th8;reluctant
あまりに予想外過ぎて頭が凍りつく。
付き合う?
誰と誰が?
俺と理奈が?
「…………な、に言ってるんだよ、理奈。俺はお前と付き合えないよ。」
咄嗟に出てきた言葉はあまりにもありきたりで俺たちらしくなさすぎた。
「どうして?いっちゃん、今は彼女さん居ないよね。だったら別にいいでしょ。」
「理奈、バカなこと言うなよ。俺はお前のこと妹みたいにしか思ってないんだぞ。だから無理に決まってるだろ。だから、俺はお前とは付き合うつもりは少しもないよ。」
「ふ~~ん~~。いっちゃんって私の事昔から妹にしか思ってなかったんだ~~。」
どうして気付けなかったのだろうか。
この時理奈の口調が普段とはかけ離れていることに。
でも理奈からすればこれは確認事項でしかなかったのだろう。
「じゃあ、いっちゃんはなんで私にエッチなことしたの?兄妹ならしないよね、そんなこと。それともいっちゃんの中ではエッチがコミュニケーションって言うつもりなのかな。」
「……え、………あ………、何バカなこと言ってんだ、理奈俺がいつそんなことしたよ。」
この時の俺はとてつもなくマヌケな顔をしていたことだろう。
何時から気付かれてた?
今日?
それともこの前か?
それとも半年前のあの時か?
違う、そんなことはどうでもいい
なんとか押し切れ。
でもどうやって、どうすれば?
「何時そんなことした?そんなの数えたことないよ。」
理奈の答えを聞いて安心した俺はようなく息を再び吸い始めた。
でもそれも気休めだった。
「一月前って言えばいいのかな。それとも半年前?どんなことをされたか言えば認めてくれるかな。それとも私が中学三年生の受験が終わった、初めての時を言えばいいのかな?どれを言えば正解なの、いっちゃん。あっ分かった。今日だって言えばいいんだね。本当は酔わせてからするつもりだった、でしょ。」
頭の中が全てフォーマットされたような気分になった。
もう駄目だ、全部知られてる。
打つ手のなくなり、力なく首肯する俺を理奈は満足そうに見下ろしていた。