不満
フレンチだが歯医者の先生は割とカジュアルな服装で先に食べていた。
何だかガッカリする。
何か期待してた訳じゃないが。
「あっ、倫子さ〜ん!来てくれたんだ。
無視されるかなと思いましたけど。」先生はいつものように癒しの笑顔でゆったりと微笑む。
「何ですか?大事と聞いたので、今出先なんです。
話して下さい。」こっちはバタバタしてるのだ、食事の相手をしてる暇はない!
立ったまま聞く。席を引かれたが、無視した。
「つれないなあ〜ライラック、季節じゃないのに探すの苦労したんですよ。」なんかどうでも良い話だ。
「あの、私、警察に行かないといけないので…」レストランを出ようとすると結構強引に座らされる。
先生らしくない。
治療の時は、少しでも痛いとすぐ辞めてくれて治療に時間は掛かるが良い先生だったのに…
虫歯の治療からだから1年くらい通ってる。
「あのいつも一緒に居る子の所行くんでしょ?
つい2カ月くらい前に知り合った子でしょ?」先生は表情から分かりにくいが怒ってるようだ。
「秘書に配属された社員ですよ。9月に辞令があって
仕事が多忙だろうと会社が付けてくれたんです。
それにあの…女性ですよ?」先生が美沙の性別を知ってる訳が無い。
男なら若くてあんな可愛い女の子の方に気がいくのに…
元カレだって、不倫願望で美沙に付きまとってた。
なんで…
思わず黙々食べてる先生の顔を見る。
もしかして…美沙が男だと知ってるのか?
「あの…私、もう行かないと」と席を立とうとすると
脇腹に突き刺さるモノが…先生は片手でデザートを食べながらナプキンで隠してるが、倫子の脇腹に刃物が…キッチンで使う包丁をデカくしたような…
「リアムの気持ち分かるよ。
自分への愛で殉じて死ぬなら良いのに、若い男に頼まれてリアムを売ろうとするなんて!
許せないよね!」倫子はまじまじと先生の顔を見る。
いつもの笑顔だけどトゲがある…ライラックの花の時みたいだ。
「女の価値はね。男への愛で決まるんだよ。
どれだけ尽くせるか?愛に全てを捧げるか?
君は、それが分からない女だから選ばれないのさ。
見てご覧!日本の女は、世界で1番働き者で寝る間もなく夫の世話をし、子供の世話をし、全てを捧げて家族に尽くす。
それが日本女性の美徳なんだよ。
男はその美徳を持った女を妻にして、子孫を増やす。
末永く男に尽くす女を絶やさない為にね。
君は日本女性のカスだから、子孫を残せないのさ。」
先生はコーヒーを飲んで一息をつく。
「…先生がロマンス詐欺の黒幕なんですか?」倫子が聞く。
「黒幕なんて、ただ彼が勾留中とか身動きとれない時に仕事してあげてるだけだよ。税金取られずまとまったお金も貰えるしね。
歯医者をコツコツやってる1年分を1月で稼げるんだよ。
日本女性は、その美徳で1番愛される女なんだよ。
海外セレブも最後は日本女性に看取られるのがトレンドだし〜
本当に君と言う人は!日本女性を堕落させるガンだよ!全く!」多分、リアムが使ってた牛刀だろう…牛を解体する刃物だ。
切れ味が違うのだ。
倫子は身動き取れない。
久々、元彼達みたいな説教が横で始まってるが…聞き慣れて馬の耳に念仏だが。
今は脇腹に牛刀が!
下手に口答え出来ない!




