牛刀
ザラ女の腹には穴が空いて中の内臓が見えてた。
真っ赤な血が顔面にまで達してた。
「何度も突き刺したんじゃなくて、刺し込んでグリグリと手首で回したんだよ。サバイバルナイフではなくて牛刀だと思われてる。」倫子にザラ女改めキサヤマの現場を聞かれて美沙が答える。
あまりに凄惨で記憶から消してた部分だが、リアムを久々見て記憶がフラッシュバックしてしまったようだ。
「思われるって?ナイフはどうしたの?」倫子が聞く。
「…それが、どこにも無かったんだよ。現場に。」美沙が気まずそうに話す。
「エッ!なんで?」倫子が驚く。
「オレが飛び込んだ時には、キサヤマがトイレに座った状態で死んでて、その前にリアムが立ってただけなんだ。確かに返り血で凄いし手も真っ赤だったが、刺したナイフか包丁が無かったんだよ。」訳が分からない。
「どこかに隠したの?」
「天井裏も捜したが、無かったよ。だいたい、あの血の量だから動けば血痕だらけになるはず。」
「………」何かトリックがあるはずだが、分からない。
「そうだ!防犯カメラ!トイレの手前が映ってるはず!」倫子が気がつく。
「手前に男子トイレでその次が多目的トイレ、最奥が女子トイレの入り口だった。
倫子さんも入るまで気付かなかったくらいだから、普通に男性も女性も出入りしてたよ。カメラの映像見ても。」美沙が残念そうに言う。
確かに倫子もトイレで試着しようとして手前の多目的トイレが空きマークになってたから開けたら、凄惨な現場が広がってたのだ。開けないでトイレだけ使えば気付かなかったはずだ。
「彼を捕まえないのは、それだけじゃないんだよね?
今日も捜査員らしい人が何人も彼に張り付いてた。
何を探してるの?待ってるの?」今まで聞いてなかった。
「今の状態で捕まえても、何も変わらないんだよ。
リアムが日本圏の責任者のはずだけど、彼を拘留してもロマンス詐欺が進行するんだよ。」美沙が苦々しく話す。
きっと初めに聞いても話してくれなかったかもしれない。
だが、今日リアムは明らかに倫子を狙ってた。
だから話してくれるのかもしれない。
「それって、他に仲間が、本当のリーダーが他に居るって事?」倫子が聞く。
「そうだよ。オレらは、そいつを炙り出すためにずっとリアムを張ってるのさ。」美沙の目がキラッと光った。
『ああ〜この人は警官なのだ。』と倫子は実感した。




