タックル
美沙は両親共、オリンピック強化選手として出会っている。昔の事なので母は父の父親に選手を辞め父のサポートに回れと言われ泣く泣く引いたらしい。
しかし、結果父は選考にもれ、母のライバルがオリンピックに出場が決まった。
それから母は義父を死ぬまで許さなかった。
のだと思う。
会うことは無かった。
長年の夢を潰したのだ、仕方ない。
人の人生に口出しする時は、男女関係なく重いと覚悟しなくてはいけない。
日本では女の人生に口出しする他人がたまに出現するが、母の父ですらレスリングを辞めるか否か自分で決めろと言ったのに
旦那の父親が口出ししたのだから。
許される訳が無い。
死ぬ間際、許してくれと言われたらしいが無視したらしい。「覆水盆に返らず」である。
そんな環境だったので、美沙は大変リベラルに成長した。おかげで、男だから〜とか女だから〜とか発想がない。
ランドセルも好きな色だったので水色で通した。
多分そういう生い立ちなので、倫子と言葉でぶつかる事もないのかもしれない。
ただ、父と母が美沙にオリンピックを目指してほしいと口にしないが思ってたのは知ってる。
がしかし、美沙には全く魅力がなかった。選手として試合に出るし全国大会で入賞もしたが。
美沙はこの身体能力を世のため人のため生かしたかった。
今、試合なら絶対階級違いで対決する事なかった大男と命を掛けた戦いだ。
ゾクゾクする。オリンピックでは絶対得られない快感だ。
先輩達は発砲の準備をしているだろう。
負けそうな時は大急ぎで離れないと撃ちにくい。
リーチがあると言う事は、中は広いと言う事だ。
本人自身も持て余すくらい。
タックルを掛けるスキは必ずある。
サバイバルナイフの死角は背中だ。
大男は腰や膝に致命傷を抱えていることが多い。
美沙はテーブルから降りて低く構えた。
まっすぐ向いリーチの際で揺さぶる。時間をかける。
「ええい!チマチマと!」リアムがイラつく。
一発で決めようと大きく振りかぶった。リーチの外を攻めるためだ。
その瞬間、脇下から背中に周り腰を引いた。
リアムは呆気なく背中から倒れた。
ヘラクレスオオカブトが仰向けになって足をバタつかせるように。
次の瞬間、リアムのサバイバルナイフは狙撃で手を撃ち抜かれて落ちた。
「仕事も戦いも冷静である事が1番大事だね。体の大きさや武器で決まる訳じゃ無いんだ。
浮つくと大事な部分が見えないか…
僕なら、みなとみらいの一等地にスタッフ10人規模で開業したのが間違いかな?」リアムと美沙の戦いを見て先生が考える。
「そうですね〜実績ない雇われで10年くらいのキャリアの開業医なら相鉄線の分岐の二俣川の駅前ビルで事務1人と助手1人で始めて様子を見るべきだったかなと思います。」倫子なりのアドバイスをした。




