野毛
「あれ?もう出来上がってるね〜」秘書の美沙ちゃんには先に会社を出てもらい野毛の店で落ち合った。
会社のある品川では、人の目があり込み入った話しが出来ない。
「野毛にして正解ですよ〜
もうアンタの部下の木村さん?ずっとへばりついてきて飲みに行こう!ってシツコイ!!!」美沙がキレている。
「あ〜、悪い。元カレなんだよ〜
あっ、でも、既婚者だし子供も居るけどね。
あんなキモオヤジに育つとは思ってなかったよ〜ゴメンね。」と美沙に謝る。
「ゲーーーッ!キモッ!
奥さんもお子さんも恥ずかしいだろうなあ〜あんなお父さん!」若い美沙ちゃんは辛辣だ。
「本当!振られて正解だったよ。」苦笑いしながら倫子もビールを頼んだ。
美沙は地声は男だが、何とかうわずった高音が女の子のように聞こえる。受け答えだけなら辛うじて女を保てる。
赤ワインを並々注いで、すでにボトル半分空けてる。
「明日も仕事だよ?大丈夫?
私がマンション近いから野毛にしたけど家はどこ?
ここから遠くない?」こんな本格的に飲むとは思ってなかった。
やはり40代と20代では飲み方が違う。心配になる。
「へっ?家?オレ寮すよ。三茶でーす!」仕事の話できるんだろか?遠くないか?
「あ〜っ、それ知ってれば渋谷にでもすれば良かったね?遠くない?」美沙の情報は全て名前からウソなので分からなかったのだ、申し訳ない。
「良いっす、良いっす〜そこら辺で適当に寝っ転がって寝ますから〜」ダメだ!今、めちゃくちゃ綺麗なお姉さんになってるのを忘れてる。
道端で寝たら…一生のトラウマになる!
「出来るだけ早くターゲット絞ろうね。」さっそくインスタに来た男達を2人で見る。
「あっ、黒人さんは顔だけで受け答えするのは1人です。皆、英語話しません。村の人の顔を全員借りてるんですよ。」「えっ、そうなの?」ビックリ情報だ。
「じゃ、誰を選んでも良いのね?」と言うと美沙が面長の黒人にしては陰気そうな男を指さした。
「全員コイツなんで。コイツに返信して下さい。
でアラブ人はコイツとコイツ。イタリア人とドイツ人はコイツ…」指示された人物に同じ返信を出した。
「多分いきなり動画送りつけるか、チャットから音声通話ビデオ通話求めてきますが無視して下さい。
日本人は断るのにも理由を説明しょうとか親切するから結局押されて通話しちゃうんですよね。
無視です。無視!」倫子は分からないなりにうなづく。
「なんなら、会社でオレがやり取りは全部するんでインスタ開けなくて良いです。
大事な写真とかないですよね…」と倫子の写真をスクロールするが…全部居酒屋の飲み会写真で顔すら倫子以外は上げてなかった。
「コンプラ、ちゃんとしてますね…さすが。オレの友達なんか女も男もバンバン顔晒してますが…」美沙が反省気味だ。
「まだ学生気分が抜けない年頃なんだよ。働いて上司や会社の人にも見られるようになったら、自然と映さなくなるよ〜嫌で」と倫子が笑う。
それこそ元カレの木村みたいなオヤジにニヤニヤされながら見られると思ったら、美沙の友達も自然と上げなくなるだろう。




