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異世界には村もなかった  作者: 西玉
第3章 1000年後

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110 ダンジョン攻略 3つ目

 王城の執事長ジャミロフは、霧に変化する能力を持っている。

 踏み潰されたところで死ぬはずがない。

 俺は距離をとり、魔法の石板をタップした。

 死霊魔法を使用し、ベティアに向けた。


 操るつもりだった。

 だが、ベティアはただジャミロフの動きを目で追っていた。魔法が効果を顕した様子はない。

 ジャミロフが実体化する。


「ハンヘド、殺せ!」

「はいよ」


 返事をした恐竜は、ハンマーのような頑強な頭部を実体化したジャミロフに叩きつける。

 ジャミロフの相手はしばらく任せればいいだろう。

 俺は、再び死霊魔法を使用した。

 俺の周りに、黒い影がわだかまる。


「何のつもりじゃ?」


 俺に視線を向け、幼女のような吸血鬼の王ベティアが目を剥いた。


「ゴーストたち、俺に従え。吸血鬼の王を拘束しろ」


 黒い影がベティアに向かう。

 俺は、別の魔法を使用した。


「この程度の者たちで、妾をどうにかできるはずがあるまい」


 ベティアが腕を一振りすると、黒い影が霧散する。

 死霊魔法により出現させたゴーストがかき消されたのだ。

 俺は、タップしておいた魔法を発動させた。

 爆発魔法だ。


 狙いは一つだ。ベティアの右手が、俺の魔法によって吹き飛んだ。

 勢いでオーブがテーブルから転がり落ちる。

 ベティアが左手を伸ばした。

 俺は、再び爆発魔法をタップする。

 ベティアの左手が弾け飛ぶ。


「貴様!」


 ベティアが、牙を剥き出して威嚇した。

 見た目は幼女だが、吸血鬼の王を名乗るだけの迫力だった。

 俺が吹き飛ばした左手は、すぐに再生した。だが、オーブと癒着していた右手は再生していない。


 その理由は俺にもわからないが、俺は生命魔法をタップし、足に力を込めた。

 床を蹴り、俺はオーブに手を伸ばした。

 再生したベティアの左手と、俺の右手が同時にオーブを掴む。


「これは、貴様が持っていても意味がないものじゃ」

「俺の目的の二つ目は、このオーブを壊すことだ」

「ならん。このオーブは、妾を吸血鬼の王に宿命づけた。このオーブ無くして、妾は吸血鬼の王にはなりえん」

「オーブを壊さなければ、異世界にはいけないのにか?」

「……本当か?」


 オーブごと俺の手を握るベティアの瞳に、迷いが生じた。

 俺は、無理に力を込めてオーブを奪おうとはせず、ベティアの手とオーブを同時に握ったまま、オーブを床に下ろそうとした。

 オーブが床に触れる。


 ベティアが力を抜いたのだ。

 この間、ジャミロフはハンヘドと戦い続けていた。

 ジャミロフは強力な吸血鬼だが、牙の長さがハンヘドの革より短くては血を吸うこともできない。


「証明しよう」


 俺は、アイコンをタップした。

 床の上に、ピンクのオークが転がり出た。


「わあ……ソウジ、どうしてオーブがこんなところにあるのに、壊さないんですか? この異世界に住み着くつもりですか?」

「どうだ?」


「……ああ。嘘ではないようじゃな」

「どうしました?」

「なんでもない。ウー、よくやった」


 俺が誉めると、褒められ慣れていないオークは、頬を染めて魔法の杖を抱きしめた。


「ジャミロフ、もう良い。妾は、この者と行く。これまでの忠義、ご苦労じゃった」


 ベティアがオーブから手を離し、霧となったジャミロフに呼びかけた。


「ソウジ、あんな恐ろしい魔物を連れて行くんですか? この世界の人間たちを滅ぼしたんですよ」

「勇者たちを滅ぼすことができるかもしれないぞ」

「それは素晴らしいですね。ぜひ連れて行きましょう」


 ウーは手のひらを返した。

 俺は、ベティアを連れて行くことに抵抗がないわけではなかった。

 ただ、魔法の石板に収納されている間は、魔物にとって時間が停止する。

 連れて行き、ずっと呼び出さなかったとしても、ベティアにはわからないのだ。


「ジャミロフはいいのか? この世界の人間たちは、もう全滅寸前なんだろう? 本当に全滅したら、血を吸うこともできなくなるんだろう?」

「そうじゃな。じゃが、妾がいなくなれば、この城はジャミロフの意のままじゃ。ジャミロフであれば、人間たちを全滅させることもあるまい。妾が、腹が空いたとごねなければ、ジャミロフは数十年と血を飲まずとも、平気なのじゃ」

「わかりました」


 俺は、再びアイコンから拳銃を取り出した。

 銃口をオーブに押し当てながら言った。


「では、ベディアはこれから、俺に従ってもらう」

「……ああ。やむを得ん。じゃが、妾の貞操を狙うようであれば、抵抗はするぞ」


 ベディアは、目を細めて俺を見た。肩が片方下がっているのは、俺を誘惑しているつもりなのかもしれない。オーブを諦めたからか、ベティアの右手は再生していた。


「そんなことはしない。俺には、大切な人がいる。その人を助けるんだ」

「その割には、地下の女たちをあっという間に孕ませたらしいな」


 ハンヘドが動きを止めたため、ジャミロフが実体化して近づいてきた。俺を見下ろし、皮肉のような微笑を浮かべながら言った。俺も苦笑で返す。


「仕方ないだろう。異世界から来た俺の種が必要だといわれれば、断るわけにもいかない」

「ああ。これで100年ぐらいは、種の保存ができるだろう。人間たちが全滅する前に、もう一度来い」

「……ああ」


 正確には、オーブを壊したダンジョンには入れない。

 この異世界から旅立てば、二度と戻ることはできない。

 だが、それを言ってベディアの意見が変わっても困る。

 俺は、ベディアに魔法の石板を向けた。


「女たちを簡単に孕ませたのも、異世界の力だ。俺に従うなら、この石板に触れれば収納される。俺が別の異世界に移動する時、一緒についてきてもらうことになる」

「妾の体には興味ないとぬかすか。ジャミロフ、どう思う?」

「陛下の末永い幸せをお祈りしております」


 執事長らしく、ジャミロフが膝をついて臣下の礼をとった。


「最後まで、つまらぬ男じゃったな。じゃが、妾は大いに助けられた。長きに渡る忠義、ご苦労じゃった」

「ありがたき幸せに存じます」

「……あんたたちの末永くって、本気で長そうだから、ほどほどにしてくれよ」

「ソウジは、これでも1000年を一度も動かずに過ごしたんですよ」


 俺が吸血鬼の末永くという言葉に不安を覚えていると、ウーが余計なことを口走った。


「ほう。流石じゃな。これなら、妾が主人と仰いでもよさそうじゃ」

「人間の体で……あり得ない」

「本当だよ」


 感心されることでもないが、嘘ではない。壁の中に埋め込められて、意識だけがあったので、動けなかっただけなのだ。

 俺が最後に確認すると、ベディアは魔法の石板の表面に触れ、姿を消した。

 俺が画面を確認すると、魔物の画面に可愛らしい女の子のアイコンが増えていた。


「ハンヘド、ウー」

「はいよ」「わかりました」


 魔物たちが次々に消える。


「主人殿を頼むぞ」


 最後に、残った執事長ジャミロフが言った。


「わかっている」


 俺は真面目な執事長に約束すると、オーブに向けていた拳銃の引き金を引いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 幼女吸血鬼とか、ともすればヒロイン候補足り得たのに……いや、まだまだここからヒロインの一人となる未来もある……か?
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