今日の夕飯は・・・
~今日の夕飯は・・・~
登場人物
・無双鬼灯(むそう-ほおずき)
アホの子w双子の鬼っ子の妹の方。
・無双鈴蘭(むそう-すずらん)
しっかりもの。双子の鬼っ子の姉の方。
・暁宵闇(あかつき-よいやみ)
閻魔様。純粋。お茶目なアホの子w
・楪刹那(ゆずりは-せつな)
死神さん。朗らか。
・昴綺絲(すばる-きいと)
じょろーぐも。母親係。優しい。
・陽炎
秘書さん。毒舌家。会話はメモでする。
・黄昏輪廻(たそがれ-りんね)
天魔。情緒不安定なのにしっかりしているという矛盾w
これは、とある冬の日の物語・・・。
雪がしんしんと降っている。閻魔山にも冬がやって来たのだ。
鬼灯と鈴蘭はいつも通り地獄へと続く門の前に陣取り、門番に勤しんでいた。
「お姉ちゃーん」
ふいに、鬼灯が双子の姉の名を呼ぶ。
「なぁに、鬼灯?」
鈴蘭が視線を前方から、左隣に立っている彼女の方へと移した。
「寒いねぇ~、って。それだけ~」
はぁっ・・・と白い息を吐きながら、鬼灯が笑う。
「そう・・・。確かに寒いわね・・・」
「ねー。それにだーれもこないしー。つまんないよー」
ぷぅっと頬を膨らませる鬼灯に、鈴蘭はくすっと笑った。
「つまらない・・・か。確かにそうね。でも、平和でいいことじゃない」
「そーなんだけどー・・・」
閻魔山には、そもそもの話特別な力を持った人間か、
妖怪しか立ち入ることはできない。
死んだ人間の魂は地獄の中にそのままワープするようなものなのだ。
それならば何故この門を守っているのか?というと、
邪な上級妖怪や低級妖怪を駆除するためなのだが・・・。
今日は一向に姿を現さないのだった。
「寒い時ほど、大暴れしてあったまりたいのに~」
「他の妖怪も、動物みたいに冬眠でもしてるんじゃないかしら?」
鈴蘭がくすりと笑いながら言う。
その言葉に、鬼灯はそうかも!とにっこり笑った。
「やっぱりみんな寒いのは嫌なのかもしれないね!」
「ええ、その通りね・・・と言いたいところだけど・・・」
鈴蘭の声が途端に真剣みを帯びる。
その只事ではなさそうな態度に、鬼灯はようやく異変に気づき、眉をひそめる。
気配。狼の気配だ。そして1匹2匹ではなく、群れ。
木々の隙間から、たくさんの視線を感じ、鬼灯は身震いした。
「うひ~・・・大量だねぇ・・・」
「良かったわね鬼灯。たくさんのお客さんが来てくれたわよ」
鈴蘭がにやりと笑い、懐から拳銃を取り出し、散弾銃へと形状変化させる。
「うんっ!」
短剣を取り出し、大剣へと形状変化させ、鬼灯は嬉しそうに答える。
昔は一つ一つ武器を持ち歩いていたが、
風美が作ってくれた今の武器は物凄く便利だ。
何しろ、1つの武器を変化させることができるのだから。持ち運びが楽で良い。
「ねぇお姉ちゃん。今日は綺絲さんに頼んで鍋作ってもらおうよ!」
「それは名案ね!寒い日は鍋よね、やっぱり!」
「いい肉もあるし~♪」
「目の前にね~♪」
何やら物騒な話だが、
それを楽しそうに語り合えるという所はさすが鬼とでも言うべきか。
2人は顔を見合わせ、狼の群れを見ながらにっこり笑い、同時に言った。
「「食料になって頂きます☆」」
狼さんハントが始まった瞬間だった。
「では早速」
鈴蘭が散弾銃の銃口を群れに向け、発泡しようとした・・・が。
「ダメだよお姉ちゃん!!肉どころか骨まで残らなくなっちゃうじゃん!!」
と狼をザクザクぶった切っている鬼灯からの指摘を受け、
それもそうだな、と思いとどまる。
「じゃあ、こっちにするわ」
散弾銃から機関銃へと形状変化。
「よーく狙って、肉は残さないとね~」
何気ない様子でそう言うと、躊躇なく発泡する。
弾の1つ1つが狼の心臓を正確に打ち抜く。
確実に10体は今の一瞬で仕留められただろう。
「あー!!?ずるいよお姉ちゃん!!そんな一気にいっぱい!」
鬼灯が目を見開いて驚く。
負けていられない!と、大剣から大槌へと形状変化させ、
力いっぱい地面に叩きつけた。
「えーーーーーーーーいッ!!」
雪の上からとか関係なかった。
半径1kmに大きなクレーターが出来上がる。狼は皆脳震盪を起こし息絶えた。
爆心地で、鬼灯は爽やかな笑顔で立っていた。
「ふぃーっ♪」
「ふいーっ♪・・・じゃないでしょ!もういなくなっちゃったじゃないの!
ていうか危ない!!あたしも巻き込まれそうだったじゃない!」
咄嗟に木の枝へと移動した鈴蘭が抗議するが、鬼灯は、あははwと笑っている。
「ごめーん☆・・・それにしても、
すっきりしたけど呆気なさすぎてつまんなかったね。
やっぱり戦うなら上級妖怪だね~」
「あのねぇ・・・」
その言葉に鈴蘭はただただ呆れた。全くこの妹は・・・。
「まぁ、いいわ・・・。この量どうやって運ぶつもりなの?」
「そうだね!!考えてなかったや!あっはっは!!」
鬼灯が頭の後ろを掻きながら笑う。
「言いだしっぺなのに責任感がないというか、
後のこと考えてないというか・・・まぁ、今更か・・・」
どうしようか相談した結果、
屋敷に戻って他のみんなを呼ぼうということになった。
おい門番仕事はどうしたw門ほったらかすなw
屋敷に帰ると、綺絲が昼寝をしていて、輪廻は刹那と駄弁っていた。
「おっ。お帰り2人とも~。今日は早いねぇ」
刹那がひらひらと手を振りながら声をかけてきた。
違うんですサボってるんです。この子達。
「おかえり」
輪廻がにこっと微笑みながら言う。あぁ違うんだ・・・。
鈴蘭と鬼灯は苦笑いをしながら、実は・・・と事情を説明した。
「へぇ、狼・・・」
輪廻がおやおやというように目を丸くした。
「そんな大量に採れたの?気になるなぁw」
刹那がにやにやと笑う。嬉しそうだ。
「そうなの!そんなわけだから、運ぶの手伝って欲しいんだー!」
「狼鍋の為にも!」
刹那と輪廻は快く了承した。
「いいわよ。食料確保お疲れ様」
「鍋かぁ~久しぶりだなぁ~」
嬉しそうな様子で2人は玄関へ向かった。
鬼灯と鈴蘭はやった!とハイタッチをして、後を追いかけた。
大量の狼の死体を前に、刹那と輪廻は固まった。
「こんなに多いなんて思ってなかったよ・・・
軽く30匹はいるんじゃない??」
「食べきれるのかどうかが一番問題よね・・・これ・・・」
刹那は苦笑いをしながら、輪廻は顔を引きつらせながら言った。
「・・・てへ☆」
「ですよねー・・・」
まぁとにかく仕留めちまったもんは仕方ないか!
と、いうことで、早速運ぶことになった。
数分後。
血まみれの狼を持って運んだため、4人は血で染まっていた。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?あ、あなたたち何があったの!!?」
昼寝から覚めた綺絲が真っ赤っかな家族を見て青ざめる。
パニックになりそうになっている綺絲に、慌てて刹那が説明する。
「実はかくかくしかじかで・・・」
「なるほどね・・・。あぁびっくりした・・・」
ホッと胸を撫で下ろす綺絲。そら驚くわw
「・・・で。あたしはこの狼たちを調理すればいいわけね」
「さっすが綺絲さん!察しが良い~♪」
鬼灯がきゃーっと喜ぶ。
「まぁね!」
褒められて満更でも無い様子の綺絲。乗せられてるw
「じゃあ、作りますかねっと・・・。刹那ちゃん、輪廻、手伝ってくれる?」
「あいよー!」
「いいわよ」
刹那と輪廻は頷くや否や台所に向かって行った。
綺絲は台所へ行く足をふと止め、振り返ると、鬼灯と鈴蘭に言った。
「あなたたちは、お仕事してきなさいね。
帰ってきたらびっくりするようなもの作って待ってるから」
にこっと笑う綺絲。まさにママン。いや真のママンは私だけどもw
2人ははーい!と返事をすると、嬉しそうに門へ向かった。
そして仕事を終え、再び帰宅した2人。
「ただいまー!」
「ただいま~」
「おかえりなさ~い♪」
『お疲れ様です。』
声をかけてきたのは宵闇、メモを差し出したのは陽炎だ。
夕飯を食べるために一旦地獄の裁判所から帰ってきたのだろう。
食べ終わったらまた仕事だというのだから、本当にご苦労様だ。
それにしてもなんで2人は玄関に立っているのだろう?
「2人とも待ってたよ~!
今日は食料調達してくれたんだって??ありがとね!」
宵闇がにぱっと笑顔で言う。陽炎がメモをスっと差し出す。
『綺絲さんが腕によりをかけて作ったらしいですよ。楽しみです。』
「わぁ!!ほんと?」
「楽しみね!」
メモを見て嬉しそうに笑う鬼灯と鈴蘭。
「なんかね、
2人が帰ってくるまで玄関で待ってて!入ったら承知しないわよ!!
ってすばるんが言うからさ、今までずっと待ってたんだよ~w」
『おあずけというやつです。お腹が減りました。』
無表情でお腹を押さえる陽炎。宵闇もお腹をぽんぽんと叩いている。
そんな2人の様子に、鈴蘭はぺこりと慌てて頭を下げた。
「そうだったんですかっ!ごめんなさいっ!」
「いいよいいよ~!待ってた方が美味しさも倍だし!」
『みんなで一緒に見るほうが感動も増しますからね。』
温かい言葉で2人がほっこりした時、居間へと続く障子戸が開いた。
「入って良いわよ~!おかえりなさい鬼灯、鈴蘭」
綺絲が微笑みながら中へと誘導する。
「うん!ただいま~!」
「ただいま!」
中に入ると、刹那と輪廻が得意そうな顔で席に着いていた。
「おっ!帰ってきたねぇ」
「待ってたわよ」
挨拶を交わし、宵闇、陽炎、鬼灯、鈴蘭は席に着いた。
「じゃあ、運んでくるから待っててね」
綺絲が台所へ行き、戻ってくる間にわいわい話をした。
『どんな料理になったんですか?』
「ふふっ。見てのお楽しみってやつよ!」
「せっちゃんと輪廻ちゃんはもう知ってるんだ~!ずるい~」
「あたしたちも手伝ったんですから、当然ですよ閻魔様☆」
「そういえば運んでくる途中でみんな血まみれになっちゃって、
綺絲がすごく青ざめてたのよね」
「あ!あれは面白かったですよね!」
「え!?なにそれwもっとkwsk!!」
きゃっきゃと話に花を咲かせて賑やかにしていると、
綺絲が狼肉フルコースを運んできた。
鍋はもちろん、様々な料理がテーブルを彩る。
各々の瞳にはキラキラと星が瞬いているようだった。
こうして、今日もまた1日が過ぎたのであった・・・