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優子とあお  作者: べる
4/7

秘密基地

 私たちは早速雑巾と箒を持って秘密基地へと向かった。


「一応お母さんがたまに掃除してくれてたみたいだからそこまで汚くないと思うよ。」

「そうか、優子の母上に後でお礼を言っておかないといけないな。」

「ねぇ、なんで自分のお母さんは普通にお母さんって呼ぶのに、他の家のお母さんは母上って呼ぶの?」

「最初はお母さんのことも母上と呼んでいたんだが、お母さんって呼んでほしいと言われたんだ。」

「そうなんだ。でもなんで母上じゃなくてお母さんって呼んで欲しかったんだろう?」

「その方が可愛いかららしい。本当はママと呼んでほしいみたいだが、それは私が恥ずかしいから断った。」

「そうなんだ。でもあおってママって呼んでそう。」

「なんでだ?」

「内緒。」


優子はにやにやしながらそう言った。きっと多分にバカにした意味を含ませているのだろうことは痛いほどに伝わってきたが、私から触れたら負けな気がしたからスルーした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


秘密基地にはすぐに到着した。優子の家の裏庭にある大きな木が目印で、その下にテントを張っているだけの簡単な作りだ。


「ついたねー。」

「やっぱり秘密基地っぽくなないよな。」

「だからいいんだよ。逆に秘密基地っぽい見た目にしたら見つかったときすぐに秘密基地だってバレちゃうじゃない。」

「まぁ、そういうもんか。」

「そうだよ。」


前世で軍事基地で実際に過ごしたことのある私にとってはこんなの基地には全く見えなかったし、そもそもなんのための基地なのかもよく分かっていなかったが、それでも毎年優子とここの掃除をしたり遊んだりしているとだんだんこの場所が好きになっていた。


「まぁ、とりあえず掃除するか。」

「そうだね、お昼までには終わらせよう。」


私たちは掃除に取り掛かった。私はテントに入り込んでしまった砂や葉を箒で吐き出し、優子は簡易テーブルを雑巾で拭いていた。


「この秘密基地作ったのいつだっけ。」

「えーっと、確か三年生くらいじゃなかった?」

「そうか、そんな前だったんだな。」

「そうだねー私たちもう中学生になるんだもんね。」

「中学生かぁ。」


私にとって、何不自由なく学校に通えていることも、こうやって友達と一緒にのんびり過ごしているこの時間も全てが前世で経験したことのない初めての経験で、とても幸せなことだと思っていた。


でも、だからこそ中学に進級するのが少し不安だった。そりゃ優子も一緒だしついでにかいもいるから人間関係が大きく変化するわけではないと思う。けれど、少し大人に近づいてしまうのがなんだか怖かった。


「優子は中学生になるの楽しみ?」

「うーん、まぁ楽しみかな?制服とか可愛いし。」

「あ、そんな理由?」

「うん、正直中学校で何かやりたいことあるのかって言われたら、特にないし。」

「そうなのか。」

「うん、でもね。」


優子は雑巾を握りしめながら笑顔でいった。


「あおとやりたいことはたくさんあるよ!今日のお昼から、楽しみにしといてね!」

「...?どういうことだ?」

「ないしょー。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


掃除を終え、家に戻ると優子のお母さんがご飯を作って待ってくれていた。


「お掃除お疲れ様、そうめん湯掻いてるよー。」

「わーいそうめん!!」

「ありがとうございます。」


優子の家で遊ぶとき、そうめんをご馳走になるのは毎年恒例になっていた。

氷水につけられたそうめんとひんやりとしたつゆ、そして大きなお皿に錦糸卵や細長く切られたハムときゅうりが彩りよく並んでいた。


「「いただきます。」」

「はーい、おかわりもあるから遠慮なくいってね。」


優子のお母さんは優しくそう言った。そうめんはやはり美味かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


そうめんを食べ終えた私たちは、優子の部屋に移動していた。


「で、お昼から楽しみにしとけって言ってたが、一体なんなんだ?」

「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた。まずはあおに渡したいものがあるのだよ。今とってくるからちょっと待ってくれたまえ。」


優子はそういうと部屋を飛び出して行った。


「なんか変なテンションになってるな。」


私は部屋に一人取り残されてしまい、手持ち無沙汰になってしまった。

早く来ないかなーなんて考えながら部屋を見回してみる。


優子の部屋はとても広い、今はもう慣れてしまったが初めてきた時は緊張したものだ。

勉強机とベットがあって、ぬいぐるみがいっぱい飾ってある。本当に女子な部屋だ。


その中で一際目立つものがあった。それはピアノだ。

私は立ち上がって優子のピアノの蓋を撫でる。


「また聞いてみたいなぁ、優子のピアノ。」


なんて独り言を呟いていると。


「お待たせ!!!」


と、優子が大きな荷物を抱えて帰ってきた。

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