憂鬱
インスタの影響で会社の株価まで上がった。
倫子はどんどん憂鬱になっていくのに、次期常務取締役の話まで出てきた。
「いえ!まだ40代ですし実績らしい実績も無いですし…」と辞退するが、社長の子息はまだ学生だそうで
役員も社長も60〜70代ばかりなので、すぐじゃなくて良いから繋ぎとして考えてくれないかと言われた。
首相も初の女性だし、この流れに会社も乗りたいのかも知れない。
統括だってキツいのに…と滅入る。
部長職で50代でもっと優秀な人材はいる。
しかし、会社を乗っ取られる危険もある。実際に部長職の男達は派閥を形成してる家庭を持ってるので息子もいる。
役員は我が子を会社に入れない事が役員になる条件だったが、部長職までは目が行き届かなかった。
今年の新卒に3人入っていた。
社長の息子の先輩に部長の子が来る…あまりよろしくない。
後々のために倫子を息子の後見人にしたいのだ。
家庭も子もない倫子が使い勝手が良いのだ。
「ロマンス詐欺の方は動きないの?」美沙に部長室で聞いた。
「動きが止まったね〜でも、倫子さんの周りに不穏な動きはない。リアムを捕まえて様子を見るか検討中みたいだ。」美沙達も戸惑っている。
クラスの男子みたいに倫子が出しゃばれば黙るのか?
正々堂々と論破すれば良いのだ。
なのに、裏でコソコソと!
「……」美沙は直感的にいや経験的に気づいた。
「私にそのザラ女の殺された時の防犯カメラの映像見せて貰う事出来ないかな?」倫子が頼む。
「良いけど…なんで?」美沙が不思議がる。
「いや、私も良く分からないけど。経験的に探れるものや知れる事は全部見ときたいの。
私と戦う男は絶対裏で暗躍する。」男は組織化する生き物だ。派閥がいい例だ。
「リアムの過去とか分かる?どこで生まれてどこで育ったとか?」倫子が美沙に聞く。
「中で見せるよ。」美沙に部長室の砦に呼ばれる。
リアムの経歴がモニターに映された。
横須賀海軍基地で母親は日本人で生まれる。
10歳まで横須賀で育ったが、父親がハワイのパールハーバー基地へ異動となり15歳までハワイで育つ。
その後バージニア州のノーフォーク本部へ父が異動したが、そこで差別的な扱いを受け軍人の父と袂を分かった。
「あちゃ〜、アメリカ南部へハワイの自由な空気を吸いきった後に入ったのね〜
そりゃ、反発すごいわ!アソコは今でも白人とカラード(黒人や黄色人種、インド、ラテンなど)の子は、教室も食堂もトイレも別々なハイクラス私立高校が沢山あるのよ。」倫子も何度か出張で行って北部の都会と田舎の南部の差に驚いた事がある。
「エッ、アメリカって自由の国じゃないの?」美沙が驚く。
「ああ〜、勘違いしないで。
どの国も階級とクラスがハッキリあるのよ。
日本は戦後アメリカが夢のように作った理想郷なの。
こんな自由で平等な国は他に無いから!地球上に!」
倫子が断言するので、秘密基地の若いメンバー皆が驚く。
「リアムも日本やハワイでのほほ〜んと育って、思春期に本国戻って挫折したのよ。ハーフの自分に居場所が無い事に。」倫子は少しリアムに同情してしまった。
その後、リアムは単身横浜の国立大学に入学。
情報系の会社を渡り歩いて起業したが、コロナで倒産してしまったらしい。
「そこからロマンス詐欺に手を染めたのね。頭も良いし国際感覚もあるのに勿体ないね〜」まだ30代、コロナでコケてもいくらでも再起できたろうに。




