第1話「凡人認定、俺」
何気なく描いてみたかったのを描いてみました
「逗子悠翔、三軍確定だな」
湘陽高校1年C組の男子が、教室の隅でひそひそ話している。
湘南の海が近い、オシャレで開放的な雰囲気のこの学校では、いつの間にか“スクールカースト”が存在していた。
一軍:陽キャ、イケメン、スポーツ万能。
二軍:その周囲でうまく立ち回るやつら。
三軍:それ以外──つまり、俺みたいなやつ。
俺の名前は逗子悠翔。
地味で目立たず、体育は中の下、会話力はほぼゼロ。
入学して三週間、周囲に溶け込める気配は一切なし。友達もゼロだ。
ただ、ひとつだけ他の連中と違うのは――
IQがちょっとだけ高いこと。
中学の頃、担任が紹介してくれた心理学サイトで受けた簡易検査で、IQ162という数字が出た。
もちろん正確性は怪しい。でもそれ以降、俺は人間観察にハマった。
表情、声のトーン、仕草、視線の動き……
そういった“情報”を読み取ることが、無意識にクセになっている。
けれどそんな特技、表で言えばただの“キモい奴”扱いされるのがオチだ。
だから俺は、平凡を装って過ごすことにした。
その日、事件の“芽”が静かに動き出したのは、放課後の下駄箱だった。
湘陽高校の下駄箱は一階、校舎の端っこにある。
そこに向かう途中、俺はふと立ち止まった。
目の前で、二年の女子が男子に告白している。
「……無理だな、あれは」
小声でつぶやいた、つもりだった。
けれどその後ろに、気配があった。
「え? どうしてそう思うの?」
声をかけてきたのは、鎌倉ほのか(かまくら ほのか)。
クラスの女子で、地味でも派手でもない、けれど妙に雰囲気のある子だった。
「あ、いや……その先輩、笑ってるけど目が笑ってないし、手の動きも落ち着きなくて……。
親指をこする癖、緊張や拒絶のサインって心理学でよく言われてるんだ。あと、足が一歩だけ後ろに下がってるから――」
「……すご」
「いや、ただのクセなんだよ、観察というか、そういうの好きなだけで」
「ううん、そういうの、面白いと思う。ちょっと探偵みたいだね」
その言葉を残して、ほのかは先に昇降口を出ていった。
……もちろん、翌日から何かが大きく変わることはなかった。
俺の席は相変わらず教室の後ろ端、話しかけてくる人間もいない。
だが放課後。
クラスの男子たちが戸塚駅前の小さな喫茶店に集まっているとき、偶然通りかかった俺に、**茅ヶ崎隼人**が声をかけた。
「おい逗子、ちょっといいか?」
戸塚の駅前は放課後の高校生のたまり場だ。
「なんかさ、お前……昨日のやつ、当たってたんだってな」
「え?」
「例の二年の先輩、あの子にやんわり断ってたって、ほのかが言ってた。
“逗子くん、すごい観察眼持ってるんだよ”って」
……あの一言が、こんな形で人に伝わるとは思わなかった。
茅ヶ崎は、俺の顔をまじまじと見て、こう言った。
「もしかしてお前、なんか隠してんのか? もしかして“頭いい系男子”?……ってか、占い師とかか?」
「いや、違うから!」
このときはまだ、冗談だと思って笑い飛ばせた。
でも、この何気ない会話と、**たった一人の“目撃者”**によって、
俺の学園生活は、ほんの少しだけ方向を変え始めていた。
どんな感想でも有り難いし、方向性も指摘があればお願い致します