パチモン催眠アプリを使ったら、幼馴染がスカートをたくし上げた。
「……確認だ。あくまで確認のためだからな」
とある平日の朝。
俺の部屋には、俺を起こしに来た幼馴染である佐々木恵理の姿があった。
栗色のツインテールに、くるりとした瞳が魅力的で、クラスでも一番人気の女の子だったりする。
俺はそんな女の子に向けて、スマホのアプリを起動させてその画面を見せつけていた。
そのアプリとは、『催眠アプリ』。
こんなフリーでインストールできる評価も高くないアプリが効くわけがない。それは俺だって分かっている。
だから、ただの悪ふざけで使ってみたのだ。
それがどうしてこうなった?
「……スカート、たくし上げてみてくれないか?」
俺がスマホアプリを見せつけながらそんなことを言うと、恵理は体を小さくぴくんとさせた。
それから少しして、ゆっくりと両手の指の先がスカートの裾に向かって行き、小さく裾の部分を摘まんだ。
恵理は先程まで赤かった顔を数段階も赤くさせて、微かに瞳を潤ませているように見えた。
それから、ゆっくりとスカートの裾が持ち上げられていき、普段隠れている部分が徐々に露になっていった。
程よく引き締まって、白くて滑らかな肌触りがよさそうな太もも。
太ももと表現するには、あまりにも女性を感じ過ぎる内もものラインと、お尻の方に向かう近づく外のライン。
そんな普段露にならない部分が恵理の手によって、露になっていく
俺はその光景を前に、思わず生唾を呑み込んで見入っていた。
そして、恵理は俺に純白下着を見せつけるように、スカートの裾をたくし上げた。
内ももが下着の方に向かって収束していくラインと、パンツの下にできている微かなシワ。
そのシワが今見ている景色が本物なのだと告げてきているようで、俺はそのシワとその先にあるであろう景色を透視でもするかのようにじっと見入っていた。
「っ」
俺は胸の奥の方にある熱い何かを沸々とさせられて、気がつくと結構な至近距離まで寄っていた。
俺はそのまま距離を離さず、しばらくの間パンツと至近距離で向かい合っていた。
これだけ見られても、何も反撃をしようとしない。
そうなると、考えられる答えは一つ。
この催眠アプリ、本物だ!!
俺は初めて手にした本物の催眠アプリと、目の前に広がる幼馴染のパンツを見て興奮を隠せないでいた。
しかし、すぐに問題が発生する。
学校で他の子たちに催眠アプリを使おうとしたのだが、ことごとく失敗に終わった。
しかし、すぐに俺は一つの可能性を導き出すのだった。
俺は家に帰るなり、ご飯を作ってくれている恵理をリビングに呼んで、催眠アプリを使ってスカートをたくし上げさせていた。
今回はたくし上げの位置が少し低かったせいか、パンツを拝むことはできなかった。
いや、今回はパンツを見るためにたくし上げさせたのではないし、問題ない。
「やはりか……」
恵理の態度を見て、俺の中の疑惑が一気に確信に変わったのだった。
ある日、私の幼馴染が馬鹿なことを言ってきた。
「恵理、これを見るんだ!」
「なにそれ?」
啓介くんはそう言うと、私にスマホの画面を見せてきた。
「これは催眠アプリ。これを見た物は、このアプリを見せている人の命令を何でも聞いてしまうのだ!」
「なんでも?」
「そう、なんでもだ! さぁ、恵理よ。『今日履いているパンツの色を答えるんだ』!」
……どうやら、私の幼馴染は私が思っている上に馬鹿らしい。
まぁ、やけにノリノリな感じから何となく察してはいたけど、彼なりのボケなのだろう。
適当にツッコんで、早く朝ご飯の支度をしないと。
……。
そこまで考えて、私は少しの悪知恵が働いてしまった。
ここで普通にツッコミを入れても面白くない。
それなら、少しだけノってあげてからツッコミを入れた方が面白そうだ。それに、もしかしたら、啓介くんの面白い顔が見れるかもしれないし。
まぁ、少し恥ずかしさはあるけど、パンツの色を言うくらいならいいかな。
今日のパンツの色、確か今日履いているのはーー
「……白」
「え?」
「だから……今日は、白色のパンツ履いてる」
「え、マジで?」
「……まじで」
私がそう返答すると、啓介くんは目をぱちくりとさせた後に、何かを本気で考えこんでいた。
えー、幼馴染のパンツの色を聞いておいて、そんなに考えこむことないでしょ。
もっと面白い反応して欲しかったなぁ。
啓介くん、本気で私のパンツを見ても何も思わないのかな?
いや、分かってはいたんだけど、なんか複雑な気持ちになってしまう。
「……確認だ。あくまで確認のためだからな」
啓介くんは独り言を漏らした後、小さく咳ばらいを一つして、真面目なトーンで言葉を続けた。
「……スカート、たくし上げてみてくれないか?」
催眠アプリをこちらに見せつけながら、啓介くんはやけに真面目な顔でそんな言葉を口にした。
え? ん? んんんんん???
今、何て言った? スカートをたくし上げろ? 過去に私のパンツを見てもなんとも思わないとか言っていたくせに?!
じぃっと私のスカートの裾に視線が向けられている。
多分、啓介くんから初めて向けられたかもしれない、性的な物を見るような視線。
もしかしたら、啓介くんは私のパンツを見ても何も思わないなんてことはないのかもしれない。
でも、それは今の時点ではただの想像でしかない。
それを確信に変えるためにはーー。
私は啓介くんから向けられる熱い視線に促されるように、ゆっくりと両手の指の先でスカートの裾を摘まんだ。
なんかいけないことをしているみたいで、鼓動が少しずつうるさくなっていくのが分かった。
体の熱さと胸の奥の方にあるよく分からない感情から目を逸らすように、私はそっと啓介くんから視線を逸らしていた。
ゆっくりとスカートの裾を持ち上げていくと、普段スカートで隠している部分が徐々に露になっていった。
ちらりと啓介くんの方を見ると、なんか体を前かがみにして本気で見入っていた。
……私のパンツを見てもなんとも思わないんじゃなかったの?
そして、気がつけばもうすぐパンツが見えるくらいまでスカートをたくし上げていた。
そこでピタリと手を止めたけど、啓介くんの視線は私のスカートの裾と太ももに釘付け。
……ここまで来たら、確かめないわけにはいかない。
そう思った私は、もう少しだけスカートの裾をたくし上げた。
「おぉっ」
そして、スカートをたくし上げて、パンツを露にした私の姿を見た啓介くんは、なんか感動したみたいな声を漏らしていた。
いやいや、見過ぎ! 見過ぎだから! え、ちょっと、なんで近づいてーー
「っ」
不意に吹きかけられた鼻息を前に、私は変な声を漏らしてしまっていた。
普段出したことのないような声を上げた私を見上げた啓介くんは、少しだけ考えた後、何故かさらに近づいてきた。
興奮したような熱い鼻息が吹きかけられて、くすぐったくて変な感じがする。
す、すぐに終わるよね?
でも、それはすぐには終わらなくて、十五分後くらいに啓介くんのスマホのアラームが鳴るまで続いた。
……朝からこんな、どうしてくれんの、ほんと。
私はアラームの音を聞いて、催眠を解除されたフリをした後、急いで朝ご飯の支度をすることになった。
私は少しだけ脚をもじりとさせて、それに気づかないフリをして、熱くなった体を冷ますのだった。
放課後。私は家に帰って荷物だけ置くと、いつものように啓介くんの家に上がって夕食を作っていた。
「恵理、ちょっといいか?」
「んー、なに?」
私は夕飯の支度を程々にして、エプロンを外してリビングに向かうと、啓介くんが立ち上がった。
そして、その手にはスマホがあって例の催眠アプリを開いていた。
ま、またやる気なんだ。
「スカートをたくし上げてみてくれ」
……またパンツ見ようとする。
私は朝と同じようにスカートを指の先で摘まんで、パンツを見せない程度にスカートの裾をたくし上げた。
あんまり安易にパンツを見せちゃうと、この後ネタ晴らしをした時に私の方も恥ずかしくなりそうだし。
じゃあ、そろそろネタ晴らしをしますか。
「やはりか……」
私が口を開こうとしたタイミングで、啓介くんは何か確信を持ったように大きく頷いた。
「このアプリ、恵理にだけ効くんだ。もしかしたら、恵理がからかっているだけかと思ったが、からかうためだけに二回もスカートをたくし上げたりはしないよな。そんなことしてたら、ただの変態だもんな」
ん? あ、あれ? 変態? わ、私が?
「さすがに、幼馴染と言っても、変態だと思うのは失礼だよな。焦ったぜ、操られでもしてないのに、パンツを自分から見せたりしないよ。もし違ったら、度し難い変態ってことになるもんな」
え、うそ、まってまって、この流れマズくない?!
私が実は操られてないってバレたら、私が変態ってことになるの?
確かに、やり過ぎちゃったのは認めるけど、このままじゃ私は本当に啓介くんの言いなりになっちゃうってこと?!
私が変態だと思われないためには、催眠にかかったフリをし続けなければならない。
ただの幼馴染だった私達の関係は、そんな少しだけえっちな関係に変わっていくことになるのだった。
それからしばらく間、俺は幼馴染の恵理に色々とえっちな命令をしたのだった。
その結果……最近、幼馴染の恵理のことを見る目が完全に変わってしまっていた。
恵理のことを異性として意識して、女の子として見ている。
けど、これは恋心なのだろうか?
性欲と恋愛感情の違い。それについては未だに俺は分からないらしかった。
「啓介くん」
「お、おう、恵理」
いつの間にか帰りのホームルームは終わっていて、いつも通り恵理は俺の机まで来ていた。
栗色のツインテールをぴょこんと揺らして、少し色っぽい瞳をこちらに向けてーーん? 色っぽい?
やばいな。一瞬、普段俺に催眠をかけている恵理の姿に引っ張られて、普段の学校での恵理の瞳を見て、色っぽいとか思いそうになってしまった。
「じゃあ、帰るか」
「えっと、先に帰っててもらってもいい?」
「ん? 何かあるのか?」
「ちょっと……呼ばれちゃってね」
申し訳なさそう顔をして頬を掻く表情を見て、なんとなく恵理の用事について察しがついた。
「告白か?」
「……うん、多分そういう感じだと思う」
ここまではいつも通り。恵理は結構人気のある女の子だから、こうして男子に告白されることも珍しくはない。
だから、基本的にこういうときは俺は先に帰ることになっているのだ。
『そっか。じゃあ、先に帰ってるわ』
大抵そんな言葉を残して、俺は一人で帰路につく。今日もそんなふうにいつも通りの言葉を口にしようとしてーー
「告白をオーケーしたりはしないんだよな?」
「え、えとっ、多分」
恵理は目をぱちくりとさせた後、俺からの視線を受けてくるりと俺に背を向けてそんな言葉を口にした。
「それじゃあ、行ってくる」
「お、おう」
恵理はそう言い残すと、こちらを振り返ることなく教室を後にした。
……あれ? なんで俺はあんなことを言ったんだ?
「……び、びっくりした」
教室を出て体育館裏まで向かう道中、私は大きくなってしまった心臓の音を落ち着かせようと必死だった。
『付き合いはしないんだよな?』
いつもはそんなことを気にしないのに、啓介くん少し不安そうな顔をしていた。
か、完全に私のことを意識している。それも結構強めに。
顔にやけてなかったよね? 赤くなったのもバレてないよね?
あの返答の感じからすると、誰かに私を取られたくないとは思うみたいだ。
これも今まで馬鹿でえっちな催眠アプリに付き合ってあげたおかげだ……それなら、私の昨日までの結構変態的な行為も許される。
そう、ここまで意識するようにさせたのだから、むしろ称賛に値する行為だ。
……~~っ!!
そんなことを考えた私は、少しだけトイレの個室で体の熱を冷ましてから、体育館の裏へと向かったのだった。
困った。
『――っていうことだから、誰とも行かないなら、俺と一緒に行って欲しい!! 思い出作りでもいいから、この通り!!』
告白は断ったんだけど、それならデートだけでもと少し強引に押し切られそうになってしまった。
また明日にでも断りに行かないとかなと思うと、少しだけ気が重くもなる。
啓介くんはもう家に着いたかなと思いながら、校門を取り抜けるとーーそこには啓介くんの姿があった。
「え? 啓介くん?」
「お、おう」
「なんでここに?」
「告白、されてきたんだよな?」
聞かずにはいられなかったようで、うずうずしながら私の返答を待つ啓介くんの表情。
そんな表情を向けられて、胸の奥の方が小さく跳ねた気がした。
「うん。告白だったんだけど、そこからデートのお誘いに変わった感じ、かな?」
「デート?」
「来週、お祭りあるでしょ? それ一緒に行かないかって。付き合わないでもいいから、思い出だけ欲しいって」
「……いくのか?」
もちろん、また後で断りに行くはずだった。
でも、本気で心配するような声色を前に、少しだけ悪知恵が働いてしまった。
「どうだろ? べつに、予定があるわけでもないし、他の誰かに誘われてるわけでもないしね」
「別に、無理していかなくてもいいんじゃないか?」
「無理はしてないよ。お祭りに興味がないわけでもないし、たまにはそういうのも悪くないのかなって」
私がそう言うと、啓介くんは少しだけ黙ってしまっていた。
ただ止めて欲しいと思って言ったけど、啓介くんが自分の気持ちに悩んでいたということも知っていた。
だから、私は少しだけ意味ありげな言葉で助け舟を出すことにした。
「……催眠でも何でも使って、それを止めてくれる人がいれば、話は別かもしれないけど」
啓介くんは私が言っていることに気づいたのか、ハッとして後にポケットに手を入れた。
そう、私に言うことを聞かせたければ、催眠アプリを使えばいいのだ。
だって、私は啓介くんの中では催眠にかかっていると思われているのだから。
「――夏祭り、俺と一緒に行って欲しい」
だから、催眠アプリを使うのは自然な流れだと思う。それでも、何かに頼ってでも私を止めてくれたというだけで、今は十分――
「え?」
今はそれで十分なはずだった。
それなのに、啓介くんの手にはスマホが握られていなかった。
「えっと、なんで?」
なんで催眠アプリ使ってないの?
状況的に催眠アプリを使うのが自然な流れだと思っていたので、私はなんで催眠アプリを使わなかったのかを問いていた。
すると、啓介くんは真剣な目で私を見つめてから、言葉を漏らした。
「正直、最近恵理のことをエロい目で見始めている自分がいる」
「え? ……え?!」
「ただそれが恵理のことを気になるからエロい目で見てるのか、エロい目で見てるから恵理のことを気になり始めてるのか、正直分からないんだ」
白昼堂々、啓介くんは学校の通学路でそんな言葉を口にした。
当然、私達の他にも下校中の生徒はいるし、主婦みたいな女性や会社帰りのサラリーマン風の男性も通っている。
「でも、これだけは言える。他の奴にエロいことをして欲しくないし、えっちな所は俺にだけ見せて欲しーー」
「わ、分かったから! ちょっと黙ろうか、啓介くん!」
私は周囲の人々の目に耐えられなくなって、慌てるように啓介くんの口を手で強く塞いだ。
「な、なんで、そんなえっちな話になったのかな?」
「いや、だって『そういうのも悪くない』って」
「『そういうのも悪くない』……そ、そういう意味じゃないから?!」
どうやら、啓介くんは私の言葉を変な意味合いで受け取っていたらしい。
多分、火遊び的なのをするのも悪くないかな的な感じで受け取ったのだ。
いや、普通そんな勘違いする?!
啓介くんの中の私って、そんな変態な認識なの?! そんな素振り見せたこともーーなくはないのか。
ここ最近、啓介くんに色々とえっちな私を見せるようなことをしてしまっていた。
けど、それは啓介くんだからであって、誰でもいいってわけじゃないに……。
「……もっと、普通に誘って」
少しだけ自業自得であることを分かっていながら、私は不貞腐れたようにそんな言葉を口にした。
すると、啓介くんは少しだけ照れるようにしながら、私をじっと見つめてきた。
「えっと、他の奴じゃなくて、俺と一緒に夏祭りに行って欲しい」
「んっ、分かった。あとで誘ってきた男の子には断っておくから」
見つめ合ったのは少しだけ。
なんとも言えない甘い空気か恥ずかしくなって、私達は互いに視線を逸らした。
……なんか、少しだけ変な感じだ。
そんなことを考えながら、私は確かに胸をときめかせていたみたいだった。
「恵理、なんか笑ってる?」
「わ、笑ってないから?! 幼馴染にえっちな目で見られてるって言われて、喜んでたら私変態みたいじゃん!」
私は緩まってしまった顔を誤魔化すように、啓介くんの前を歩いた。
そして、振り向きざまに抑えが効かなくなった頬を緩ませたまま言葉を続けた。
「浴衣着てくからさ、楽しみにしててね」
「……おう」
こうして、私達の関係は少しだけ変わったのだった。
今までの何でもない幼馴染から、少しだけ意識をしてしまうような関係に。
多分、夏祭りに行った後、私達の関係はもっと変わっているのだろう。
それこそ、催眠アプリなどなくとも、お互いに素直になれるような関係に。
そんなことを私は胸の中で静かに思うのだった。
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