服を身に着けており、まるで中世ヨーロッパの貴族街に迷い込んだような気分だ。

 どいつもこいつもはらわたに黒い物を溜まらせているとわかると実に不快な気分にもなるが。


「……すげぇ」

「一体これに幾らかけたんだか……。こんなもの造るなら国の借金でも返せばいい物を」


 鼻のあたりに香水をかけながら、草薙の手を引っ張って目的の場所まで足を動かす。

 案の定殆どの者が俺たちに視線を一回は向けている。当然ここは俺たちみたいに未成年が来れる場所ではない。条件さえ満たせばだれでも来れるが、未成年でそんな条件を満たせるのはほとんどいないのだ。

 大方俺たちは周りから見れば金持ちの道楽好きボンボンか何かだと思われているだろう。

 そちらがある意味助かってはいるのだが。

 変に絡まれなくて済む。


(相変わらず……嫌な場所だ)


 見ればちらりと黒服の者が散らばっている。

 此処ら一帯を取り仕切っているマフィアの一員だ。組織名は不明だが、少なくとも日本で横行している麻薬の約六割を取り仕切っているとも言われているし、此処だけでなく他の様々な道楽施設を取り仕切っているとも言われている巨大組織。推測の域を出ないが、その規模は尋常なものではないだろう。日本だけでなく世界の闇の一端だ。アレは敵に回してはいけない。

 視線を元に戻しながら、道端に置いてあるATM置き場に入る。素早く通帳を入れてパスワードを入力。適当に米ドル・・・を引き出す。大体五百万ドルほどで十分か。

 四百万ほどを内ポケットに入れ、ATM置き場を出てそこりの百万ドルを草薙に放り渡す。


「え。ちょ、これ」

「カジノに行くんだ。金ぐらい持って置かなきゃならんだろうさ」

「いやだってこれ、一億円……」

「端金だ。自由に使え」

「器広いなお前……」


 金などどうでもいい。株を少し動かせば幾らでも入ってくる。こんな紙束に価値を見出す奴は実に不可解な思考をしている。これはあくまで価値有る物の代替だというのに、これ自体は何の価値もない紙切れだと言うのに。せめて貴金属類に価値を見出せと言うものだ。

 しかし今は価値はある。交換材料として相手が欲しているなら大ありだ。

 しばらく歩くと大手カジノに着く。殆どの装飾に鍍金が施されており、実に目がちかちかする。悪趣味にもほどがあると思いながらドアを開けると、中は金持ち共が笑いながらゲームをしていた。その熱気はすさまじく、汗がまた一段と滲み出てくる。


「適当に遊んでろ。すぐに戻る」

「あ、おい!」


 後ろの草薙に手を振り、カジノの最奥地に入る。

 道中黒い服の職員に止められかけたが、『招待状』を差し出してクリア。ここはさすがに草薙を連れてくるわけにはいかない。

 特別VIPエリア。本当に限られた者にしか入れない、シークレットエリア。

 とはいうものの道楽目的で作られたものではなく、ただの密会場所として設立された特別区画なのであるが。

 しかしそれ故に、聞かれても不味いことを遺憾なく喋れる。

 盗聴器、監視カメラなどは絶対に無い場所。

 今回の交渉では最適な場所だ。

 黒色一色で塗りつぶされた廊下を数分歩くと、茶色い木製の扉が見える。その扉のドアノブに手をかけて回す。すると隙間から白い光が洩れ、開き切るとそこには真っ白な一室が見える。真ん中には大理石のテーブルとアンティーク調の木製椅子が二つ。

 その椅子の一つには、もう先客が座っていた。

 黒ずくめで目深に猫耳付きフードをかぶっている人物。

 俺が現在一番信用している情報屋集団――――【幻影の黒猫団ファントム・ザ・ブラックキャッツ】。

 の、一端の手先だ。この小柄の少女・・は。

 ちなみに、俺と一番多く交渉している個人用バイパスでもある。



「――――さぁ、交渉を始めようか。【空白の絶望ブランク・オブ・ディスペア】」

「こっちの台詞だ【幻影の代理人ファントム・アジェント】が。さっさと情報を喋ってもらうぞ」



――――――



「いったい何だってんだよ……」


 友人が突然裏世界に行ったと思たらカジノに連れてこられた挙句置いてけぼりにされた。

 今俺の現状を言い表すなら全てがこれに集約されているだろう。

 何をすればいいのかわからず、無意識に頭を掻きながら適当に辺りを見渡す。

 普通に、カジノだ。様々なゲームテーブルでゲームが行われており、多額のチップが行き来している。想像通りの典型的な高級カジノ。人生で一度は来てみたいと思っていたところだ。

 こんな形で来れるとは思ってもいなかったが。


「どうぞ」

「え? あ、はい」


 隣にバニーガールの金髪女性が現れ、こちらにカクテルグラスを差し渡してくる。

 遠慮するのも気が引けてつい受け取ってしまうが、中身が何なのかわからない。


「ただのジュースよ。普通の果汁ジュース」

「ど、どうも」


 カクテルグラスに入っている液体をなめてみると、普通の桃ジュースだった。ちょうど喉も乾いていたので、一気に喉に流し込む。

 飲み終えたグラスを返却すると、女性は微笑みながら俺に助言を投げかけてくれた。


「別にここはそう危険な場所でもないわよ。ただの遊び場。お金があるなら、遊んでみてはいかが?」

「……そうですね」


 どうせあいつが来るまでやることは何一つない。

 今やれることと言ったら文字通りギャンブルでもして暇をつぶすことぐらいだ。お言葉に甘えて少しぐらいは遊ぶか。

 そう思い適当な金をチップに交換するため受付に行こうとするが、視界の恥でチラッと何かが映る。

 黒服を身に包んだ者が、こちらを見ていた。

 しかも複数の一から。こちらに杭を向けてはいないが、その黒いサングラスの奥にある目はしっかりとこちらに視線を向けている。目を合わせないようにしながら、極力気にしないようにする。

 かなり不味い状況に巻き込まれたかもしれない。



――――――



 大理石、石灰岩の結晶を加工して作られたテーブルを遊部で叩きながら相対するフードをかぶる少女の隠れていても確かに鋭く輝いている翡翠色の目を見つめる。何度も見ているとはいえ、何かと人を畏怖させるような視線。全く持って少女とは思えないその気迫は、感嘆するにふさわしいだろう。

 だが今はそんなことする暇などない。さっさと情報を引き出してここを立ち去らねば、不味い。

 此処に来るまで約五十七人ほどこちらに違和感のある視線を送ってきた人物がいた。そいつらは一般人にも見えたしカジノの職員にも紛れ、しまいにはマフィア姿にもなっていた。しかし全員がいずれも共通の雰囲気と眼光を持っていたことから、同じ目的を持っていたことがわかった。

 俺を、監視している。

 原因はわからない。心当たりはあるにはあるが、足の着くような真似はしていない。

 まさか、な。


「さて、急に呼び出しておいていったいどんな情報をお求めで?」

「確かに予定を二週間ほど短縮したのは謝る。あまり情報の値上げはしないでほしい」

「別に怒ってはいないよ。こちらとしては資金さえもらえればそれで十分だし、価値に見合わない情報はそれなりの価額で売るつもりだよ。お得意様を逃がしたくもないしね。……それと、僕は『どんな情報を求めている?』と聞いたんだけど、答えになっていないよ」

「お前はお喋りが長い」


 少しだけ値切りのための下準備をしようとしたが、アッサリ切り捨てられた。

 さすが、そう簡単には安く売るつもりは無いらしい。できれば今後のため資金の消費はできるだけ最小限にしたいのだが。


「衣渉我堂の居場所を探っている。何かそれに関する情報は無いか」

「……衣渉? あの数年前行方不明になった? どうしてまた」

答えになっていないぞ・・・・・・・・・・?」


 先程言われた台詞を返してやると、少女はクスッと笑う。一々癪に障る女だ。


「まぁ、いいでしょ? 折角久しぶりに会ったんだしさ、世間話でもしない?」

「時間がないんだ。さっさと教えろ」

「そう。じゃあ交渉代に僕との世間話を入れるよ。これなら、どう?」

「……チッ」


 無駄に頭の回る奴だと舌打ちをする。こちらの都合もお構いなしか。


「いやぁ、最近背、伸びたんじゃない? 見ないうちにすっかり男らしくなっちゃって」

「そういうお前は、全然変わっていないな。老化遅速化のナノマシンでも投与しているのか」

「まさか。アレは僕たちのような市民が手に入れられるほど安い物じゃないよ。僕は単に遺伝子異常の影響さ。ま、ある意味女として結構嬉しい物だけどね」

「……理解しがたい」

「男に理解はできないのかもねー。それでさ――――」

「――――いい加減にしろよ」


 内ポケットからグロック91αを取り出し、正面に向ける。

 2071年にグロック社が作り出した拳銃の最新モデルにして民間用拳銃。過去作に比べはるかに反動を逃がしやすく設計され、まるで小口径の銃でも撃っているような感覚で四十五口径弾を連射できるというストッピングパワーが高く火力は申し分ない拳銃だ。しかし装填されているのは非殺傷のゴム弾。死にはしないが、四十五口径でしっかりと火薬も使われているので当たればただでは済まない。


「やれやれ、物騒だなぁ君は。仕方ない」


 両手を上げて少女は笑う。まるで楽しんでいる。一発ほど打ってやりたくなったが、交渉が円滑に進まなくなるので自制する。

 拳銃を内ポケットにしまい、一度落ち着いてから交渉を再開させる。


「それで、情報の価額は」

「これぐらい、かな」


 少女は指を三本立てた。

 これは三十万、などという安い物ではない。

 三億・・、だ。

 別に出しても問題は無いが、ここは一度値切りをするべきだろう。


「一億にしろ」

「ダメダメ。こっちも生活が懸かっているんだから」

「ハッ、一億もあれば一年は遊んで暮らせるだろうが。なんだ、ボランティア活動で募金でもするってか?」

「まぁ、大体あってるよ。だからせめて三億はほしいねぇ」

「こっちも金は無限に出てくるわけじゃないんだ。一億五千」

「うーん。じゃあ今回の交渉はやめようかな」

「二億」

「はい。やーめ」

「二億五千」

「二億八千」

「七千」

「……まったく、しょうがないな」


 懐から二百万ドルの札束と万ドル札七十枚取り出してテーブルに置く。

 少女はそれをかっさらい、枚数確認をすると、「交渉成立」と小さく呟いて嬉しそうに笑った。これほどの大金を欲しがるとは、いったい彼女の組織はどうなっているのやら。


「よし、代金をもらったからには確実な情報を提供するよ」

「頼む」

「うんうん。態度が良くてよろしい♪ ――――さて、本題に入るよ。時間がないって言ってたしね」


 スイッチを切り替えたのか、口元が真剣な表情へと変わる。できればそれを二、三分ほど前からしてほしかった。


「まず衣渉我堂が失踪を遂げた時期と彼に関する情報が途絶えた時期が同じなのは知っているよね。こうやって僕を頼っているってことは」

「ああ。そこまでは自力で探れた。だかそこからは無理だった。冗談抜きで情報が一切出てこなかったしな。本当に海にでも沈んでんじゃないかと疑ったが――――」

「当然違う。大企業の社長が突然死亡か失踪したなら少なからずその界隈に影響を及ぼすはず。でも――――」

「現在その大企業『羽衣如月はごろもきさらぎ』は今もなお問題無し。いつも通りの営業を続けている。そう、社長が失踪した時期も一切ぶれなかった。リーダーを失えば最低でも一時的に混乱はするはず。そこから導き出される結論は――――」

「表面上は失踪。でも裏では生きているどころか何か事情があって行方を暗ましている。おそらく何か重要な密会か取引だろうね。それこそバレたら自分どころか会社員全員の首がすっ飛ぶような」


 さすがの情報収集力。俺とほぼ同じ結論に至っている。そこだけは評価する。

 本題は次からだ。居場所が無理でも、尻尾程度は今掴んでおきたい。でないと、こちらの首が物理的に飛んでしまう。そのリスクを避けるためならば、金程度はいくらでも積める。


「確かに、公共的には衣渉我堂の情報は一切出てきていないんだ。……公共的には、ね」

「つまりなんだ。そいつのいる場所は、それはもう完全な情報統制が行われているか、情報的閉鎖空間――――クローズドネットワークしか張られていない場所にいる、と?」


 クローズドネットワーク。オープンネットワーク、つまり俺たちの様な民間人が普段り擁しているようなネットではなく、その特定範囲内の空間で敷かれている、外部から完全に切り離された独自的なネットワーク空間。確かにそれを使えば情報統制など人一人の手でも可能だし、比較的どころか情報が絶対に外に漏れない。ただしあちらから干渉できないように、恋らからも干渉が一切できないと言うデメリットが潜んでいる。

 それが事実なら、衣渉我堂は情報が一切来ない場所で数年も滞在していることになるが、それはあり得ない。幾ら情報おもらしていないとはいえど、個人で暮らすなら食糧調達は最低限必要不可欠だ。まさか家庭菜園でも作ってのうのうと暮らしているっていうのか。


「答えは両方。完全な情報統制が行われかつ情報的に外部から一切断たれている場所。わからない?」

「……いや、まさか」

「そう。……各国の機密軍事拠点。その中でも国家機密レベルの物を腹に仕込んでいる場所。しかもバレたら不味い物、日本では所有自体が厳しく禁止されている兵器関連に最も関わっている国」

「嘘だろオイ……アメリカ合衆国かイスラエルが関わっていると?」

「残念ながら違うね。あれだけの大国、日本と協力しようがしまいが関係ない。イスラエルも全く接点がないし、日本と取引するぐらいならそれこそアメリカと協力するだろうしね。どちらにしてもリスクに比べてメリットがあまりにも小さすぎるから、その線は無いよ。なら残った線はただ一つ」

「現在軍事力を少しでも欲しがっている大国――――新設ソビエト連邦構成共和国か……!」


 酷い冗談だと頭を抱える。

 まさか、こんなスケールがデカい話になるなど思わなかった。国家レベルの問題に今俺たちは首を突っ込もうとしているのか? 冗談じゃない。


「あくまで可能性の一つに過ぎないよ。もしかしたら別の国かも知れないし、本当にただの失踪かも知れない」

「お前らが確証のない情報を売るとはとても思えないな」

「……今回の問題、僕個人から言わせてもらうと、もう首を突っ込まない方がいい。事実、僕たちも今、かなり困った状況になっている」

「何だと?」

「仲間がここ一か月、二十人ほど殺害された。ほとんどが衣渉我堂に関しての情報を集めていた新参だった。僕もその一人だけど……知ってはいけないことを知ってしまったか、それとも始まったか」

「……何が、始まった?」


 体からひどく汗が流れ出てくる。

 最悪だ。今回だけは、本当に自身の不幸が最悪レベルにまで働いてくれた。

 もう、遅かった。



「――――狩り、だよ」



 後ろの扉が蹴破られる。

 反射的にテーブルに身を乗り出して向こう側に避難しながら、テーブルのふちに手を引っ掛けてひっくり返し盾にする。直後火薬の破裂音が何百回も響き、銃弾の着弾音がテーブルの向こう側から何回も耳に届いてくる。

 本当に最悪の状況へと傾いてきた。

 懐に仕込んだ拳銃のマガジンを実弾に交換し、端から手だけを出して発砲しようとするが近くで銃弾が着弾したことで素早く手をひっこめる。


「クソッ、気づかれてたか!」

「ありゃ、こりゃ不味いな。君もしかしてもう標的にされてしまったみたいだね」

「嘘だろまだ衣渉我堂のこと調べて一日経っていないぞ!?」

「へぇ! じゃあ無差別狩りが始まったってことだね。情報提供ありがとう」

「こんな時に言ってる場合か!?」


 フードの奥にある口を嬉しそうににやけさせながら、少女はポケットからある物を取り出した。

 筒型で端っこにピンとレバーが付いている物体。

 俗に、閃光音響手榴弾フラッシュバンとも言う危険物体を。


「おま――――ッ!?」

「はい、耳と目ふさいで――――!」


 咄嗟に目と耳を抑える。

 直後かなりの衝撃と音、光が発生。もしあと数秒遅かったら目と耳が使い物にならなくなっていただろう。だが微かに男らしき日笑みが数度にわたって聞こえた。

 チャンス。と思ったときにはすでに足が動き、グロックを構えてテーブルから身を出して発砲。向こうにいた男三人の手足を二本ずつ正確に撃ちぬく。大動脈に掠っているかもしれないが、すぐに死にはしないだろう程度に抑えておく。

 殺したら、後片付けが面倒になる。


「流石、凄いね。どこで扱い方習ったの?」

「ハワイでな。そんな事よりお前、これからどうするんだ。とんずらか?」

「そうするしかないけど、僕が帰ったら確実に仲間に迷惑をかけることになるしねぇ……しばらくは君と一緒に行動した方が良さそうだ。勿論礼は弾むよ? 生きてたらね」

「糞が面倒なお荷物抱えることになっちまうとは……――――――――!? ヤバッ、草薙の野郎ッ!!」


 大事なことを忘れていた。

 俺と一緒に来た草薙も狙われているかもしれない。いや、狙われている。少女の言う通り、無差別狩りが味待ったと言うならあいつが標的から外れる理由がない。

 気づいて即座に走り出した。

 弾丸を消費しているマガジンをすて道中で交換。ついでにアタッシュケースを拾い、黒い廊下をかける。そしてついに向こう側に到達すると――――地獄絵図が広がっていた。

 そこら中に散乱した死体。白い制服の職員と黒いスーツを着た男たちの銃撃戦。湧き上がる悲鳴。

 どれもこれもが今までの常識とはかけ離れている。


「草薙! おいどこだ! 返事しろッ!」

「こ、こっちだ……ッ!」

「!」


 隣の花瓶の陰に、草薙は隠れていた。

 体の所々に傷はある者の、確かに生きていた。その事実にひとまずは安心する。

 こいつに今死なれると非常に困る。こいつのスキルは後で必ず生かせる場所が来るのだ。こんな所で死なれたらこちらが困る。

 それ以外の理由もあるのかもしれないが、今はあまり深くは考えないようにする。

 とにかく情報が得られた時点でもうここには用は無い。すぐにでも逃げたい――――が、黒服の連中がこちらに気付く。そして銃口を向けるが、こちらの方が早かった。

 アタッシュケースの取っ手についているトリガーを素早く引くと、カシュッと音がしてケースの片方に小さな穴ができる。そこから現れたのは――――三つの銃口。

 予めアタッシュケースにMP9を改造したものを三つ内臓した短機関銃だ。勿論改造しているのでこの三つ全てが分間二四〇〇発という驚異の連射力により射線上の物をズタズタにする。ケースの隙間の問題上、弾丸の携行量がどうしても少なくなってしまうので三十秒も撃ち続けられないのだが。

 アタッシュケースの取っ手に付けられた二つ目のトリガーを弾くと、弾丸の嵐が放たれた。装填された9×19mmパラベラム弾がミニガンの如く射線上の物体を残らず粉みじんにする。黒服の男の片腕を消滅させ、その奥にいた男の片足もまたミンチへと変えた。

 隙ができたことで、草薙と少女の手を同時に引きカジノを出ていく。

 これで危険は去った――――わけもなく、外に待機していた黒服たちがこちらに一斉に銃を向ける。こちらも応戦し、アタッシュケースのボタンを押してケースの外装甲を展開。防弾性装甲をシールドのようにしながら後退しながら威嚇射撃を続け、追っ手をどうにか退けようとする。相手は大口径の弾丸も使っているのかいくつかの弾丸がケースを貫通してくるが、その奥には防弾ケブラー繊維による第二の装甲が待っているので問題は無い。だが、明らかに相手の装備がこちらを殺しに来ている。死んでも問題無し――――いや、最初から殺しに来ているのか。


「近くのエレベータに走れ! 早く!」

「わ、わかった!」

「こっち!」


 そこで仕込み銃が弾切れを起こす。

 装甲をボタン一つで畳みながら即座に道を駆け、予め二人の乗っている近くのエレベータに身を飛び込ませる。すぐにドアが閉じようとするが黒服たちが追いつき、閉じるドアを広げようとする。

 そこで少女が今度は殺傷用の球状破砕手榴弾を投擲。黒服たちは一瞬硬直し、慌てるも手榴弾は不発。

 様子から察するに、模擬弾、偽物フェイクだ。そもそもこんな至近距離で実物など使えばこちらにも被害が飛んでくる。

 まんまと引っかかった黒服たちを馬鹿にするように、少女は舌を出して笑う。

 そこで、エレベータは閉じた。


「…………はぁぁぁぁぁ」


 この非日常的な脱出劇が終わったことで、一気に肺に溜まっていた息が吐き出される。

 今日は酷い厄日だ、と小さく呟きながら。


「おい結城。不味いんじゃねーかこれ」

「見りゃわかるだろ。とんでもない事態に巻き込まれたよ畜生……」

「いやそうじゃなくて……俺たちが襲われたんなら、紗雪の奴にも――――」

「――――しまっ!!!!」


 直ぐにスマートフォンを取り出し、通話ボタンをタップする。

 非常に長く感じる数回のコール音の後、接続音が小さく鳴った。

 喉の変声機を剥がして絶叫する。


『……何、結城。私今買い物から帰宅中――――』

「柊ッ!! 今すぐ逃げろぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」

『え……? ――――っな』


 プツッ。


 通話が切れた音が、まるで死神の鎌で首を断たれたような音に聞こえた。

 その後はただ、空しくなるような電信音が、エレベータ内で何回も響き渡っていた。

 



次回投稿は送れます。テスト期間なもので、流石にテストに集中しないとヤバいです。

予定は二週間後となります。

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