親不知を抜歯した時の話
私が親不知を抜いたのは二十代前半の頃です。最初に抜いたのは右上奥でした。
私は歯並びが悪く、曲がって生えてる、と言われ…かかりつけの歯科医院では抜けず、歯科口腔外科のある病院に行く羽目になりました。
で、そこでレントゲンを見せて貰って、自分でも呆れかえるくらい、ぐんにゃり曲がって生えてるのを、目の当たりにした時、『おいおい…』となりました。私の歯よ…。
で、まぁ、局所麻酔で抜きましょう。となり。
いよいよ抜歯の日。
イソジンうがいをし、顔に布を被せられ、開始。
端的に表現するなら、口の中で工事が行われてるような音と振動。
麻酔のおかげで痛みはない。
で、余計な思考に襲われる。
『いま、地震が来て、先生の手元が狂ったら、口の中ぐっちゃぐちゃになるわ…』などと考え…震える。
色々考えてるうちに終了。
布を噛ませられる。
「血が止まるまで噛んでてくださいね」で、サラッと怖い事言われた。
「骨削ったんで、ちょっと止まらないかもしれませんねー」
そうして抜いた歯を見せてもらう。
「四つに割って抜きました」
そこには果たして、ぐんにゃり曲がった歯根付きのバラバラになった歯…。複雑な気持ちになりながら、一応(?)受け取って…。
代金を払い、帰宅しようとしてのですが…心配性の母が(わざわざ来た…)「ちょっと病院にいよう」と言うので待機。
血が…うーん、二時間くらいで止まるって言われたのに止まらない。
更に三十分待ってみる。止まらない。
仕方ない、と受付に行く。
「先生まだいるんで、ちょっと診て貰いましょうか」となり、再び診察室へ。
「あー、これは止まらないかもね。でも大丈夫」と言われ…帰宅。
しばらく布を噛んでいたんですが、やっとこさ止まった。ので、液状のカロリーメイトをストローで啜る。
そうして痛み止めを飲んで、さっさと就寝。
次の日の朝。
膨れた右頬と、布団に血溜まり。
母は特に怒りもせず、「大丈夫か?」
「んー、大丈夫」
でカロリーメイトを妖怪のように啜り、痛み止めを飲む。
ちなみに仕事は念の為、休み取ってました。
で、無事、経過も良好で治癒。
喜んでいた私は『もう抜歯はこりごりだ』と思っていたのですが…。
それから二年くらい経った頃。
定期検診でかかりつけの歯科医院に行った時。
「気になる事はありますか?」
「あー、最近こっちの歯にものが引っかかるんです」
…。
「あー、親不知、こっちも生えてきてるね。下も生えてきてるね」
ゴーン。
というわけで。
今度は歯科口腔外科に一晩泊まって(入院)一気に三本(左上、下左右)抜く羽目になったのです…。
病院の方には「一気に四本抜く方もいますから…」と言われたのですが、『はぁ、そうですか…』な気分。
人は人、うちはうち。
で、入院の日。
病院に早めに入り、待機。
そのうち、時間が来た。
全身麻酔のはずなのに、緊張のせいか、ちっとも眠くならない。
首を捻る看護師さん。
「触ってます。感覚ありますか?」
「ないです」
なら大丈夫、と手術室へ。
何故か倖田來未が流れている。
『何故、倖田來未?何故、音楽?』
疑問に思っている間に、イソジンうがいをし、顔に布を被せられる。
そうして再び…ぐいぐい引っ張られる感覚。で会話が聞こえる。
「はい、そこでてこの原理で…」
…。えーと、研修医の方が抜いてるな?事前に言ってくれよ…と思いつつ、大人しくしてると、ちょっとボーッとなってきた。
そこから記憶が薄い。
無事に抜歯が終わり、病室に戻りました。
母、現れる。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
みたいな会話をして、母、帰宅。
私は液体状の栄養剤を出され、それをストローで飲んで、処方されたカロナールを飲んで、うがいをし、就寝。ちなみに点滴で抗生剤打ちました。
次の日の朝。検温。熱なし。薬飲んでるからなぁ…。
刻み食なる、細かく切り刻まれたおかずとお粥が出され、ゆっくり食べる。薬を飲み、うがいをし、診察へ。
「うん、いいね」
というわけで。
昼過ぎ、退院。
再びカロリーメイトをストローで啜る。
母が気を使って、お粥を(ちりめんじゃこやら、色々入れて)作ってくれた。ありがたかったです。
腫れが引くまで、念の為、仕事を休ませて貰いました。
こうして私は親不知を四本抜いた女になったのです。
結論・歯は大切に!