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《RWO》 ~現実でVRプレイ~  作者: 蒼穹之風
第1章 説明
4/10

閑話1・Tutorial

09/08に追加しました(後ろを)。

「デハ、定型文通リニイキマスカ――皆様、コノ世界……《現実と同等の世界イークルリアルワールド》、略シテ《ERワールド》ヘト、ヨウコソ!」

「《ERワールド》……?」

 

 

 突然の事で視界だけでなく、頭まで真っ白になりかけたが、その前に視界が回復した。

 が。


「……――――っ!」


 何処だ此処は。

 見渡す限りの、青、青、青。前後上下左右何処を見ても、青空しかない。足元には人一人がやっと立てる大きさの薄い硝子(ガラス)の足場があるが、周囲には何も無いし、誰もいない。


「……何処、此処」


 もう一度、声に出して言ってみるも、誰も返答してくれない。いや、そういえば。この状況になる前に被ったアレって、確か。


「……VRワールド……か? 此処VRワールドなのか?」


 《ORS》はVR機器の筈だ。此処はその《ORS》の作るVRワールド……。その筈。なのに――此処がVRワールドならなんでと、ふと見た両手で、ある事に気付き声を荒らげる。


「何でこんなにハッキリ見えるんだよ――!?」


 おかしい。見えすぎだ。普通のVRワールドじゃ再現できても爪ぐらいな物。それが今2035年現在のVR技術の限界の筈。なのになぜ指紋の渦巻や産毛、指の間の皺まで詳細にハッキリと見えるんだ!?

 何処かで聞いた……いや、見た様なフレーズを頭の中で反芻していると。


「……何が起きたんだ!?」

「此処何処だよ!」

「何がどうなってんだ?」

「な、何此処……」

「何で俺、此処に……?」


 等々累々。

 ハッと周囲を見回してみると、さっきまでは確かに誰もいなかったのに、今では足場の硝子板から少し離れた所に、数十人の人たちがいた。

 それぞれが似たようなシャツとズボン。顔には――仮面か、アレ? ふと顔を触ると、明らかに硬い感触がした。どうやら周囲の皆さんと同じく仮面を被らされているらしい。

 何処までも青い空の空中に、それぞれの人達があてがわられた硝子板の上に立っているこの状況。――ハッキリ言って、


「……どういう事?」


 全くもって意味不明だった。


 ◆◇◆◇


 テンパっちゃってしまいたいが、テンパると足場から落ちそうなのでちょっと深呼吸する。で、周囲をもう一回確認する。

 青空。硝子板。仮面付きの人々(現在進行形で増えていっている。まず硝子板が出現し、その後で白い光が凝縮して人が現れる、と言った感じ)。それ以外には何もなさ、げ?

 ふと上向けた視線が、何かが落下してくるのを捉えた。のだが、落下地点と思われるのが――、


「……え。え、ええええぇぇ!?」


 どう見てもこっちだ。その声に周りの人々が振り返るが、無視し慌てて両手を差し出し、何とか受け止める。

 とてつもなく軽かった。ゴシックロリータ系統の紅い服を着た少女は、仮面をつけた頭をブンブン振って意識をハッキリさせると、ふと此方(こちら)を見てそこだけ露わになっている口元に笑みを貼り付けた。口を開いて――、


「アリガトウ。御免ネ、マダ慣レナクテ」

「……!」


 この声。電子的なエフェクトのかかった、あの音声メールの差出人、鳳の声だ。

 不自然に硬直していると、少女=鳳はアハハと笑って腕の中から――なんと、浮かび上がった。


「……サテ、皆サンオ揃イノ様ナノデ、ソロソロ始メマスカ」


 上昇していき、視界斜め30度位の位置で停止し、両手を広げる。


「デハ、定型文通リニイキマスカ――皆様、コノ世界……《現実と同等の世界イークルリアルワールド》、略シテ《ERワールド》ヘト、ヨウコソ!」


 ◆◇◆◇

「《ERワールド》……?」


 耳慣れない言葉に、多分この場にいる全員が首を傾げた。


「ンー、ホラ、大抵皆サンガ使ッテイル《3R》ッテ、VRワールドヲ作ルジャナイデスカ。ソレトハ違イ、今皆サンガ使ワレテイル《ORS》ハ《現実ト限リ無ク変ワラナイ世界》ヲ作レマス。ナノデ、VRワールドトハ比較シテ、我々ハ《ERワールド》ト、呼ンデイルノデスヨ」


 ――《現実と限り無く変わらない世界》?

 もう一度両手に目を落とす。手の皺や指紋は、現実で見るのとなんら変わらない《リアル感》を与えてきた。少々くらくらしつつ、着ている服も見て、折り目やら縫い目まで現実と同じな事に戦慄する。

 が、となると疑問が1つ。


「どうやってるんだ!? 明らかにオーバースペックだろう!?」


 あ、先に言われた。まあ良いとして。

 そう、オーバースペックすぎるのだ。現実と同じ程の再現度を実現するには、コンピュータの演算スピードもスペックも今の技術じゃ足りないはずだ。

 VR関係に詳しければ当然の疑問に、しかし鳳は答えず笑っただけだった。


「知ル必要ガアルンデスカ? 貴方達ガ。知ラナクテモ《ORS》ハ使エマスシ、今カラ皆サンニハ別ノ事ヲシテイタダクノデスカラ、ソノ情報ハイラナイデショウ?」


 ――別の事?

 鳳が気になる事を言ったが、要するに教える気は無いらしい。まあ、聞いた所で覚えられないとは思うが。

 コホン、と空咳が聞こえたので視線を上げると、鳳が左指を振った所だった。その動作と共に、シャランとホロウィンドウが出現する。

 ……で、いきなり爆弾を投下した。


「デハ、今コノ時ヲ持ッテ、《ORS》対応ゲーム、《リバースワールド・オンライン》略シテ《RWO》ノテストヲ始メマス! チナミニ、拒否権ハ無イデスノデ」


「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「……は!?」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 その場の全員が突っ込んだ。拒否権無し……って強制か!?

 全員の突っ込みにちょっとたじろいだのか、鳳が焦ったように取り繕う。


「モ、勿論皆サンノ私生活ニ影響ガ出ナイヨウ、政府ニカケアッテアリマスカラ大丈夫デスヨ! タダ、ズット《ORS》ヲ被ッテイナイトイケナイダケデ、」


「当たり前だろ! てか、ずっと被っとくって……飲まず食わずでフルダイブしてないといけないのか!?」


 左後方の男性|(多分)が憤る。うん、確かに鳳の言い方ではそう聞こえる。怒りを向けられた鳳は、ふるふると首を振った。


「ノ、飲ワズ食ワズジャナイデス! 第一フルダイブジャ無イデスシ、普通ニスゴシテ下サッテ結構デスヨ!」

「……? フルダイブじゃない?」


 首を傾げる。《ORS》もオーバースペックながらもVR機器のはずで、その《ORS》対応のゲームならフルダイブして《RWO》とやらのテストをするはず。ずっと被っていなければいけない=フルダイブしっぱなし、の筈なのだが。

 呟きを聞きつけたのか、今までオロオロしていた鳳が、口元に笑みを浮かべ直した。


「エエ、フルダイブ、デハナク、ハーフダイブデス。マァ、ソレニツイテハ説明スルヨリ見タ方ガ早イノデ……。ソレヨリ、《RWO》ノ説明ヲシマセント」


 隣で展開していたホロウィンドウに触れ、何やら操作すると、ホロウィンドウ上に幾つかの人物が映し出された。

人から、猫の様な耳を持つもの、羽根があるもの等々……なんだろうか、これ。


「――エー、《RWO》デハ、プレイヤーハ6ツノ種族カラ自分ノアカウントヲ作リマス。コレハ、《ORS》ガプレイヤーニアッタ種族ヲ判断シマスノデ、1個目ノアカウントハ選ベマセン。6ツノ種族ハ、《ヒューマン》、《エルフ》、《ピクシー》、《ビースト》、《ドワーフ》、《ゴーレム》ガアリマス」


 その後鳳が語った内容は、要約するとこんな感じだった。

 1・《RWO》はレベル性VRMMORPG(VR、ではなくERらしいのだが)である。

 2・1つ目のアカウントは(《ORS》が適性のある種族を選んでしまうので)決めれないが、2つ目のアカウントは選ぶ事が出来る。

 3・《RWO》では2つしかアカウントを持つことができない。

 4・《RWO》プレイ中は必ず《ORS》を装着していないといけない。無理矢理中断すると脳組織が痛む可能性がある。

 5・プレイヤーは必ず《自宅》と《職務先》を決めなければならない。また、《自宅》と《職場先》に設定している所ではエネミーが襲ってこない(《職場先》ではエネミーがノンアクティブ化する)。

 6・《RWO》では《リアルマネー還元システム》を導入しており、《RWO》内の通貨レウ1コイン=1円のレートで還元可能。

 7・エネミーは建物内にpopする。建物外にもpopするが、建物内にpopしたものより弱い。

 8・フィールドは既存の物に上書きする形になるのでランダム、またフィールドのテーマのランダムになる。

 9・《ヒューマン》、《エルフ》、《ピクシー》、《ビースト》、《ドワーフ》、《ゴーレム》の種族間では、種族ごとに特性が違うものの、レベルが同じなら力差は大して変わらない。

 10・《ヒューマン》は魔法耐性が6種族内一番高く、他の種族の様に初期スペックが低い代わりに多くの《職業クラス》がある。風貌は人と変わらない。

 11・《エルフ》はMPマナ量が一番多く、魔法に一番適性がある。更に《エルフ》は《シルフ》、《ウンディーネ》、《サラマンダー》、《ノーム》、《アルフ》、《インプ》に分ける事が出来、前から順に風、水、火、土、光、闇属性の魔法の効果が得意。尖った耳を持ち、整った容姿を持つ。

 12・《ピクシー》は感知能力が高く、初期状態で普通の人間の1.5倍程度ある(なお、生来のモノに《ORS》がブーストをかける形になる)。風貌は《エルフ》と大して変わらず、《エルフ》より小柄な者が多い。

 13・《ビースト》は運動神経の良い人が多く選ばれ、敏捷性に優れている。また、現実に存在する動物をモデルとするので、タイプによって若干の差がある。人に獣耳や牙、爪をつけた様な容姿を持つ。

 14・《ドワーフ》はHP量が多く、生産系の職業(クラス)を取る事が出来、《ヒューマン》が作る物よりも使用者にボーナスがつく。容姿は――まあ、童話等で見る様な感じ。

 15・《ゴーレム》は物理攻撃に対する耐性が高く、体が固くてロボットの様な風貌をしている。魔法は使えないが、機械仕掛けの武器を自分で作る事が出来、これを唯一の武器とする。

 16・6つの種族の最高実力者達にはそれぞれ《クエスト製造権限》が与えられる。

 17・《クエスト》はプレイヤーが作れる物、《イベント》は運営側が作った物である。《クエスト》の報酬は物理的な物だけだが、《イベント》は物理的報酬以外に経験値が手に入る物もある。

 18・《RWO》では死亡時のデスペナルティは《スペックの低下》となる。また、《復活券》を持っていればデスペナルティを受けずにすむ。

 ……等々。


「サテ、《RWO》デ私ガ説明出来る事は以上デス。何カ質問ハアリマスカ?」

「……いや、なんだよ自宅と職場先を決めるって……それに期間はどれ位なんだよ!」

「スミマセンガ、オ答エデキマセンネ」


 先刻「ずっとフルダイブしてないといけないのか」と憤った男性|(多分)が早速噛みつく。元気だなこの人。

 ……まあ確かに、鳳の説明には不思議な所が多かった。特に5~8番。既存の物に上書きするだとか、(自宅は兎も角)職場先は現実の物であってゲーム内で設定するべき物ではないし、特に6番の《リアルマネー還元システム》のレートが1:1なのも不可解だ。大抵《リアルマネー還元システム》を実装化しているゲームでも、レートはゲーム内通貨:現金=1000円分:1円、と言うのが()()の物しか見た事がない。レートが1:1と言う事はゲーム内で稼いだお金を、そのまま現金で使用できると言う事になる。

 噛みついた男性と同様に(声には出さないが)疑問の視線を投げかける中、鳳は笑みを苦笑に変え、肩をくすめた。


「マ、明日ハ1日準備期間トシテ取ッテアリマスシ、ソレゾレ皆サン専属ノナビゲーターヲ送リマスノデソノ子ニ聞イテ下サイ。今ハ変ニ聞コエルカモシレマセンガ、明日日ガ明ケレバ全部――ルールノ意味モ私ノ不可解ニ見エル言葉ノ意味モ何モカモ分カリマスノデ。エート、アト何モ言ッテ無イ事無イヨネ……」


 数秒頭に人差し指を当て考え込んでいたが、やがてはればれした顔で指を離した。


「ウン、何モ無イ筈デスノデ……コレデ、《RWO》テスト前ノ《チュートリアル》ヲ終ワリマス! マタ明日ノ同ジ時間マデ皆サン――」


 そこで不自然に言葉が切れ、鳳が1度だけパチンと指を鳴らした。


「サヨウナラ!」


 その言葉が発せられると同時に、足元の硝子板が()()した。


「……へ? え、ちょ、うわあああああぁぁぁぁぁぁあ!?」


 鳳の言葉なんて耳を素通りしていた。青空の中落下していく感覚に、意識がフェードアウトした。


以上です。

《ORS》の性能は、これまたSAOの後半に出てくる《STR》と同じ位だと思て下さい。技術(と言うか設定)を真似るのはどうかと思うので曖昧な説明になってしまっています……。VR技術なら兎も角、《ORS》はSAOと同作者のもう1つのVRワールドの話の丁度中間位の技術が使われている、と言う感じで、いまいち変な感じになっていますが何とかしていこうと思います(鳳の説明がなんじゃそら! と言いたくなるかもしれませんが勘弁して下さい)。

次は遅くなります。

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