イートフロッグたちの事情
巨大イートフロッグから語られる話とは
イート・フロッグの悩みは深刻であった。最近、人間の間でイート・フロッグを乾燥させた粉末が滋養強壮に効くという話が持ち上がり、乱獲されて個体数が減少しているとのこと。巨大化したイート・フロッグは親兄弟を捕獲されて、一心に神に祈った。「人間を追い払える力を!」。その願いを女神が聞き届け、現在のような巨大な体を持つに至ったのだ。
幸いだったのは腕利きの冒険者たちがやってきていないこと。基本的に冒険者は採集依頼を受けたがらない。実入りが少ないからだ。
モンスターを討伐すれば、討伐料金にプラスしてモンスターから取れる素材を金に換えられる。一石二鳥というわけだ。しかし採集では倒した分の料金が発生しない。だから初心者以外は採集をやりたがらないのだ。
「問題は、君が討伐依頼の対象になるかもしれないということだな」
シンが冷静に分析する。これまではその姿を現せば、巨大さに驚いた人間は逃げる者がほとんどであった。なかには向かってくる者もいたが、イート・フロッグ特有の粘液を浴びせたら、あまりの不快さに戦闘どころではなくなり、難なく撃退できた。
幸か不幸か、人間側にもイート・フロッグ側にも死者は出ていない。そのため大きな問題として取り上げられていないのが現状だ。
「とはいえ今後どうなるかはわからないよな。なんとか対策を打たない」
シンが思考を巡らせる。
「ところで、イート・フロッグ。君、名前は?」
「ないよ。僕、ただのカエルだよ。名前なんてあるわけない」
「う〜ん、それだと呼ぶときに不便だな。よし、俺が名前をつけていいか?」
「え!」
イートフロッグは絶句した。さっきまで対峙していた人間。自分たちにとって天敵の人間が、こちらの事情を汲み取ってくれただけではなく、名前までつけようとしてくれている。それはつまり自分と対話を続けるため、言い換えれば対等な相手として扱おうとしてくれていることにほかならないからだ。
「君は男の子なのか?」
頭がついてこないイートフロッグが、シンの質問になんとか首を縦に振る。
「そうか……。じゃあ君はいまからピョン助だ!」
その名前を聞いて、しばし考えこむ。
「もっと洒落た名前にしてくれ」
その答えを聞いて、シンが祐鬼のほうに向き直る。
「祐鬼、こいつぶん殴りたい」
今度は祐鬼がシンをなだめる番となった。
ともあれ、イートフロッグの名前はピョン助に決定した。なんだかんだその名前を気に入っているようでもある。
「でもシン。何か良い考えはあるの?」
「まぁな。要はヘイトの対象がピョン助たちに向かなければいいわけだ。そして人間がタマス沼に近づかないようにすればいい」
「ピョン助、仲間たちに声をかけて集めてくれないか?」
そう声をかけると、シンは奇妙な魔法陣を書き始めた。
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