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「お待たせ〜じゃ、やっと神様になれた。
703回目の受験でやっとじゃよ。
長かったような短かったような···」
神様は独りで感慨にふけっておられる。
その姿はぜんぜん変わってない。
波平ヘアーに鼻毛もチョロリンとしっかりある。
「あっ、あぁ、あなたは神様···お久しぶりです」
「うむうむ、む〜?
なんか、お嬢ちゃん、すっかり様変わりしたのう。
人間界では長い時間がすぎたのか···」
「そ、そうですね。
あれから···中学3年生でしたから60年···
64年ぶりですか」
「ほぅ、そうかね···」
神様には64年といってもピンときてないようだ。
神様の世界と人間界では時間の流れや概念が違っている。
それもあって清衣弥の容姿の劇的な変化には驚きがあった。
ちょっと見ない間に人間ってこんなに大きく変わるもんなんだなと。
「え〜っと、それで今日はどうしたんですか?」
「おぅ、そうじゃった。
約束だよ。
むか〜しの約束を果たしにきた。
神様となって初めての願い事対応でもある。
普通はやらないんじゃが、なんと3つのお願いを叶えてやろうと思ってな。
特別じゃよ、特別」
お嬢ちゃんが生きてる間に間に合って良かったよと言って、どうじゃといばっている。
703浪もして神様になれたのに。
でもこれが普通だったりして?
「へ〜律儀に覚えてたんですね。
あたしなんかすっかり忘れておりました」
「そうかい、そうかい、まぁ、この世界では長かったんじゃろうな。
それよりもお嬢ちゃんのその疲れきったような顔。
いったいなにがあった?」
あぁ、そうかもしれないと清衣弥は思った。
あの頃はまだ15歳。
怖いものなどないってキラキラしてた時代のあの頃。
あれから64年。
幸せなことが少なかった。
苦労の連続の人生だった。