未熟者
「…濡れ衣、勝手に掛けないでよ!どう考えたってアンタが犯人でしょ?」小さな声で耳元にボソボソ話す。
「だから〜オレがトイレ入った時には、もう刺されてたの!」見かけは完全に女だが、中身は男っぽいようだ。デカい声で反論してきた。
「……」倫子は呆れてデスクに片手を置いて美人秘書を見下ろした。
「…アナタ、本当に警察?ちょっと未熟過ぎない?」また倫子が小声でボソボソ話す。
「…そうだよ。まだ地域課入ったばっかりだよ!でも、この容姿買われて大抜擢で今回の任務ついたんだ!
なのに、初っ端ヤラれた…」分かりやすく落ち込んだ。
「私、探るのは見当違いだよ。探るなら…あの男だよ。」倫子なりに先日の多目的トイレの様子を思い出す。
空きマークは出てたが引き戸は綺麗に閉まってた。
どのくらいの時間経過があったが知れないが、恋人の無事を確認しに来たなら、後ろの扉をキッチリ閉めるだろうか?
あの大柄な身体だと力もあるだろう。引き戸は何回かバウンドしないか?
確かにザラ女は噴水広場で人待ちしてたが、恋人会うのにリサイクルショップなんかで時間潰すだろうか?
何より、恋する女があんなにイケズだろうか?
恋をするとどんな人間も多少性格良くならないか?
「…アイツは分かってる。国際指名手配も受けてる。」
美人秘書が眉間にシワを寄せる。
「じゃ、捕まえて吐かせなよ〜私なんか探ってどうすんの?」倫子は呆れる。
「…アイツは絶対吐かない!今のままじゃ。
国際ロマンス詐欺の大元を捕まえないと…」美人秘書はどんどん口数が減る。
倫子も聞いた事がある。突然インスタなんかでメール送ってきて、愛してるとか何とか囁やくのだ。
で、送金させたりブツを運ばせたりするのだ。
引っ掛かるのは、40代50代の女が多いらしい…と、そこで嫌な予感がした。
「…次は私が狙われるとか?」ザラ女が絡んだのは、同世代で結婚も出産もしてないハイミス同士だからだ。
美人秘書がうなづいた。
ムチャ腹が立つ!思わずデスクを拳で叩く。
「ア〜ッ、そういう事ね!ロマンス詐欺って、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる方式らしいしね。
その組織からしたら、私なんかカモネギだと?」思わず顔を近付けて噛みつきそうな勢いで秘書をにらむ。
「多分もう部長のインスタ見つけてメール送って来てると思いますよ。アイツ等」と倫子の携帯に視線をやった。
まさかと思ってインスタを調べた。
スゴい量のあらゆる人種の男のアイコンが並んでいた。
英語で大量にメールの受信申請が並んでる。
「クソッ!」思わず携帯投げたかったが、グッと堪えた。
コイツらへの怒りは、捕まえられて泣かさないと!晴れない!
「人をバカにすんのも大概にしろよ〜っ!!!クズどもが!」倫子は咆哮した。




