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【13才】《夢の記憶の仲間》を発見 

 

「お姉さん、パチンコがお好きなんですか?」


「なんですって?あんなもの大嫌いよ。

 あれは、クズの大人がやることだわ!」


 見ーつけた!


 お姉さん、あなたも日本で死にましたか?



 ************



 同級生の仲良しグループの一員、

 大きな薬屋の娘さんマイカのダントンの家に、

 学校帰りに寄らせてもらった。


 ユーニスが風邪をひいてしまって、夜になると咳が出る。

 眠れないユーニスが毎晩苦しそうで大変だ。


 大人の薬の量を減らしてユーニスに飲ませようとしても、

『苦い』と、大騒ぎをしている。


 マイカのお姉さんが子供に飲ませる薬に詳しいと聞いて、

 相談をさせてもらおうと思って。


 学校からダントン家に向かっている途中に、マイカが


「うちのお姉ちゃんは、

 ちょっと変わっているけれど気にしないでね。

 腕は確かだから。

 婚家先から戻って来てから、より一層言動が変なのよ。」


「僕の兄様達も、みんなそれぞれに個性があるよ。

 人は、それぞれじゃない?」


「そう言ってもらえたら、気が楽だわ。

 お姉ちゃんの離婚理由が、

『アーミー仮面様ではなかった!』

 って言うのよ。

 わかる?誰も分かんないわよ。」


 マイカと並んで歩いていても、

 僕は以前のように引率をされているようではなくて、

 ちょっと嬉しい。


 この頃僕は、急に背が伸びて来た。

 年上の同級生に混じっていても、

 それほど違和感はなくなって来たんじゃないかなあ?


 マイカのお姉さんミルカさんに、

 ユーニスに飲ませる薬を調合してもらっていた。


 お姉さんの説明の途中に、聞き覚えがある“単語”がちらほらと出てくる。


 前世の僕の住んでいた新大久保の同じアパートに住んでいたお兄さんが、

 よく口にしていた“単語”だね。


 お兄さんは、時々“余り玉”でもらったお菓子がポケットに入っていると、

 僕にくれることがあった。


 飴だま1つでも、僕とゆうとには嬉しくてしょうがなかった。


 マイカのお姉さんのミルカさんが、


『これを飲ませれば《鉄板(てっぱん)》だから!すぐに楽になるわよ。』


 ミルカさんと話をしていると、《かくへん》《つれうち》《はまりが深い》《とうかでこうかん》。


 新大久保のお兄さんと同じ“単語”が、いっぱい出てくる。


 マイカが席を外した時に、


「僕は、日本の東京。新大久保で死んだんだ。

 お姉さんは、どこ?」


 僕は思いきって言ってみた。


 ミルカお姉さんは驚いて、薬の鉢を取り落とした。


 目を見開いた後、


「私は、埼玉。大宮だったと思うけれど。

 小さな時で、はっきりとはわからない。」


 僕はミルカお姉さんと、再会の約束をしてその日は帰宅をした。


 ミルカお姉さんの調合してくれた薬を、ユーニスは嫌がらずによく飲んだ。


 ユーニスの咳は、ずっと楽になってどんどん快復に向かった。



 ************



「では、あなたが亡くなった時は6才の小さな女の子だったのですね?

 ふむふむ。」


「はいそうです。司教様。

 ママが、付き合っていた男と“パチンコ”に行っている間に、

 車で待っていなさいって。

 いつもの事だったけれど。その日は特別に暑い日で。

 とても、長い時間だった。

 暑くて、苦しくて喉が渇いて。

 気持ちが悪くなって声が出なくなった後は、急に暗くなってしまった。」


「ほうほう。

 それであなたは、暗くなる瞬間に何を思われたのですか?」



 ******



 僕は、同級生のマイカ·ダントン家の薬屋さんで巡りあった、

 “夢の記憶”があるミルカお姉さんと、中央教会に来ている。


 セレーノ様にお会いするために。


 はじめ、僕とお姉さんで前世の話をしていたのだけれど、

 向こうで死んだ時は僕が10才。お姉さんは6才で。


 同じ日本だったとは言っても、2人とも幼かったから、

 情報の整理はつかなかったんだ。


 2人の話を擦り合わせると、確かに僕たちは日本にいた。


 それが、自分ひとりの“妄想”ではなさそうで、

 自分達の頭がおかしいのではなさそう。


 それは、少しホッとしたし、

 ひとりではないというのはこんなに心強いんだと思った。


 でも、なぜ今ここにいるんだろう。

 ここに産まれて嬉しいけれど、どうしてなのかはわからない。


 誰にでも話せることでははなさそうだし。


 結局、セレーノ様をお訪ねしてみた。


 ******


「レンリー、《プリティ戦士セーラースター》を知っている?」


 お姉さんが、セレーノ様から僕に向きを変えて尋ねた。


「テレビのアニメかなぁ?

 うちの電気が停められる前に、

 テレビが映っていた時に見たことがあったかな?

 こう、棒をもってエイって変身をするんだったかなぁ?」


「違う違う。

『星の力で思いしれ!』でしょうが!」


「う、うん。

 僕、女の子のアニメはあんまり詳しくなくて。

 ごめんなさい。」


 お姉さんが、セレーノ様に向き直った。


「6才の私には、

 その主人公の《セーラースター》が全てだったのです。


 辛い時には、自分が《セーラースター》になったつもりで、

 おもちゃの《スタースティック》を振り回していたの。


 ママが珍しくパチンコの景品で私にとってくれた《スタースティック》は、

 私の宝物だったから。


 私が、目の前が真っ暗になる時には、

 ママに『星の力で思いしれ!』とは思わなかったのよ。


 その時はそれよりも、

 《セーラースター》がピンチになると助けに来てくれる、

 《アーミー仮面様》に会いたい。


 次には、アーミー仮面様に助けてもらいたい。

 そう思って、死んだんだと思うわ。たぶん。」



「アーミー仮面様?」


 いたかな?そんなキャラクターは。



「知らないの?

 軍服に茶色の髪で凛々しくてカッコ良い、

 あの《アーミー仮面様》を知らないの?」



 うん、確かにミルカお姉さんは、ちょっと色々大変かもしれない。

 この世界でも。

 僕は、そう思ったんだけれど。

 

 その時にセレーノ様が力強く仰った。



「ミルカお嬢さん、諦めてはいけません。

 あなたが死に際して心から望まれた事は、

 きっと女神様に届いています。

 女神様に声が届いたからこそ、

 私達はこの地に新たに生を受けたのですから。


 私もそうでした!

 バルケス様に巡り会うまでの道は、

 そうは思えない事もありました。


 それでも、必ずあなたの望みはこの世界のどこかにあるはずです。」



「まあまあ。まあまあ。

 では、司教様。

 この世界のどこかに私の《アーミー仮面様》が、

 いらっしゃるかもしれないのですね。

 私はまだ、巡り会っていないだけで!」



「ええ、私はそのように考えるに至っております。

 レンリーのように、

 女神様のお導きは、産まれた時点で望みが叶うだけではないのだと。

 ですから、諦めてはなりません。」



「分かりました。

 では、私が

『普段はおとなしいけれど、酒を飲むと豹変をする薬問屋の息子』と、

 離縁をしたのは正しい選択でしたのね。


 あれは、女神様のお導きのご縁ではなかったのですね。」



 ******



 学校で僕はマイカに言われてしまった。



「ちょっとレンリー。

 うちのお姉ちゃんをどうしてくれちゃったわけ?

 教会に興味もなかったのに、


 セレーノ司教様に言われてどうのこうのって。

 お姉ちゃんが、明るくなったのはいいんだけれど。

 べつに、変な事に嵌まっている訳でもないようだし。


 毎日、《アーミーなんとか様》は、きっと私を待っている!


 家の薬屋では、お姉ちゃんを接客に出せなくなっちゃったわよ。

 まあ、お姉ちゃんはもともと調合が得意だからそれはいいけれど。」



 それから時々、僕はミルカお姉さんからお誘いを受けて、

 中央教会にお茶会をしに行くようになった。


 《夢の記憶》持ちの“3人お茶会”ね。


 時々、ユーニスが僕にくっ付いて来ちゃう事もあって。


 ユーニスも、一応《夢の記憶》が無くはないので、

 しょうがないかなってなったんだけれど。


 セレーノ様が、

 ユーニスはもうだいぶ二重にぶれてはいないから。

 もうすぐ、《夢の記憶》は、すっかり忘れてしまうだろうって。


 僕もそれで良いと思う。

 苦しい記憶を、ずっと持っていることはないものね。


 夕方まで、3人とユーニスで、

 教会の日当たりの良いお庭のガゼボでお茶会をしていた。


 その日は、アルフレド兄上が、教会まで迎えに来てくれた。

 ユーニスも来ていたからかな。


 兄上は王宮でのお勤めの帰りで、いつも通りに凛々しくてカッコいい。


 兄上がガゼボに現れてから、ミルカお姉さんの様子がおかしい。

 いつも色々おかしいけれど、また一層特別におかしい。


 お茶のカップを取り落として、いきなり叫んだ。


「いたー!女神様。いました。

 《アーミー仮面様》!いて下さってありがとうございます。」


 ええええ?

 それ、僕の兄上。アルフレド兄上ですけれど。



 ***************



 それからの、ミルカお姉さんの本気は凄かったです。


 アルフレド兄上は、独身になった途端にお見合いの話も山程来ているし。


 直接兄上を狙って来る女性も凄く多い。


 でも、兄上は仕事一筋。


 どうしても義理があって断り切れないお見合いには、

 必ずユーニスとユーニスが離さない僕まで同席をさせられて。


 子供が嫌いな女性は、その時の反応でよく分かる。


 たまにユーニスの機嫌をとろうとする女性がいても、

 ユーニスの方が懐かないし。


 その点、ミルカお姉さんにはユーニスは懐いていたし。


 ミルカお姉さんは変にユーニスの機嫌をとろうとはしないで、

 自然体の“仲間”として接するから態度に無理がない。


 僕が14才になってスターク家で暮らすようになったら、

 ユーニスが大変な事になるんじゃないかと心配をしていたんだけれど。


 ユーニスは、僕と同じようにミルカお姉さんにも気を許し始めている。


 僕が家を出る前に、アルフレド兄上とミルカ·ダントン嬢が結婚をする事になるとは!


 《女神様のお導き》って、凄すぎるね。


 僕の“弟のゆうと”の記憶は無くなってしまっても、

 新しいユーニスの人生が幸せなら、それ以上嬉しい事はないもん。


 女神様、本当にありがとうございます。




目に入れて下さった方が、どう思って下さったのだろう?ドキドキ

今日の暇潰しや気分転換になってたりしたら嬉しいなあと思っております。


少しでも気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いいたします。

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