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異世界には村もなかった  作者: 西玉
第2章 ダンジョン攻略編

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55/163

55話 地下研究所 ☆

ダンジョン=閉鎖された異世界

としたことで、全体の設定が固まってきました。

今回のダンジョンは、某名作ゲームの映画化作品をモデルにしましたが、ダンジョンごとにまったく違う異世界に行く予定です。ソウジに行かせたいお勧めの異世界があれば、感想欄などでお知らせください。

 洋館の奥に入ると、広い通路になっていた。

 洋館だとは思えない。近代的な機械むき出しの構造だ。洋館は、研究所のカモフラージュだったのかもしれない。


 通路は死体で満ちていた。

 綺麗な死体ではなかった。いずれも複数箇所が吹き飛ばされ、特に頭部はなくなっているか破壊されている。


 すでに四人となったはずの兵士たちが通った後なのだろう。

 通路の先に、エレベーターがあった。

 俺は魔法の石版を確認した。俺が目指さなければならないオーブは、平面上でもさらに先にある。


 エレベーターの電源はまだ生きていた。

 廃墟と化しているエレベーターを利用するなど、正気とは思えない。だが、他に道がないことも事実だ。


 ボタンは一つしかない。下に向かうボタンを押す。

 電気制御の機械が動くかすかな音が聞こえる。

 目の前の表示が変わった。


 俺の前で、扉が横にスライドした。

 エレベーターの箱の中に、死体の山が出来上がっている。外で会った死体とは違う。

 積み上がった死体は、いずれもお揃いのコスチュームであるかのように、白衣を着ていた。


 やはり死体は動かない。すでに破壊されている。

 俺は慎重に見渡したが、スケッチたち兵士の死体はなかった。

 気乗りはしないが、エレベーターの中に乗り込む。


 下降ボタンを押した。選択の余地はない。ボタンは一つしかない。

 一気に地下に潜る。

 地下何階分、という考え方は当てはまらないだろう。途中で立ち止まる階層はなく、数十メートル下降する。俺には、そう感じられた。


 ※


 エレベーターが止まる。操作を要さず、扉が開いた。

 薄暗い部屋だが、真っ暗ではない。

 天井の蛍光灯は光っていないが、あちこちにまだ電気が生きている機械があり、光源となっている。


 俺はエレベーターを降りた。やはり死体が転がっている。

 俺が部屋に入ると、部屋の片隅で、いくつかの影が立ち上がった。

 かすかに前方で音が聞こえる。


 まだ、スケッチたち兵士がゾンビと交戦している。

 簡単にはいかないようだ。

 全てを無力化していかなかったのは、数が多すぎるのだろう。


 俺は、立ち上がったゾンビを無視して、魔法の石版の魔法画面を呼び出し、生命魔法をタップした。

 足に意識を集め、床を蹴る。

 地下施設は、明らかに研究用の施設だ。


 機材とコンピューターに加え、遠心分離機などがあちこちにある。

 通路を進み、角を曲がる。

 目の前にゾンビがいた。


 散弾銃を撃ち放す。

 ゾンビが吹っ飛んだ。

 大きな音に集まってくるだろうか。俺は一瞬迷ったが、判断するには情報が足りない。


 俺はゾンビを飛び越えた。

 通路の左右に部屋が並ぶ場所に出た。

 その場所の先に、ゾンビの群がいるのがわかった。


 俺は魔法の石版に散弾銃をしまうと、すぐにダイナマイトとライターを取り出した。火をつけ、投げる。

 俺は近くの扉を開け、滑り込んだ。


 通路で爆発音が上がる。

 散弾銃に持ち替えた時、俺が飛び込んだ部屋に、若い女がいたことがわかった。

 若い女のまま死んだ。だが、すでに肉体が朽ちている。


 俺に、崩れかけた顔のまま襲いかかってきた。俺は散弾銃で吹き飛ばした。

 薬莢を装填し直し、通路を進む。

 ダイナマイトが吹き飛ばした肉片が、通路の壁にべったりと張り付いていた。


 俺はさらに進む。

 人間の声が聞こえた。


「おらっ! そっちがお留守だよ。焼き払いな」

「さっきの爆発はなんだ?」

「知るかい!」


 叫んでいる。俺は急いだ。

 目の前に、ゾンビが飛び出した。俺は散弾銃を撃った。


「よし、行くよ!」

「ちょっと待て、さっきの銃声は誰だ? 俺たち以外に、誰かいるのか?」


 懐かしく感じる声に、俺は角を曲がった。

 スケッチたち兵士は、3人になっていた。


「俺だ」

「お前……ソウジ! どうして、こんな場所まで来た」


 スケッチが恫喝するような声を出した。全員ガスマスクのような装備で顔を覆っているため見分けづらいが、リーダー格のスケッチはすぐにわかった。

 小柄な女性であるスケッチをなだめるように、大柄な黒人が遮った。この男も特徴的で見分けやすい。ムスカといったはずだ。


「あんな場所に置いて来たんだ。どこに行っても不思議じゃない。途中のキーロックは解除したままにしておいたが、よくここまで来られたな」


 話をしながらも、時々立ち上がってくるゾンビを銃で退けている。


「お前、怖くないのかよ。いかれちまっている」


 もう一人生き残ったのは、ずっとマスクをしたまま、素顔を見せなかった男だ。もう一人女性がいたはずだが、すでに生きてはいないのだろう。最初の犠牲者は、洋館で会った。


「ああ。いかれている。あんたたちと一緒だ」

「違いない」


 俺が言い返すと、男は笑い声を立てた。ブルフィというのだと、俺に教えてくれた。


「ソウジ、あんたはこの先に目的でもあるのかい? それとも、寂しくてついてきたのかい?」


 スケッチが尋ねた。


「この先に、俺が壊さなくちゃならないものがある。そのために来た」

「ひょっとして……俺たちの同業者か? ソウジが壊さなきゃならないのは……アンプルか?」

「アンプル? それはなんだ?」


「ブルフィ、黙りな。交渉はリーダーの私の仕事だ」

「はいはい」


 俺にアンプルの話をしたブルフィは、スケッチに睨まれて黙った。スケッチが問い直す。


「ゾンビ化の解除薬、それがアンプルだ。この研究所で、そのアンプル開発に成功したって情報がある。そのアンプルを見つけるために、私たちは派遣された」

「俺が探している……壊すのは、丸い玉だ。たぶん……」


 スケッチが首を傾げる。


「丸い玉だって? 情報にはないね……何に使う?」

「いや……知らない」

「おかしな奴だね。何も知らされずに、こんな場所にきたのかい。随分酷い雇い主だね」

「うん……俺もそう思う」


 実際にそうだ。俺は、ドラゴンに言われて、金貨を求めてダンジョンに潜ったつもりだった。

 ダンジョンが閉鎖された異世界で、銃器があるとか、何に使うのかわからないオーブを破壊しないと戻れないとか、悪質にもほどがある。


「スケッチ、ソウジを連れて行くかどうか、お前が決めろ」


 今まで温厚だと思っていたムスカの声だった。


「……連れて行く。言っておくけど……アンプルは丸くないからね」

「わかった」


 オーブが丸いとも限らない。名前からして、丸そうだと俺が思っただけなのだ。

 だが、変に疑われることもない。スケッチたちが持ち帰ろうとしているものが、万が一俺が壊さなければならないオーブだとしても、持ち帰って安全な場所で壊せばいいのだ。

 俺は自分に言い聞かせながら、スケッチたちの後に続いた。


 ※


 スケッチたちがプロの兵士であることは、目の前で見せつけられると、納得するしかなかった。

 次々とゾンビが湧いて出るが、スケッチたちは的確に武器を使い、ゾンビを行動不能にしている。


 時々、暗がりから大量に湧いて出ることがある。この現象に、二人の仲間を失ったのかもしれない。

 俺はそう思いながら、散弾銃をスケッチたちに当たらない角度で撃ち放った。


「ここだね」


 しばらく進んだ後、スケッチは言った。


「ああ……この奥だな」


 ムスカが応じる。目の前に金属の扉があり、開閉させるための装置がついていた。

 俺は、魔法の石版を確認する。俺のいる場所から10メートルほど先だろう。オーブの反応がある。

 俺が壊そうとしているものとアンプルというのが、同じでないことだけを祈った。


「でも、これだけゾンビがいるんだ。その研究……本当に成功したのか?」

「さあね。それが成功しているのか、本物か、俺たちにとってはどうでもいいのさ。俺たちの仕事は、指定されたアンプルを持ち帰ることだけだ。解除する。下がっていろ」


 ブルフィが言いながら、扉の装置に向かい合う。背中の荷物を起き、コードをつないでいた。


「スケッチ、弾薬はどの程度ある?」


 ブルフィが作業している間、ムスカが自分の体を弄りながら尋ねた。


「弾倉に何発かと、予備のカートリッジが二本だね。ムスカ、あんたは?」

「あと数回だろうな。それ以外には拳銃があるが、奴らには効かないだろう」


 ムスカが持っているのは、火炎放射器だった。

 二人は、俺には尋ねなかった。俺はもともと、戦力に入っていないのだ。


「……よし、開いた」


 ブルフィが言い、閉ざされていた金属の扉がスライドした。

挿絵(By みてみん)

新作更新中です。

100日勇者と100日魔王 ~勇者と魔王に異世界転移した、新婚夫婦の100日間~

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100日連続更新挑戦、継続中、28日目です。よろしくお願いします。

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>下降ボタンを押した。選択の余地はない。ボタンは一つしかない。 地下から上がるときにはどうしてたんだろ?
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