ティーバ・ラヴァンデリオの後悔 0
「聞いたか? ティーバ」
朝の授業前、僕は参考書を読んでいた顔を上げた。
いつも僕の周りにいる同級生達が今日も机に来て騒がしく話しかけてくる。
「何を?」
「今度うちのクラスに編入してくるやつ」
「“杖無し”なんだってよ」
「やばいよね」
「……ああ」
もちろん知っていた。
学校に多大な影響を持つ父の耳にはそういう話は早く入ってくるし、父がそのことで最近よく文句を口にしているのも聞いていた。
「どうする?」
ひとりが訊いてきた。
「どうするって?」
僕は訊き返す。
同級生達は僕を見つめていた。
「“杖無し”だろ? 編入してきたらティーバはどうするかなって」
「それは……」
父の、“杖無し”に対する冷たい言葉の数々。
“ラヴァンデリオ家の跡取はあなたですよ”と呪文のように繰り返す母方の親戚達。
弟のイルオンに愛おしげな目を向ける父と義母の姿。
綱渡りのような道を、踏み外すわけにはいかない。
「関わる気はないよ、僕は」
僕の返事に同級生達は顔を見合わせ、そっか、と笑う。やっぱり、だよな、などとも続けて聞こえた。
鐘が鳴ると共に教師がやってきた。
「早く席に着きなさい」と注意されながら、みんなはそれぞれの席に戻っていく。
その日もそうやって、いつものように授業が始まった。
どこと繋げることもできず、短いエピソードになりました。




