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腕や顔にできた痣は隠しきれないものがある。
清衣弥は美容室を辞めてはなかった。
常連のお客さんや同じ店で働く仲間たちからも指摘されて「実は···」と打ち明けることになった。
店長の助けなども借りて離婚の手続きが進められていった。
サロンのオーナーまでもが清衣弥の助けに入ることになってホストの男は渋々ながら離婚せざるを得なくなった。
オーナーが男が働く店の経営者に直接話をつけてくれたこともあって半ば強制的に離婚は成立した。
よくあるようなことで心配なことだったが、ホストの男は清衣弥にストーカー行為をするようなことはなかった。
それに関してはホスト店の経営者がホストの男に対してきつく釘を差してくれていたおかげだった。
離婚後はまた母親と暮らすことになった。
もう結婚はこりごりだと美容師としての腕を磨いていった。
32歳になった時に独立する夢を持つことになった。
美容師を目指した時から小さくてもいいから自分の店を持つことは考えていた。
美容師となって年月がすぎて年齢的にも独立するにはちょうどよい時期。
そう思えるのは当然の成り行きだ。
美容師をしているといろんなお客さんと接することになる。
そんな中から常連となる客もつくようになる。
その男性は年齢としては40代半ばほど。
接客中によく会話をしている。
そんな時に独立の話をしたことがあった。
独立するには開店資金が必要になる。
自力ですべての費用を出すことは無理だ。
銀行などに借りるなりじゃない限りは数千万円も用意できるわけがない。
独立したいのはやまやまだったが現実的ではなかった。
ただその男と話してる内に可能性が見えてきた。
男は融資コンサルという清衣弥にとってはあまり聞き慣れない仕事をしていた。
事業資金を必要とする人なりに対して融資が受けやすくなるようにサポートしてくれる専門家ということらしい。
仕事としてなのでもちろん無料というわけではない。
手数料の支払いは発生する。
清衣弥のようにズブの素人がやるよりも専門家のアドバイスを受けながら事業計画などを作成していったほうが最短で確実に融資を受けて独立できるだろうといった目論見があった。
清衣弥のような「経営」のノウハウがまったくない者にとっては頼もしい存在であった。
手取り足取り開業に向けて話を進めていくことになった。
自己資金なしで融資がおりることになった。
これもコンサルに任せたおかげだ。
10坪の美容室で物件取得費、内外装工事費、材料費、設備機器などで総額2,700万円。
清衣弥にとっては大金だ。
これでも立地を考えればかなり安くあがったらしい。
この借金に利息をつけて返済しなければならない。
長期になると4,000万円くらいになってしまうのか?
なるべく早く返済したい。