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第三十四話・『Diabolus manifestatio』

「全く、リースったらどこ行っちゃったのさ~」

「あ、あはは……」

「……むー」


 こういう時ってどういう顔をすればいいんだろうと私、柊紗雪は苦笑いを浮かべながらお茶を啜る。

 急に客人が来たかと思いきや昼間パーティを組んだリーシャルとアウローラというなにがしが突撃してきて「リースは何処!?」と問い詰められて三十分。

 どうにか闘牛をなだめる様に落ち着かせながらこうして茶を出して事情を聴いているのだが、相手の機嫌がなにせ悪いもので中々話が進まない。

 せめて本人が居てくれれば少しは楽になったのだが、残念がら行方は知れず。

 帰ってきたら何をしてあげようかなと悩みながら宿を強襲してきた二人をちらっと見る。

 リーシャは腕を組み頬を膨らませてこれでもかとご立腹の様子だったが、アウローラの方はそうでもなく静かに唸りながら茶を飲んでいた。どっちが子供なのか。


「おう、頼んだ茶菓子作ってきたぞ」

「ありがとう。こういう時は無駄に頼りになるわね」


 水羊羹に大福、カステラにかりんとう――――それらの和菓子が全員の前に差し出される。

 普通ならこの世界であるはずの無いもの。異文化そのものの塊ともいえる和菓子を差し出されて、ご立腹中であったリーシャは目を丸くする。アウローラはまだ知識がまちまちなので「なにこれ?」といった風に見ていた。


「砂糖とか小麦粉とか普通に売っていたからな。手に入れられる材料は全部手に入れてどうにか再現してみた。やるだろ?」

「以外にすごい……どこで習ったのよ、こんなの」

「一人暮らしだし市販の物じゃ満足できなかったから納得できるまでカスタマイズしていった結果……まぁ、いつの間にか職人並の腕になっていたわけで」

「貴方変なところに才能使うわね……」


 見た目のチャラさに反して手先がとても器用らしいという事にギャップを感じて、ついつい呆れ顔になってしまう。人は見た目で判断するなということか。


「えっと、なに、これ」

「お菓子よ。私たちの故郷の」

「へー、北にはこういうのもあるんだ」

「き……――――ん!?」


 疑問詞を出そうとした綾斗の口を素早く抑えた。

 そして耳に口を近づけて二人にしか聞こえないような音量で囁く。


(たぶん結城が作った設定よ。疑われないように付き合ってあげなさい)

(え~? 俺北っつっても札幌ぐらいしか行ったことないんだが……)

(私なんて行ったこともないわよ。どうにか凌ぎなさい)


 確かに人気ひとけが少ないイメージの北地方なら出生を怪しまれたりする可能性は低いだろう。しかし咄嗟に出したと言えど事前に行ってもらわなければさすがに困るという物だ。


「何してるの?」

「「な、何でもない」」


 どうにかごまかして菓子を試食。

 ふむ、少々味が違うものの、味が濃すぎず薄すぎず。水羊羹はほどよい柔らかさで水っぽ過ぎず、大福は外側もっちり中身はカスタードと何かのフルーツが甘さと水水しさを引き出し、カステラはふんわりしていて焦げた砂糖がほどよい風味を醸し出して、かりんとうはポッきりと簡単に折れるが凝る凝りとベストな硬さを維持していて更に黒砂糖と蜜の比率が黄金率を極めて――――


「……って、米とか黒砂糖とか本当にどこで手に入れたのよ!」

「え? いや普通に市場で売っていたぞ? よくわからないが」

「い、異世界なのに米……ファンタジー要素は何処を目指しているのかしら……」

「まぁそこも含めてファンタジーなんじゃねーの?」


 結構重大なことをさらっと流す綾斗。こういう自由さは伸ばすべきか注意するべきか。

 まぁ、おいしいけど。


「それで、リースはどこですか!?」

「知らないわよ」

「嘘おっしゃい!」

「いや、そう言われても……」


 知らないものは知らないとしか言えない。

 証明できる事実や証人がないと人という物はどうしても疑う。それが間違っているとは言わないがどうも人間という生物は不器用だとつくづく呆れる。


「ギルドの門前で別れてそれっきりよ。私たちは依頼掲示板の確認をしに行ったから、そこまでの事しか知らないわ」

「俺も同じく」

「じゃ、じゃあ心当たりは!?」

「私たち、大体一週間前にここに来たばかりなのよ。ここ大きすぎて、どこに何があるのかもあまり把握していないわけ。心当たりと言えば……」


 無いと言えば嘘になる。

 別れる前の様子。何かをごまかしているような顔を見れば、彼がどこに向かったのかなんて明らかだ。

 しかしそれを明かすわけにはいかない。

 見るにリーシャやアウローラという人物は、かなりいい具合で結城と信頼関係を築いている。

 予想通りならばどこに向かったのか聞いた瞬間に飛び出すだろう。

 だからこそ、言うわけにはいかない。

 死ぬ確率がある場所へと送り、もし死なれでもしたら、最悪の結果をこの手で導き出すことになってしまう。それだけは何としても、全身全霊をかけて避けねばならなかった。


「やっぱりないわね」

「そんなぁ~」

「無いものを探ってもしょうがないわよ。とにかく今日はもう宿に帰って休みなさい」

「嫌、です」

「え?」


 ずっとだんまりだった少女、アウローラが唐突に口を開いて拒否の心をぶつけてきた。

 かなり意外な反応で少しだけ思考が止まってしまう。


「あの人は、私のお兄ちゃん、です。……無事が確認できないなら、帰りません」

「お兄ちゃん、って………うぇっ」


 そのあまりの気色悪さに血流が逆行したような気分になり、激しい頭痛が発症して頭を押さえる。

 まさかあまりの寂しさに囚われて妹の代わりになるものを作り上げたのか。自分から「お兄ちゃんと呼べ」と強制したのか。想像できないができそうなのが怖くて吐き気がこみ上げてくる。


「え、だ、大丈夫、ですか?」

「だ、だだだ大丈夫。たぶん誤解ね。うん、誤解。……それじゃあ私は少し用事があるから、出かけてくるわ。リベルテ、世話してあげなさい」

「え? 俺?」

「ちなみに手を出したら……いえ、無理ね」

「はぁ?」


 リーシャの実力からみると確実に返り討ちに会うこと間違いなしだ。アウローラにしてもリーシャが見逃すわけもないので以下同文。

 なら別に放っておいても大丈夫だろうと、壁に立てかけておいたコートを着て外へと出る。

 それからアイテム欄から静かに弓を取り出し、馬の貸し出し所へと走り出した。


「さて、間に合うかどうか……」


 結城と別れてまだ三十分程しか経っていない。

 今ならまだ間に合うはず。



――――――



結晶(Crystal)せよ( case)賢者の(Philosophi)造りし(lapide ae)石へ(dificab)と。(itis.)顕現(Existen)せよ(s a casu)賢者(Lapidis Ph)の石(ilosophici)!」

「ハハハッ!!」


 後方にサマーソルトターンしながら高速詠唱。間一髪で即死の槌の一撃を避けながらまずは『賢者の石ラピス・フィルゾフォルム』を生成し遠距離からの攻撃を開始。

 単独でハイレベルの相手をするにはまずサポートを用意しなければならない。力も技術もあちらの方が優っているのだからごり押しはほぼ不可能と観ていい。

 まともに敵うと思うな。逃げる方法だけを考えろ。倒せるなどという雑念は捨てろ。


「配置開始。陣形名『カゴメカゴメ』」


 生成された四つの石が飛翔し、守護者ガーディアン――――ルヴィを囲むように配置される。

 遠過ぎず近過ぎず、最適な等間隔で配置され、レーザーが発射される。しかしレーザーを受けてもルヴィは堪えているような様子も見せず、まるで自分の周囲を飛び回っているうっとおしい蠅を見るような目で賢者の石らを見ている。


「もー、小細工とか通用しないのわかってるくせにごふっ……ちょ、口に入ったじゃないか」

「レーザー口に入れてそのリアクションかよ……」


 マジモンのレーザーではないにしろ、二、三ミリ鉄板程度なら紙のように斬れるほどの威力を持つレーザーだ。そんなもの受けたら普通大惨事間違い無しなのだが、さすが守護者ガーディアンと言ったところか。しかも余裕の笑みまで浮かべてやがる。クソ、ふざけやがって。

 少しだけ衝動的になり、魔導銃エーテルブラスターを構える。魔力を込めて変形させ、強力な一撃を放とうとするが――――


「全然駄目だよ。タイミングを見計らないと」


 次の瞬間には目の前に現れたルヴィの槌により、魔導銃エーテルブラスターは真横に叩きつけられ――――周囲にある賢者の石ごと粉砕された。


「ッ!!?」

「殺し合いで、相手が待ってくれるとでも?」


 そのまま体を回転させてルヴィは遠心力と単純な膂力を組み合わせた一撃を放ってくる。

 当たったら確実に終わる。体の筋肉が直感的にそう感じ、背中を限界まで後ろに仰け反らせてスレスレの回避を行う。髪が風圧で数本位飛ばされたが今はそんなこと気にしている場合ではない。

 背中を元に戻しながら腰からダガーを抜いて迎撃開始。頭部の中央部、額へとその切っ先を向けて体のバネを最大限に利用した突きを入れる。

 相手はそれを避けすらもせず動いたりもせず、真正面から受けた。

 並のモンスターならその場で死亡確定。硬い甲殻を持つモンスターでも甲殻に皹の一つぐらいは作られる。

 だけど、そのどちらも起きなかった。


「へぇ……ずいぶんと弱っちぃ武器をつかってるんだね。お兄さん」

「…………」


 その光景に絶句する。

 刃は一ミリたりとも刺さってはいなかった。傷さえついていなかった。

 逆に、ダガーのほうに皹が入っていた。刀身全体に広がるや否や、パリンとガラスでも割るかのように刀身が半分ほど砕け散る。


「もう少し自分に合う武器を選んだ方が良いよ」

「がっ――――」


 槌によるボディブロー。呆然としていたが直感的に身の危険を感じた俺は腕を交差させて胴体を守ったが、槌はその防御を貫いて肋骨を全て折り、防御に構えた腕の骨も複座骨折どころか粉々にする。

 血を吐く余裕さえ与えられず、槌が降りぬかれた瞬間自分でもよくわからないぐらいの速度で吹き飛ばされ、はるか後方にあったはずの土壁に激突。大きく凹ませながら脊髄がギシギシと今にも折れそうな悲鳴を上げる。


「ご、お、ぉ…………」


 肺が潰されて声が出ない。更に折れた肋骨の骨も数本刺さっており痛みと不快感が同時に襲い掛かってくる。

 もはや俺一人で手に負えるような奴ではなかった。

 最悪中の最悪。軍隊でも勝てなかったこいつに俺一人で立ち向かって勝てるわけもない。せめて、強力な武器があれば。


「ごぶっ、がはっ……! く、っそぉ……っが」

「あれあれ~? お兄さん、もうちょっと耐えてくれると思ったんだけどな」

「な、めんじゃ――――ねぇぇぇぇぇぇえぞおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 空っぽの右手に炎の刀を生成する。今までよりもずっと輝いており、それでいてとても不安定なものを。

 冷静さなど欠片も残っていなかった。

 強さを求めたものに、弱さを突きつけられるとどうなるか。

 それは人間という物が一番よくわかっている。

 まずは、自暴自棄寸前の状態へとなる。


「もっと……もっとだ!! 気張れよ俺の身体ァアァアアアアアアアア!!」


 もう片方の左手にも炎の刀が創り出される。

 今持てる全力を以てこいつを殺す・・。そう自分に誓いを立て、焔刀を振る。

 焔刀の纏った熱気と衝撃波は渦巻いて触れただけでなく掠った物質でさえ溶解させていた。摂氏5000度の二撃。生物の範疇に納まるものなら命など確実にない。

 あれが生物の範疇に収まるのか、という疑問が脳裏を過ぎる。


「イヒッ」


 避けもせず直立不動の状態だったルヴィはまたもや正面から攻撃を受け切った。

 焼き尽くされる空間。炭化どころか溶解へと強制変化させられる世界の中、彼は立っていた。何も言わず。ただ、立ち尽くし、笑っていた。


「やっぱり、実体が無いんだね」

「なんだと……?」

「良いこと教えてあげようか、お兄さん」


 足が触れていた地面はすっかり溶けたのにも拘らず、彼はその場から動かない。浮いている。

 未知の現身の力ならできて不思議はないだろう。問題は、彼の体から何か鉱石のようなものが滲みだしているということだ。体内から金属に侵食、否、金属が生成されている。

 その光景に、俺はただ目を見開くぐらいの事しかできなかった。


「僕の体を構成している物質はエキゾチックマターっていう、物理法則の範疇外にある物質でできていてね。流石に全ての事象を無効化できなくとも、『熱を完全遮断する』とか『衝撃波を完全相殺する』なんて性質を持つ物質を、体内から造りだせるんだよ。僕の体が浮遊しているのも、反重力物質の性質さ」

「…………嘘、だろ」

「じゃあ君はどうやって何もない所からこんな強力無比な劫火を創りだしているんだい? 『現身』とはそういう物だよ。物理法則なんて関与しない、人知を超えた能力。……どうやらお兄さんはまだ使いこなせていないようだね。精々……セカンドステージ半ばかな、到達しても」

「セカンド……ステージ」

「言葉がわからないならいいよ。ちなみに僕はフィフスステージを突破したばかりだ。……駄目だな、やっぱり。百年前の方がもっといい人一杯いたよ。レベル三桁越えぐらいいないと、やっぱり退屈だ。そりゃ、フィフスステージ相手にレベル三桁以下で相手にしろというのが無理な話だけど……僕を相手にするなら最低250ぐらいは行かないと」

「化け物が……ッ!!」


 ただ歯噛みする。

 自分の今のレベルはせいぜい60から65。その四倍以上を要求してくるとは無茶苦茶すぎる。

 もはやこれは、手が付けられない。今のままでは、死ぬ。

 一瞬でも殺そうとした自分が馬鹿だった。こいつは、化け物中の化物だ。


(ルージュ、お前ステージどのぐらいまで行った……!)

 ――――…………。

(答えろ!!)

 ――――サードステージ終盤、フォースステージ入口付近よ。

(くそっ……!)

 ――――いいリース。逃げて、全力で。あればバケモノよ。私の視点からしてもあいつは規格外すぎる……! 私は百年間雑魚を相手に暇つぶしして至った領域、こいつは違う。ヴァルハラから押し寄せてきた人外どもを十年以上相手にして相手が居なくなったそれ以降も日々の研磨を怠らなかった結果辿り着いた境地。私が出ても三分稼ぐのがやっとよ……。

(……体の主導権を、今から全部お前に委ねる)

 ――――は、は!?

(今から命令する。――――全力で、対抗しろ!!!!)

 ――――くっ……過度な期待はしないでよ!


 体が一度大きく揺れる。

 次の瞬間にはもう体の感覚が薄れて行っていた。体の主人格が入れ替わった。

 俺にわかるのはそのぐらいだけだった。

 まずルージュは折れた骨の修復の全ての力を集中し、異様な音を立てる骨は瞬く間に完治する。直後には術にルージュはとにかく相手から攻撃される前に反撃行動を取ろうと、両腕を交差させて高速詠唱を開始。


「『私の理は焔の理。焔は私に付き従い私の体そのものである。故に焔よ、何時は私の要求に、その身を変えてでも従うべし。形成するは剣。犠牲にするは非実体。姿を固め、高ぶれ。身を震わせ、我が敵を殲滅せよ』」


 ルージュは淡々と、しかし焦っているような声で呪文を唱える。

 まるで目の前の敵に畏怖しているように。

 呪文一句一句が終わるその時、ルージュの体から大量の火が吹き出し、それは軟体生物のようにそこら中を蠢き、その先にあるものすべてをとかし焼き尽くす。

 もし普通のものがこれを見ようなら一瞬だけ地獄を見て、直後に網膜が焼き払われるのだろう。


「あれ、お兄さん――――いや、誰、お前」

「答える義理はない――――炎よ、形成せよ……畏怖の炎晶剣フィアーズ・フレイム!!」


 すべてを滅するかのごとくのたうち回る炎は主人の呼びかけに答え、一点、ルージュの左手に集まっていく。炎が圧縮され、本来固体を持たないはずの炎が物理法則を超え、その形を作った。

 形成されるは、一本の両刃の片手剣。凄まじい熱気を放ち、着ている黒装束を肩まで跡形もなく滅却しながら炎をまとって凶悪なほど暴れまわっていた。もし『現身の力』がなかったら一瞬で腕は炭化していただろう。


「……サードステージ。非実態物質の強制固形化。なるほど、なるほど……さっきそれをしなかった理由は、そんなことだったのか」

「ぐ、ぅっ、く……!!」

「でも、制御もまともに出来ていないようだね。久しぶりに使ったのか、それともまだサードステージ道中なのか……それはそのステージを完走しなければ制御もままならない力だというのに」

「だ、まれぇっ……気が、散る!」


 実際、炎を無理やり固形にした水晶のように赤く透明な剣は、今にもその身を崩壊させんという勢いで放出と吸収を繰り返していた。おそらくだが、ルージュはサードステージを極めなければ使えない、制御できないであろう業を無理やり実現している。本人の精神力で無理やり押さえつけているようだが、これではちょっとしたきっかけですぐに崩れ去る砂の城だ。戦闘に使えるかは怪しい。


(呪文と、魔法で無理にサイクルを回しているものの……持って一分ね)

 ――――お前、どうして……。

(黙りなさい! 気が散る!!)


 ルージュは鬼のような気迫で俺の無理やり口を黙らせると、魔法陣を展開しそこに手を突っ込んで愛剣『アヴァール』を右手に携える。

 戦闘準備を整えると、地を蹴って一瞬でルヴィに肉薄する。


「わぁお」


 人を馬鹿にしたような笑みを作ると、ルヴィはルージュの放ったアヴァールによる一撃を槌の柄で防ぐ。だが逆の手、左手の朱色の剣の一撃は火事場の馬鹿力によりもはや神速の域に達しており、さすがのルヴィも反応できず――――右腕を切り飛ばされた。


(くそっ……!)


 だけどルージュは歯噛みする。

 あの一撃は注意外からの不意打ちにより、頭を真っ二つにするはずだった。なのにルヴィという化け物は視認しなくともただの感で反応し、右腕を切り飛ばされるだけで被害を抑えた。

 ルージュの様子から、右腕を失った程度、喜ばしいものではないと感覚的に分かった。

 予想が正しいなら……こいつはかなり面倒な性質を持っている。

 アヴァールの特殊能力、『夢幻の焔剣ファントム・フラムアルム』により空中に生み出された剣で手足を貫こうとするも速度が圧倒的に違い、距離を取られてしまう。

 だが切り落としたことで地面に落ちていた腕をルージュは素早く爆炎で滅却。再生をさせないためであろうが、その腕の持ち主はそれを不快にも何も思わずヘラヘラと笑っている。


「やるやる~♪ いやぁ、まさか右腕までもっていかれるとは。やるね、どこの誰かさん」

「…………っ!」

「まぁでも……僕としては傷の内に入らないんだけどね」


 右腕を丸々切り飛ばされたはずなのに、傷口からは血というものが一切流れてこない。人間ではないのだから血を流さなくともそんなに問題ではないのだろう。しかし本音としては少しぐらいはダメージを受けた素振りを見せてほしかった。


「ホイッと」


 その傷の断面から、大量の緑色結晶体が生えて、急速な成長をする。

 成長が急に止まったかと思いきや、結晶体は弾けた。役目を成し遂げたように。

 砕けた結晶の奥からは、腕が存在していた。そう、先ほど切り飛ばしたはずの、ルヴィの腕が。


「これでも結構疲れるんだけどねー。ま、フィフスステージ道中なら、これぐらいで上出来かな」

「化け物が……!」

「ひどいな。一応僕ら、同類のようなものでしょ」


 視界が大きくぶれる。

 最初が原因がわからなかったが、すぐに特定できた。

 ルヴィが、再生したばかりの腕でルージュの首を鷲掴みにして宙吊りにしていた。

 しかも掛けられている力は首の骨が折れる寸前という生殺し状態でだ。


「が、っあッ――――」

「肉体が人間かどうかの違いだけ。そうでしょ? まぁ、僕としては人間やめたくてなったわけだけど、君はどうなのかな。暇つぶしに教えてよ。……って、この状態じゃ聞けないか。ま、いいや」


 首にかけられる力が徐々に強まっていく。

 まずい。いくら現身の再生能力だろうと、即死の傷は再生不可能。

 あと数秒で、確実に死に至る。

 充血した目でルヴィを見下ろす。そこには、無邪気な目を持った子供がいるだけ。とても人を殺そうとしている奴の顔には見えなかった。

 だからこその恐怖。

 顔色一つ変えずに、人を殺せる。

 ああ、確かにこいつはもう、人じゃない。

 精神も、俺とほぼ同じだ。

 手から力が抜け、水晶剣とアヴァールをその手から落とす。


 助ケ■カ?


 意識が飛ぶ寸前、そんな声が聞こえる。

 懐かしくも二度と聞きたくなかったと、心のどこかで思える声。


「助け……て……っ」


 アハ、ア、ア■ハハハハ■ハハ■■ハハハ■ハハハ!!


 救いの懇願。

 それを叶えてくれる人間は二種類いる。

 一つ目はただの良心で動くお人よし。もう一つは、利益つまり見返りを求めて動く人間だ。

 こいつは、この声の持ち主は、確実に後者に属する。

 こればかりは命を懸けて断言できた。


 ナル■ド、確カ■人間ト■ウモノハ、随分■命ニ拘ル種族■。薄汚■■言エ■ソコデ■終イダガ……貴様ハ、期待■キソウダ。

 ――――代償は、何だ。

 ナァニ、簡単ダ■モ。――――貴様■右目、貰ウゾ。


 右目、とこいつは言った。

 たった右目一つで命が助かる。安いものだと考える人もいるだろう。

 だが裏を返せば、俺の命は右目一個分しかないということになる。屈辱感はなかった。

 ただ、『何故?』という疑問だけが広がっていた。

 どうして右目しか要求してこない。


「ガッ――――■」

「もうすぐ楽にしてあげるよ、お兄さ…………!!?」

「あ、アァア、ァア…………あ、あはは■■、■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■」


 ルージュが主人格からはじき出される。しかし代わりに前に出ていったのは、俺ではなかった。


 ――――駄目! アイツを外に出しちゃ―――ゥッッッ!?!?

 ――――ルージュ、おい、ルージュ!! ぎッッ!?


 弾かれたルージュ共々、とてつもない悪寒と不快感が体中に纏わりつくのを感じる。

 力が抜け、何の抵抗もできずにその場に崩れ去る感覚。

 右目から、何か、この世の汚物という汚物を集めたようなものが噴出しているような悪感。


「……三つめの人格?」

『ハハハハ……ダト思ウカ』


 命令無視に動く俺の体。首を危険域にまで絞められているというのに、呻き声一つ出さない。

 主人格の精神力がもはや人間の域に達していないのか。喉からとても人とは思えないような濁音が出ているというのに、動揺の色さえ見せない。


「いや、違う……君、人間?」

『知ラナイナ、今ノ状態デハ……トリアエズ、コノ手ハ放シテモラオウカ。青臭イ餓鬼メガ』


 右手が動き、首を絞めているルヴィの腕をつかむ。

 瞬間園から黒い金属が生まれてくるが、そんなもの関係ないと言うかのように黒い金属ごとそのまま握りつぶした。

 ここで初めてルヴィの顔が驚愕に染まる。


「……え?」

『ナル……な、るほど。物理無効か――――そんな小細工、詰まらないの一言で尽きる」


 ようやく喉から出る濁音が止まり、首絞めから解放された俺の体は誇りを落とすような仕草をしながらいやな笑みを作っていた。普段なら絶対にしないであろう、そんな表情。

 誰がどう見たって先ほどとは別人だ。

 その別人には、俺には心当たりがなかった。今まで入ってきた人格はルージュのみ。他の奴などいないはずだ。


「ま、今回は右目をもらったのでな。さすがに良い対価をもらったから、仕事をせねばな」


 そういって謎の人格は俺の体を使って、右目のあった・・・部分に触れる。

 そこには何もない。空洞。虚無。有る筈の物がない。

 右目が、消失していた。


 ――――え?


 さすがに冗談だと思ったが、錯覚では無かった。

 本当に、右目が消えていた。代わりにあるのは、真っ黒く濁ったドロドロの液体だけ。

 この状況がとても理解できなかった。


「じゃあもう少し楽しめるっていうことかな?」

「楽しめる? ふざけたこと抜かすな餓鬼が。私を何だと思っている」


【『Diabolus manifestatio』スキルが強制発動されました。すべてのステータスにEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEERR――――】


「貴様のような餓鬼に、私の相手が務まるわけ、なかろうに」


 全てが死んだ。

 俺に理解できたのは、それだけだった。

 目で見たものは、理解不能なものばかりだった。

 目にあいた穴から出てきた黒い水が突然蠢き、背中に集まった。そして翼を片翼だけ作り、そこから真っ黒く汚い光が嫌というほど背中から吹き出した。それからだった。ルヴィの顔が完全に恐怖へと染まったのは。

 次の瞬間目の前にルヴィが現れた。あちらから近づいたのではなく、こちらから近づいたのだろう、ルヴィは信じられないものを見るような顔をして――――頭部を床に大きくめり込ませていた。

 そして、背中の翼が暴れ、文字通り比喩抜きで、すべてを切り裂き、破壊し、破滅させ、汚染した。

 結果、四階層から一階層までのフロアがすべて崩落した。

 不幸中の幸いか、いずれの階層にも人がいなかったので被害者はゼロ。

 だがこれだけ大きな音がしたのだから待っていれば大勢の人が来るだろう。

 しかしそれはあまり問題ではない。

 これらはコンマ五秒未満で起こった事象なのだから。

 一番問題なのは、これをどうやって俺の体が行ったのか、そしてどうやって耐えられたのか。

 恐らく音速などとうに超えている。人体がどうやって音速に耐えているのだという疑問だけが、俺の中では残っていた。

 一番重要な問題から目を逸らしているような気もするが。


「あ、ぎっ…………」

「何だ。まだ五秒経っていないのに音を上げるのか。所詮口だけの小童か」

「ふざ、け……る、な――――ォゴッ」


 瓦礫の上で必死にもがいているルヴィの頭を謎の人格がスタンプで瓦礫の中に埋めた。

 衝撃で周囲の瓦礫が吹き飛び、大量の土埃などが巻き上がる。


「ギャーギャーギャーギャー……お前は馬鹿か、餓鬼。負けたくせに言い訳を垂らすな」

「負けて、な――――」

「そのご自慢の分からず屋はどうやったら治るんだ。頭を潰せばか?」


 再度容赦ないスタンプ。

 もはや足下で大量のTNT爆薬が爆発しているようだ。それでいて恐ろしいのは、この人格が全く本気を出していないような様子だろう。


「……そろそろ制限時間だ。終わらせる。最後に言い残すことは?」

「な、ん……で」

「ま、言わせないがな」


 背中から噴き出す黒翼が忌々しく大きく輝きだす。

 それがゆっくりと動き、左手の義手を包んでいく。黒翼が左手と一体化すると、今度は赤い線が左手に張り巡らされる。

 何が起こっているのか、一切理解できない。


(やめろ……)


 だけど、これが『越えてはいけない一線』だとはわかった。

 全てを正面から捻じ伏せる圧倒的暴力。たとえ死にかけの敵でも情けをかけない容赦なき無慈悲。

 ああ。

 これこそ、俺の欲しかったものではないか。


 求メロヨ。


(嫌だ……)


 奪エヨ。


(駄目なんだよ)


 欲シイモノ全テヲ。


「死ネ」


 左腕が振り下ろされる。

 全ての常識を根本から覆す力が。

 全てを犯す力が。

 会って間もない少年へと。

 これが本当に、俺の求めたものなのか。


(俺の、欲しいものは――――こんな、ものじゃ)


 理不尽には理不尽を。屁理屈には屁理屈を。

 そんな力が目の前にあるのになぜ手に取らない。

 欲しかっただろう。ずっとずっとずっと、壊れた時から。気に入らないものを排除するための――――


(違う……っ!!)


 違うんだ。

 俺の欲しかったものは。こんなふざけたものではない。

 不幸を捻じ伏せたかった。覆したかった。

 でもそれ以上に大切なものを犠牲にするつもりは、無い。それでは意味が無い。


(俺の一番欲しいものは、力なんかじゃない。――――居場所だ)


 左腕が、ルヴィの肌の前で急停止する。

 殺されそうだったルヴィは「どうして」の一言で表現できる表情だった。しかしそれ以上に――――俺の顔は、限界まで歪められていた。


「なぜ――――」


 動こうとした口を強制的に硬直させる。


(……俺は、こんな力欲しくない)


 纏わりついていた何かが消えていく。

 無理やり振り払った、というのが的確な表現だが、この際細かいことなどどうでもいい。


(俺は、皆を守りたい……それだけでいい。それができるだけの力で、いい)


「ふざける、な……ふざけるなよ、餓鬼が……!!」


 硬直していた腕がギシギシと動き始める。

 もう単純な意志力でねじ伏せるのは、限界か。だから俺は、口の主導権だけを全てをかけて奪った。

 それでも声は出ない。それでも声でなくとも口で伝える方法はある。


『逃げろ』


 唇の動きでそれをルヴィに伝える。相手はこちらの真意がわからない様子だったが、逃げろと言われたからには逃げるしかない。

 次の瞬間には、その姿は光へと変換されていた。簡易的な転移現象とわかり、力がふっと抜ける。


「がはっ…………この糞餓鬼めが……なぜ力を前にしてそれを手にしない!! それが人間だろう!? 大きな力を欲しその身や周囲を犠牲にする愚かな種族が、どうして!!」

(お前の力は、俺の求めているものじゃない。それだけだ)

「……そんな理由で、世界を滅ぼせる力を手にしなかったと? この身に余るからと? ふざけ――――」



「……結城?」



 信じられなかった。

 信じたく、なかった。

 こんな光景。こんな事実。


(なんで、お前がここにいるんだよ――――駄目っ……逃げ)


 口を動かそうにも、支配権を剥奪されていて動かせない。

 反面謎の人格の方は、まるで人の弱みを見つけたような顔をして、あちらにいる小さな影――――紗雪に体を向けた。


「やぁ、紗雪。どうしてここに?」


 可笑しくも爽やかな口調で、俺の口からそんな言葉が這い出る。

 背中の黒翼はいつの間にか消え、右目は何ということか濁水が擬態して今まで通りの形を模して何の変哲もないような状態になる。

 これならば、何も知らない人間など確実に騙せる。


「……あなた、何も言わずに飛び出すなんて、酷いわね。心配したわよ」

「それはすまないことをした。謝ろうか?」

「そうね……じゃあ、口づけでも頼もうかしら」

(は!?)


 この惨状を見て、口づけとな。

 昔からだがアイツの考えていることがいまいちわからない。ってそういうことじゃない。

 早く逃げろと伝えなければ、紗雪はこいつに殺される。

 少なくとも交渉材料にはされるだろう。

 それだけは、何としても回避する。命を捨ててでも。


「いいよ、それくらい」

「ふーん。安い男ね」

「君だけだよ。こんなことをするのは」


 ゆったりと二人は近づく。

 やがて隙間がほぼ埋まるほどに近づくと、謎の人格は紗雪の顎に手を当てる。

 そしてそのまま唇を、合わせるわけもなかった。


「あなた、誰?」

「……何を言って」

「恍けないでくれないかしら。アイツを真似ているというつもりなら、芝居は三流以下ね。小学校の演劇から出直した方がいいんじゃないかしら」

「は、はは……本当に何を」

「第一、アイツはあんたみたいな格好つけたセリフなんて言わない。それに軽々しくキスなんてしようともしない。というより、アイツは筋金入りのシスコンだから絶対にしないわね。それと、二枚目のような仕草もしないわ。こんな感じの、ね」

「……それだけかい?」

「そうね。でも確定的な証拠はあるわよ。……確かに知らなくとも無理はないわね。『左目』は」


 紗雪はそういうと、右目を閉じて左目だけを開いて見せる。そこにはいつもと違う、空色の目があった。それだけで印象が変化した。何もかもを見透かしたような、そんな気分を抱かずにはいられないと思えるような。


「私は結城にも『左目』のことは絶対に明かさなかったわ。アイツの記憶をトレースしているなら確かに模範的な行動ともいえるわよ。アイツの口調は安定しないし、性格も変動性質。これを真似しろいうのが無理ね」

「『左目』? 確かに知らないな。でもそれがどうして証拠に」

「私の右目が『遠方観測眼クリアボヤンズ・アイ』だとすると、左目は『思念解析眼サイコメトリー・アイ』ね。――――私の左目はね、見た人の『心』を読み取ることができるの。色々面倒だからいつもは特製コンタクトで機能を封じてあるけど、今回は特別よ」

「なるほど……『魔眼』か」

「違うわよ。れっきとした人類叡智の産物。超常現象再現ナノマシン、とでも呼ぶかしら」


 そこまで言って、ようやく紗雪が顎に添えられた手を振り払った。

 次の瞬間にははっきりとした敵意を見てこちらを見る。それでもどこか迷いが感じられるのは、俺がここにいることを知っているからか。


「結城、逃げろという言葉は無視させてもらうわよ。あんたを見捨てたら、私が私を許せない」

「ハッ、だからどうした? 端から逃がすつもりもない。それに心の奥で抑えられているこいつも出ることはない。貴様はどうやっても死ぬ運命――――」

「残留思念の読み込み。数分前の言葉、思い出させてあげましょうか? 『そろそろ制限時間だ。終わらせる。最後に言い残すことは?』……その様子から見て、あと十数秒というところかしら」


 自分の言葉で墓穴を掘った人格は黙ってしまう。

 それから怒りを顔に滲み出させると、明確な殺意がこの場に広がる。


「随分と小生意気な娘だ。数秒あれば、いや一秒あれば殺せるというのに」

「そうかしら。じゃあ来なさい。ただし一言言わせてもらうわ」

「言わせるとでも――――」

「結城、全力で止めなさい」


 言われた通り全身全霊を以て体の動きを封じた。

 地を蹴り紗雪へと攻撃しようとした体は勢いを残したまま前へと転がり、高速回転しながら瓦礫の山へと突っ込む。痛かった。だけど、紗雪こいつを失わないのなら、こんなもの雀の涙どころかミジンコの涙だ。たとえ四肢が千切られようとも耐えられる自身がある。


「な、なぜ、だ……意思を捻じ伏せているはずなのに!!」

「答えてあげるわ。結城の精神力はね、人間をとうに超えているのよ。たとえ自分が死ぬ目にあおうとも、仲間だけは決して見捨てない。命を捨てても仲間を助けに行く馬鹿。それが椎名結城という人間よ。下種と見下した人間に足を引っ張られる気分はどう? 悪魔さん」

「貴様ッ! 貴様ァァァああああああああああああああ!!」

「さて、あと少しね。さようなら。できれば二度と会いたくないわね」

「必ず、また対峙する……ッ! 覚えておけよ女、いや、柊紗雪ィッ!!」

「覚えたくないわね。女神さん」


 言葉が終わると同時に体が大きく振幅する。

 心臓の鼓動が早くなり、体の感覚が遅くなっていうような錯覚。あの未知のスキル『ディアボルス・マニフェスティアション』が解除された影響だろうか。とにかく体が怠い。重くて力が入らない。

 そして腹から何かが這い出るような気色悪い感じ。本当に気持ち悪い。だけど紗雪を死なせるよりははるかにマシだ。今だけは、弱音を吐いても許されるか。


「…………ねぇ、結城」

「なんだ。今すっげぇ疲れてんだ。後にして――――」

「そのお腹にあるもの、何?」

「…………………………………は?」


 そう言われると、腹に何かあるような気がする。

 重たい手を動かし、黒装束を脱いで腹の部分をさらけ出す。同時に、何かが服の中から転がり出た。

 転がり出たのは白めの肌色で、それでいて炎のような朱色の髪がかすかな光を反射し神秘さを作り出して……髪?

 目をこする。

 転がり出たものは、手足を持っていた。細く綺麗な、流れるような手足。少女の身長ほどある長い朱色の髪は綺麗に手入れされているように美しい流曲線を描いてみたものすべてを魅了する美しさを持っている。裸なのでどこからどう見てもそんな感想を抱けるだろう。

 顔は幼いが将来に十二分期待できるほどの美人。鋭い目つきだが目は大きくぶっちゃけかわいい。

 体は全体的に見て十二から十四歳ほどか。胸は小さいがまだ成長途中なので期待の余地ありだろう。

 ……いや、今思うことはそれか。

 そうそう、この少女、どこかで見たような顔や体系だ。そう、いつだったかな。確かごく最近のはずだが。嫌な想い出プロテクトがかかっているせいで中々思い出せない。

 そんなことを思っている中、朱色の少女は目覚める。

 眠たそうに眼をこすり、「ここはどこだ」とでも言いたげな顔で周囲を見渡し、やがて俺に視線が固定される。


「………………結城?」


 俺の本名を知っていた。

 少なくともこの世界の人物ではないのは確かだ。朱色の髪を持った奴で俺の名前を知ってい奴など、それこそ存在しない。赤い髪なら一人だけ……そう、一人、だ、け…………。


「……ルージュ?」


 自分の名前を呼ばれたすっぽんぽんの少女は、ただ一回だけ、頷いた。




どうにか戦闘を一話以内に収めることができた・・・何というか、小説作りって大変だなぁ。と今更ながら作った時に思っていました。

凄くどうでもいいな。

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