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高校は1校だけ合格できたスベリ止め校に進んだ。
良くもなく悪くもない3年間だった。
美人でもなく可愛くもないと自分で認めている。
それでも共学だったのでギリで楽しさもあった。
高校卒業後は美容師になるために専門学校に進んだ。
大学進学はしたかったのだが経済的理由で断念している。
そのため受験勉強は初めっからしてない。
2年間の学費として約300万円は奨学金を利用した。
収入を手にするようになれば返していかなければならない。
この時はまだ甘く考えていて何年かかっても返せるものだと思っていた。
20歳になってから美容室勤務で就職できた。
数店舗を運営している比較的大きなサロンに決まったのは良かった。
美容師の国家試験は在学中に合格できていたのでアシスタントとしてのスタートになった。
新人では実際に客の髪には触れることができない。
受付や会計、施術道具の準備や洗浄、店内清掃や雑用などの仕事からになる。
年収としては200万円弱ほど。
清衣弥の場合は実家から通勤できているので生活はできている。
奨学金も返していけるしなんとかなっている。
これが独り暮らしだったら自分の生活そのものが厳しいものであっただろう。
実家といっても母親と2人でのアパート暮らしだ。
両親は離婚して清衣弥は母親と一緒だ。
妹は父親と生活している。
経済力となると会社員である父親のほうが安定している。
大手建設会社のグループ企業の建設エンジニアなので会社員としての年収は平均よりは高いほうだったんじゃないだろうか?
妹は大学進学までできているので経済的にはなかなか良かったんじゃないかと思う。
母親は特に資格を持ってるとかなにができるっていうわけでもなかったのでクリーニング店のチェーン店での契約社員として働いていた。
月に20万円くらいの収入にはなる。
なんらかの就業経験もない母親にとってはまぁまぁ良いほうだったはず。
母娘2人で細々と暮らしていく分には生活はできていた。
清衣弥は入社前に美容師としての資格を持っていたこともあってスタイリストに昇格するのは早かった。
2年ちょっとで雑用係からやっと客の髪にハサミを入れることができるようになった。
それから1年ほどは順調だった。
清衣弥にも固定客がつき始めていた。
そんな中の1人でイケメン男子がいた。
年齢的にもそれほど離れてなくて話があった。
というか相手の会話なんかが上手くて引き寄せられていくのには時間がかからなかった。
外見的にも一般の会社員などではないということは初めからわかっていた。
後でわかったことで薄々は感じていたがその男はホストだった。
店の売上ランキングではベスト5位内には入っていて優しい雰囲気もあって人気は安定していた。
どういうわけだかそのホストと交際が始まってすんなりと結婚してしまった。
清衣弥は24歳になっていた。
楽しいと思えた結婚生活はせいぜい半年ほどでしかなかった。
ホストをやっていて不平や不満などストレスのはけ口かもしれなかったがDVに悩まされることになっていった。