人形劇-裏
病み文全開の趣味満載です、ご注意下さい。
私は何故、あんなモノを造ってしまったのだろう。
一見すれば、美しい女の姿だ。
普及しているモノでは飽きたらず造り出した。
素直で物静かな彼女を、初めこそ私は溺愛した。
我ながら、素晴らしいモノが出来上がったと感動した程に。
けれど次第に、彼女の持つなにか奇妙な、異様さとでも呼ぶべき物に気付かないわけにはいかなかった。
物言わず、常に背後に佇む静かな不気味さ。
彼女の瞳は私の背中に、突き刺すような奇妙な熱を持って常に張り付いた。
私は次第に彼女を不気味に思い、畏れるようになった。
だが、尚、彼女の視線が失われることはない。
机に向かい、常に彼女の瞳を避けるしか、私には方法が無かった。
限界に達すると、彼女を見ず、極力名も呼ばず、つまらない雑用を押し付ける。
けれど彼女は、声だけでも判る喜色満面な様子で、その雑用をこなしにいくのだ。
その直ぐ後、再びあの不気味な視線を感じることに為る事は判りきっていた。
それでも、私はそんな彼女に健気さを感じずにはいられなかった。
何であれ、私は彼女を愛さずにはいられなかったのだ。
美しい娘、老いる事の無い健気な人形。
彼女の微笑みは耐え難いほどに愛おしく、鈴を転がすような声は聞く者の心に入り込む。
私は矛盾した感情に気付きながら、敢えて目を背ける。
ただ一つ、線を切れば。
ただ一度、動力を落とせば。
彼女は此方が望むまで、一言も発さず、一度も目を開くことはないと言うのに。
それでも私は、彼女を畏れ、そして愛するしか術はない。
その関係に、そんなにも私を捕らえる彼女を、いっそ憎むようにして。
人を虜にせずにはいられない人形。
喩え、どんなに畏れを抱いても、彼女は決して私を離しはしない。
愛おしさと、其処に隠された憎しみの、直ぐ後ろに迫る恐怖を、私は知っていると言うのに。
それでも彼女と別れることが出来ずにいる。
後一日、後一時間、後一分………………。
最後には、確実に絡め取られると判っていながら。
「表の花壇に、水をやってくれないか」
後悔する事は、目に見えるよりも明らかだというのに。
「はい、博士」
……私は彼女を、憎み畏れながら愛する事しか出来ないのだ。
私は何故、あんなモノを造ってしまったのだろう。
恋愛では無い気がしましたが、表とあわせて恋愛カテゴリーに分類です。見当違いでしたら本当にすみません……!
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