秘密基地
そこから倫子の動きは早かった。
役員経由で警察にAIの専門家集団を派遣させ、まさかのガラス張りの部長室に砦を作った。
外側の窓側なので社員の動きはこれまでと同じく見える。
どちらかと言うと前に押されて近くなった。
代わりに部長の後ろが壁になった状態だ。
そこに警察から派遣された技術者が私服で出入りする。もちろん身元は隠したままだ。
社員には、社内の秘密プロジェクトだと説明した。
実際に中に緑背景のスタジオを作り、後々通販スタジオにするつもりだ。
物産会社もネット社会に対応しなくてはいけない。
中ではAIで架空のキャリアウーマン達が大量に生成されインスタグラムを立ち上げて活動しだしたのだ。
指揮は美沙が執る。倫子のインスタを1日で1万人増やした力を買われたのだ。
そして、倫子の隣の部屋を美沙用に借りて貰った。
警察は社内より社外からの要請に柔軟に対応する組織だ。美沙の処遇は、協力者である倫子から要求した方が角が立たないのだ。
「お前、すっかり気に入られたんだなぁ〜」と上司にからかわれてた。
これで良い。
絶対警察のメンツを汚してはいけない。
労働組合が無いのも、国の治安を守る組織として仕方がないのだ。後は上司が頭が良いか悪いかの問題で…
男社会で長く生き残れたのは倫子が男のメンツを潰さないからだ。
しかし、それはプライベートで歴代彼氏のプライドをへし折って捨てゼリフばっかり吐かれて振られてきた歴史から学んだものだ。
集めた男達のインスタにコツコツと追跡装置とバグウィルスを送り込む。これは警察の方でホワイトハッカー集団が作業した。
「後は、日本責任者のアイツがどう動くかだな。」秘密基地の中では、すっかり男の美沙がまたアゴをさすってニヤニヤしてる。
「じゃ、また女性サンプル足りない時に来るね。」と倫子は秘密基地から出て執務デスクに戻る。
木村が扉を叩く。
「どうぞ…」倫子としてはイヤだが部下だから仕事の話なら聞かなくてはいけない。
「あのさあ〜この頃全然菊池さん、この防音室みたいな所から出てこないじゃん!
若いチャラい男が煩雑に出入りしてるし…心配だよ。」
なんかそれっぽく言ってるが、全く説得力が無い。
「若いのは先端技術者だからだし、菊池さんも若いし独身だし〜問題ないよ。
え〜と、そんな話しをしに来たの?仕事時間だよ?係長?」デスクを指で叩いてたしなめる。
「チッ!えらそうに!どうせ役員とやりまくって手に入れた地位だろうが!」木村が吐き捨てるように言う。
「録音しました。上に報告します。」美沙が倫子の携帯をかざして出てきた。
「あらあら、役員達もとんだ濡れ衣ね。
皆、神経尖らせて秘書すら全員男しか置かないのに〜」と座ったまま身体の向きを木村の方に向ける。
「オイッ、それは盗聴だろ!」美沙に木村が近づいたので足を出す。
綺麗にコケてくれた。
ガラス張りなのでフロア全員が見てる。
「はい、お返しします。」美沙は倫子に携帯を返す。
「私に向けられた言葉を私の携帯に収めただけよ。盗聴じゃなく誹謗中傷の証拠よ。」ジャケットの内ポケットに携帯を収めた。




