やっぱむずいな。
「やっぱり、あんまり上手くできないや。」
「そう?結構いい感じだったよ?」
「お世辞はいいよ、ずっとピアノやってた優子と比べたら下手なのは事実だし。」
「別にピアノが下手でもいい曲はかけるし、実際いい曲だったと思うよ?」
「でもいい曲を書くにしても色々勉強しないとダメなんじゃないか?」
「そんなことないよ、私が今教えたドレミファソラシだけ作った曲でも有名な曲ってたくさんあるよ?」
「へー、例えばどんな曲があるの?」
「えっとねー。」
優子はそう言いながら徐にキーボードを奏でた。その曲はとても聴き馴染みのある曲だった。
「これは確か...」
「きらきら星だよ。」
「なるほど、確かにこの曲は白鍵だけ使ってるな。」
「他にもチューリップも白鍵だけで弾けるし、探してみたら意外とあるよ。」
「確かに、言われてみると結構あるのかも。」
「それにドレミファソラシはれっきとしたスケールだからね。」
「さっきから言ってるそのスケールってなんなの?」
「スケールっていうのは音階のことだよ。」
「音階?」
「そう、音階ていうのは決められた順番で音を並べることだよ。その音階通りに弾くと不協和音とかほとんど出ないんだ。あ、不協和音はなんか耳障りな音のことだよ。」
「いや、それはわかる。」
「そっかーあおは頭いいもんねー。へへへ、普段勉強教えてもらってるのに今は逆の立場でなんか楽しいや。」
「どうせまた夏休みの宿題終わらなくて私にせっつくんだろ?」
「よろしくね!あお!」
「ちょっとは自分でやらんかい。」
「まぁいいじゃん?今はこの曲の続き作ろ?」
「へ?これで完成なんじゃないのか?」
「そんなわけないじゃん!!やるよ!」
それから夕食まで一緒に曲作りを楽しんだ。
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優子視点
あおが私がプレゼントした鍵盤を慣れない手つきで鍵盤を触っている横顔を眺めていた。
私の視線も気にならないほど夢中になっていて自然と私も笑顔になってしまう。
「なあ優子、ドとミとソ以外も使っていいか?」
「もちろんだよ!好きなようにやっちゃいな!」
「よし、分かった。」
「さっきまで乗り気じゃなかったのに、楽しくなってきたの?」
「う、うるさい。」
あおは少しからかってやるといつも少し拗ねたような顔をする、その顔がなんだか可愛くてついまたからかってしまう。
前世では知ることができなかったあおの可愛いところや、かっこいいところを知るたびに私が命をかけてやったことは間違いではなかったんだと感じていた。