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説得

「先生は頭の良い人です。こんな事して無意味と分かりますよね?」倫子は何とか説得しょうとする。

「私を殺しても、何も変わりません。

今捕まってる女の子から、アナタの身元は割れます。

警察は先生にたどり着きます。」先生の顔は無表情だ。

「警察はうまく騙せたのに、なんで貴女は気付いた?」先生が聞く。

「え〜っ、だって私リアムが刺した女にその前に先生が褒めてくれたライラックピンクのカーディガンのせいで突き飛ばされたんですよ!

わざと。

そんな女が、入ってるトイレをノックされて「すみません」とか絶対言いませんよ!」倫子は経緯を説明する。

「…40代のハイミスの売れ残りは、そこまで根性悪なのかい?」先生がキョトンとしてる。

「先生〜、女が分かってないですね〜

40代は女の中で上の方なんですよ。

世の中、年下の方が多くなってきてるんです。

先輩が後輩にトイレ急かされて「すみません」なんて殊勝な事言いません!

子育て主婦だって、年下ですからね。

それも、同世代の私を突き飛ばすような女ですよ!

すみませんなんて!絶対、世間に向かって言いません!」倫子が自信に満ちた目で言うので、先生が笑ってしまった。

「良くその説明で警察が動いたね〜」吹き出す。

「警察も男ばっかりなので、すみませんと言ったのが

トイレの中の女だと証言者達の話から思ってました。

でも、素直にすみませんなんて!20代が限界です。

30代から、すみませんの前に一呼吸置きだして〜40代なったら、もう言いませんから!」スーパー銭湯などで色んな世代の女が行き交う世界を体験しないと分からないのだ。

「そうか、もし外れていても良いのか?

煮詰まっているし話を聞くだけだ…そうか、男だけじゃなく女で貴女みたいにバシバシ言う人も大きな組織には要るのか。」先生は何か考え事をしてる。

「ぼくの病院も最初は年配の女性居たんだよ。

でも、色々ぼくにも指図するからウザくてね。

若い子ばかりで、ぼくに意見しない子ばかりに変えたんだよ。

そこからかなあ〜客層が偏って回転が悪くなって、夜の飲み屋みたいになって収入が減ったんだよ。

オバさんが粘着質な客を追っ払って、受付の回転率上げてくれてたのに…若い可愛い歯科助手狙いのストーカー男や僕狙いの身体触ってくる女ばっかりなって苦労してたのは

オバさん助手や、事務員減らしたからか?」先生なりに倫子みたいな言いにくい事をバシバシ嫌われながらでも言う人間の存在価値を知ったようだ。

そして、経営に行き詰まりを感じていた。

1軍男子にありがちな発想で…

1軍男子は、経営を可愛い女の子や仕事できる男揃えれば良いと単純に思うのだ。

商いは、やり手ババアがいないとダメなのだ。

経験値と解決策のスピードがないと会社は成り立たないのだ。

「他の人の結婚や時短で抜ける穴を埋める事で経験値上げてきた貴女みたいな人が、上層部には有り難いんだね。

その上で、ライバルにならない。

男社会で群れない一匹狼だから、乗っ取られる心配がない。」先生も一等地で高い家賃払いながらスタッフ雇って機材揃えて経営に苦労していたのだ。


「男社会だけど、男だけだと煮詰まる部分があるんですよ。

それこそ戦前の陸軍みたいに。陸軍が政治にまで干渉し、日本は集団ヒステリーみたいな状態になった。

原爆落とされないと戦争止めないくらいに。

女性幹部が居れば、政治への干渉具合や海軍との連携やアメリカとの交渉ももっと柔軟になったでしょう。」

話しながら先生のテーブルの方の手を握る。

これも長年仕事で培ったやり方だ。

ベテランホステスと変わらない。

身体を接触させて話すと人は聞く耳を持つのだ。

男同士だとこれができないが、女だと同性にも異性にもできる。

「生意気でジャマで偉そうで申し訳ありません。

でも、私みたいなのも家庭ではいるかどうか分かりませんが、組織には要るんですよ。

数はそんなに要らないかもしれませんが。」先生の手をさすりながら話す。

この人は、かなり追い込まれている。

安心すれば冷静に自分の状況を考えられる人だ。

なんなら刑に服した後のことまで考え及ぶはずだ。


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