ちらさん
※この物語はフィクションです。
この物語に登場する人物、言葉、場所、名前もすべて架空のものです。それを踏まえたうえで、短編第三作目、初のホラーよろしくお願いいたします。
最初に自己紹介をしておこう。
俺の名前は加藤文彦。あだ名は文坊。あだ名の意味はしっくりくるからと言う理由で。夢は大金持ち。
小さい時から俺の家族は貧乏で、小学校、中学校、高校のクラスメイトから散々家のこと、特に貧乏のことで馬鹿にされてきた。
そんな記憶があるからか、俺はお金持ちになりたいという願望は人よりも強くて、高校卒業と同時に実家のド田舎から都会に上京して、いくつかのバイトをこなして生活費を貯めつつ、大金持ちになるため稼――動画配信者になるための資金を集めてきた。
でも、この選択が俺の人生の分岐点だったのかもしれない。
だって、動画配信者になろうとか思わなければ……、大金持ちになりたいだなんて思わなければ、誠実に生活をして生きていく選択をすれば……、あんなことにはならなかったのに……。
これは俺と二人の配信者仲間がやってしまった過ちのお話。面白くもなんともない、ただただ愚かな過去のお話だ。
聞いてくれるかな?
● ●
前の言葉でも話したけれど、俺は大金持ちになるために動画投稿サイト『LOOK TUBE』で『Lチューバ―』になることを目標にしてバイトをしながら資金を集めていた。
動画配信者となったら色んな機材が必要だし、そのためにはお金が必要になる。
だから俺はバイトをして、動画を撮るための機材を集めて、バイト仲間で仲良くなって、夢は違うけど同害配信者になりたいと思っていた二人の仲間とぼろい安アパートの屋根の下で暮らし、苦楽を共にしながらようやく俺は、俺達は底辺ながら『Lチューバー』の道を歩むことができた。
まぁその道も楽なものではないのが現実で、配信をしたからと言ってそのまま収入が入るわけではない。バイトをしながら休みの日には撮影をして、そして編集をして投稿。それを繰り返してきたのだけど、俺達の動画がバズることはなかった。
再生回数も二桁。多くてもぎりぎり三桁と言うような数字。最悪ゼロの時だって何回かあって、収入を得るという数字ではなかった。
どころか、永遠底辺のような再生具合に、その時の俺は愕然としてしまった。それは二人も同じで、この時の俺達はかなり焦っていたんだと思う。
「うーん。文坊ー……、今度はどんな動画にする……?」
そう言って作業用のパソコンの画面に写り込んだ動画再生一覧を凝視して、机の椅子の中にすっぽりと体育座りをして納まっていたのは眼鏡とそばかすが印象的な古屋智也こと『ともやん』。夢は『トップLチューバーになりたい』そうだ。
「どんな動画って……、もうできる限りのことはしたと思うし、もう案が浮かばねぇよ」
ともやんはパソコンとにらめっこをしながらしかめっ面で俺に向けて言うと、俺はそんなともやんに向けて力なく答えた。
だってどんなに頑張っても結果がこれだと、流石に気力も無くなる。動画配信者は大変だと言う事は聞いたし、この業界でトップを狙う事はまさに夢のまた夢と言う事も聞いたけど、ここまで精神的に来るとは思っても見なかった。
正直舐めていたかもしれない。そう思ってしまっていたし、正直もうだめかもしれないという諦めもあってもうチャンネル閉鎖しようかと提案をしようとしていた時、もう一人の仲間――丸々と太っていて汗もひどい岩島福丸こと『ころまる』は悩んでいる俺達に向けて明るく、大きな声でこんなことを言い出した。
「だったらさ、今夏だろ? ドッキリ動画とか撮ったらいいんじゃないか? ホラー系で攻めてさ、ターゲットは七沢で、文坊が嘘の企画を伝えて、俺カメラ、脅かし役はともやんがする。って感じのをしたらいいんじゃないかな? 一応コラボとしてさ」
「コラボか……、あいつとは何回もしているからいいかもな」
「俺が脅かし役かよ……。まぁ別にいいけど。ハロウィン用でいいかな?」
ころまるの言葉を聞いていた俺とともやんは快く二つ返答をしてしまい、俺達は早速準備に取り掛かった。
今にして思うとこの時の俺とともやんは精神的にバグっていたのかもしれない。今時期定番のホラー系、しかもドッキリを撮影して何になるんだって今にして思うし、動画の再生回数の低さに半ばやけくそだったのかもしれない。
それにころまるの夢は『有名になりたい』って言うそれもあったから、きっところまる自身も焦ってこんなことを言ってしまったのかもしれないけど、この時、選択を変えれば俺達の人生は違っていたんだろうなって、今にして思うよ。
ころまるの提案を呑んだ俺とともやんは早速ドッキリ動画の企画の話し合いをすることにした。
幸い今は夏で心霊の特集などもしている時期でもあったので、嘘の企画の内容は心霊で、幽霊が出る場所……、と言っても、経費とかのことも考えて、そんな空気が出ている場所でドッキリ撮影をするということに決まった。
あまりにも王道なドッキリ内容だけど、そんな王道に俺達は縋ることしかできなかったのも事実。
……そのくらい俺達は、どうにかして再生回数を稼ぎたかったんだろうな……。今思い出すと、バカバカしく感じてしまうな。
バカバカしいドッキリの案を出しながらも俺達は行動に移した。
ともやんは撮影場所のリサーチ、俺は撮影道具の調整、そして同じLチューバーの七沢とコラボのことで電話をして、ふくまるは嘘企画の作成と本当の企画の作成などをして、バイトをして遠征費を稼ぎ、そして当日――俺達が住んでいる場所からほど近い場所に向かった。
俺達三人と、同じLチューバーで仲がいい七沢拓真と一緒に。
撮影場所はともやんが直感で選んだ場所で、名前なんてなく、有名でもない。一言で言うところの一般的な雑木林みたいな場所の近くで俺達は集まっていた。その日は特に暑い日でセミがうるさくミンミン鳴いていたのを覚えている。昼と言う時間と相まって、夏真っ只中を思わせるような光景が俺達の視線を奪ったこともしっかりと覚えている。
都会にはない自然の一部分を見て、俺は一瞬自然がテーマの物語の世界に入り込んでしまったのかと思ってしまうほど、その光景は綺麗そのものだった。
草木が生い茂っていて弱い風が吹くと木々は軽く揺れ、枝から生えていた葉っぱ同士がかすかに動くと自然特有というか、よく言う草木が奏でる『さわさわ』と言う音が耳に入り、鼓膜を揺らし、音と同時に鼻腔に都会特有のガス混じりの空気ではない透き通った空気が入り込んでいく。その空気を感じてこれが自然というイオンをかと思ってしまうほど、俺は感動していた。
ともやんところまるもその自然の光景に大人げなく感動していた時――
「―――」
「え?」
突然七沢が声を上げた。低く、小さな声で何かを言ったんだ。
一瞬何を言っているのかわからなかった。でもその声に俺はなんとなく反射的に反応をして七沢がいる背後を振り向くと、七沢の顔を見て俺は言葉を失った。
七沢の顔から笑顔という通常運転のそれが消えて、あったのは――異常だけだった。
視点が定まっていない瞳孔が焦点が定まっていないかのように乱雑に、急かしなく泳ぎ、肌と言う色素があったその顔から『肌』という明るい色素だけが吸われてしまい顔面を、全身を白く染め上げている。
しかもその白い肌からは俺の目でも見えてしまいそうな鳥肌が浮き出ていて、鳥肌と同じくらいぐっしょりとした七沢の気持ちの表れが液体として浮き出ている。
それは暑さから出たものではなく、別の液体。
今顔に出ている顔のそれと同じ感情がそれとして出たものだと――この時の俺は理解していなかった。
それだけでも異常と思えるのに、七沢はその状況に付け足すように全身をがくがくと震わせた。寒さからではないその震えと同時に、七沢はなぜかその場で自分の指の爪を噛みだしたんだ。
がり、がり、がり、がり。
がりがり、がりがり。
がりがりがりがり。
と――深爪になっても嚙み続け、噛めるところが無くなったのに更に己の爪を……、いいや、爪の皮を剝くように貪る。血が出てもお構いなしに、七沢は貪り続ける。貪りながら小さな声で何かを呟いて……。
突如として起きた異常と言えるような光景。同時に来たそれを見て、誰もが知っている七沢じゃないと思い、俺とともやん、そしてころまるが言葉をかけることができず、思わず互いの顔を見合わせることしかできなかった。
びくびくして、なんでこんなことをしているんだ? とか、何がどうなっているんだ? とか思っていると……。突然七沢は動いた。
くるりと……、その場所から早く離れたいかのように、踵を返す行動をして。
「あ、おい! 七沢っ」
何もかもが突然のことで思考が追い付かなかったけれど、ようやく声を出すことができた俺は思わず七沢に声を掛けて引き留めようとした。声を掛けた後七沢はその場で足を止め、その状態で七沢は俺達のことを見ずに言ったんだ。
俺達に向けて、弱々しい低い音色で――
「ごめん……、腹痛くなって……、ごめん」
と言って、七沢はそのまま帰ろうと足を動かそうとしていた。俺は七沢のことを止めようと声を上げて名前を呼ぶと、今度は足を止めず、どんどん俺達から離れて行ってしまう。
俺達のことを見ずに……、深爪になってしまったその指を噛みながら……。
七沢の異様な背中を少しの間見て茫然としていたけど、少しして最初にともやんが俺達のことを見て言葉を発した。
不安と、七沢に対しての感情を乗せて。
「なんか、おかしくなかったか? あいつ……」
「おかしいって言うか……、おかしすぎだろ……。お腹が痛いとかそんなんじゃないだろう?」
俺とともやんがそんなことを話しつつ、脳内に映し出される七沢のことを思い出す。なんで七沢があんな顔をして、何に対して震えていたのか。そしてあの時言った言葉が何だったのか、まったく意味が分からない。
それに……、あの震えとあの顔……、まるで……。
「………………………」
七沢の違和感を思い出しつつ、俺は雑木林がある方に視線を向け、見つめる。
雑木林は比の光を浴びて都会にはない緑と言う名の自然の世界を明るく、キラキラと照らしている。さっきまでの出来事とは正反対の――心が穏やかになる様なそれだ。
……七沢、本当にお腹が痛かったのかな……? なんか、別の理由があったのかな?
そんなことを思いながら今回の企画がおじゃんになった穴埋めとして、次の動画をどうしようかと話しながら仕方なく帰路についた時、俺は聞き逃していた。
「………………………ん?」
ころまるが何かを見つけたかのような言葉を発したその声を……。
● ●
そのあと俺達は自分達が住んでいるアパートに帰って、これからのことについて話し合おうとしたんだけど、帰ってからころまるの様子が変だった。
なんか辺りを見回して、また話に集中しようとしたらすぐに視線を別の方向に向けるということを何度も繰り返していた。
なんだか落ち着きがないというか、そわそわしているというか、なんて言えばいいのかわからないけれど……、ころまるの様子がおかしかったのは目に見えていた。
俺やともやんもころまるの姿を見て『どうしたんだ?』と声を掛けると、ころまるは俺達に向けて、あえて明るい声でこう言ったんだ。
「いや、視界の端になんか黒いものが見えてさ、きっと虫か何かが通ったんだろ? 大丈夫だよ。長く続いたら病院に行くからさ」
そうころまるが言ったので、俺とともやんはころまるの意思を尊重するように「そうか、わかった」としか言わなかったけど、この時、俺は心配だからこそもっとしっかり聞いていればよかったんだ。
そうすれば俺やともやん、そしてころまるは助かったかもしれないんだ。
その選択を嘲笑う様に、ころまるは日に日におかしくなっていった。
帰った後落ち着きのない行動をしながら辺りを見回していたけれど、次第にそれがどんどん視線を怖がる人のように辺りを見ながら警戒したかと思えば突然奇声めいた叫びを上げては両手を振り回す。
「ぎゃあああっっ! あああああっ! なんなんだよぉーっ! うわああああっ!」
「落ち着けころまるっ! なにもいないから!」
「そうだって、落ち着けころまる!」
「うわあああああああーっっ!」
機材を壊し、家具を壊していき、手の付けられない子供のようにころまるは俺達にも攻撃をするようになっていき、次第にバイトにも行かなくなって、部屋の隅でぶつぶつと何かを唱えるようになってしまった。
丸々太っていたその容姿も痩せこけてしまい、ころまるはぶつぶつと、小さな声で何かを呟いていたけれど、俺達には何もできなかった。
何かをしたかったけれど、ころまるはそれを拒んでしまい、何もできなかった。
まるで――見ること自体拒絶しているような風に。
あのおじゃん騒動から一週間経った後か……、その時からともやんの様子もころまるのように落ち着きが無くなり、それと同時に――
ころまるは自ら命を絶った。
飛び降りによる自殺とされ、突然の訃報に俺は頭の中が真っ白になった。
真っ白になっている最中ころまるの葬儀も行われていた。でも内容は覚えていない。内容は覚えていないけれど、仲間の死を聞いて、仲間の死に顔を見て、俺は泣いた。それだけは覚えている。
仲間が自殺したんだ。泣かないわけがない。悲しくないわけがない。
悲しくて悲しくて、それしか頭が回らなかった。夢も何もかもが考えられなかったけど、葬儀が終わった二日後――ともやんが話してくれた。
「文坊。実は俺……、ころまるが何で自殺をしたのかわかったんだ」
「え? どういうこと? わかったって……」
「信じられないかもしれない。でも実際俺の身にも起きていることで、これはころまるが言っていた情景と同じなんだ。俺は今ころまると同じ状況で、ころまるはきっとこれから逃れたいから自ら命を絶つことを選んだんだ」
ともやんの言葉を聞いた俺は、一体何を言っているんだ? と思ってしまった。
自分がころまると同じ状況で、ころまるが自殺をした理由がこの状況? ますます意味が分からない。
もしかして、これドッキリか何かか? と思った俺は辺りを見回そうとしたけど、ともやんはそんな俺に現実を突き付けるように「ドッキリじゃない」と断言をして、そして俺に向けて言った。
「言っても信じられないかもしれないけれど、実は俺の視界にさ、ちらちらと黒い何かが写り込んでいるんだよ。よく白い部屋にいて何気なく視線を動かすと視界の端に黒い何かが見える的なことあるだろう? あれと同じで、視界の端に写り込むんだよ。ちらちらと……、俺の視界に何度も映って、祖映った場所を見ても何もいなくて、それでいないと思って視線を戻すと、今度は別の場所に黒い何かが写り込んで、それを何度も何度も繰り返すんだ。何度も何度も俺の視界の端に……、ちらちらちらちらちらちらちらちら写り込んで、何度も何度もちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちら写り込んで……!」
そう言った後、ともやんは珍しく泣き崩れてしまい、俺自身もそれを聞いて理解が追い付かなかった。
視界の端に写り込む何か。
その何かに怯えて、二人は苦しんで……。
一体何が起きているのか。なんで二人はこんなことに……。そう思った時――
「――え?」
俺は声を零した。間抜けな声と共に、俺は視界の右端に写り込んだ黒い何かを一瞬捉えて、右に何かがいるのかと思い右に視線を向けると……。
――ただの壁。それだけだった。
● ●
あれから一週間が経った。一週間のうちに色んなことがあって、ともやんもころまると同じような道を辿って逝ってしまい、俺は一人――怯えながら日々を過ごしてきた。
一週間、俺の視界の端に一瞬だけちらりと写り込む何かに怯えて、二人と同じように発狂してしまいそうなその気持ちを何とか保とうとぎりぎりの精神でしがみついていた。
死にたくない。二人のように自殺したくない。
でも視界に一瞬写り込むそれが鮮明になっていき、俺にしか見えないその存在――あれが何なのか認識していくにつれて、俺は気が気でならなかった。
俺の視界に写り込んだものは――人。
しかも女性で、その女性は真っ黒いさらさらしている長髪なんだけど、女の顔は真っ赤な液体でぐちゃぐちゃになっていて、元々の顔がわからない。
それだけでも怖いのに、口と目にぽっかりと穴が開いているらしく、口、目、そして鼻、耳と言う穴と言う穴からドロドロと赤黒いものが流れている。
体は見えない。顔と頭しか視界に入らないからどうなっているのかもわからない。心霊特集の映像のように一瞬だけ映って、はっきり見えたのは顔だけだからわからない。
時折口をパクパクと動かしているけど、零れ出るそれが弊害となってしまい何を言っているのかわからない。
なんで俺の視界に入っているのかもわからない。なんで一日に何度も何度も俺の視界に入っては監視をしているように見ているのかわからない。
でも、分かることがある。二人もこんな気持ちだったんだ……。気が狂うのわかるよ。
だって、俺の視界に入り込んでは消えて、入り込んでは消えてを繰り返す。
あれは俺の視界の中でかくれんぼをしているかのように、視界の端で顔を出して、俺の反応を見て面白がるように、そいつは俺の視界の中で動く。
ちら。
ちら。
ちら。ちら。
ちら。ちら。ちら。
ちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちらちら。
と――
ずっと俺の視界の中から顔を出しては消えてを繰り返す存在。
あれは何だったのか。そんなの考える余裕もなかった。
でも……、どこかで判断を変えていれば、こうならなかったかもしれない。
再生回数を狙いたいがために、目先の欲に目がくらんだ結果がこれだ。
俺はあれから解放されたい一心で、二人と同じ道を辿った。助けを求めることもなく、あの視線から、視界に映ったあの女の目から逃れたい一心で……、そのまま身を投げてこの世を去った。
俺の視界の端に一瞬移り込む黒い何かから逃れたい。
ちらちら、ちらちらと映る黒い何かから逃れたい一心で。
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加藤文彦の自殺から二日後――
三人の動画配信者の不可解な死は巷では小さなニュースとして取り上げられたが、そのニュースも世間の記憶から消し去られてしまい、警察も事件性はないと判断し、三人の不可解な死は闇へと消え去ってしまった。
しかしそれと同時に――一部の世間ではとある話が話題になっている。
都市伝説ではなく、ただの現実離れした話。その内容はこうだ。
あなたの視界に黒い何かが映り込むと、一週間以内に自ら命を絶つ。
服も肌も真っ赤な血で濡れ、穴と言う穴から赤黒いそれを零している黒い長髪の女性――『ちらさん』に呪われ、監視されながら……。
『ちらさん』と言う存在は、本当にいるのかもしれない。
だって、俺の視界にもちらちらと映って、三人のことを見捨てた罰を与えんばかりに、視ることができて、知らせることができた俺のことを呪う様に見て、俺の心を壊そうとしている……。
あの時、怖くても正直に伝えていれば変わっていたかもしれない。
あの雑木林は幽霊が通る道だったこと。
その道で俺の視界の中にいるその存在が俺達のことを睨みつけていたことを……。その時伝えていれば……、こうならなかったかもしれない。
もし、視界に黒い何かが映ったら、それは『ちらさん』かもしれない。
ほら――あなたの視界にも入っているかもしれないよ?
ちらちら。
ちらちら。
ちらちらと――
血で真っ赤になった顔で、見えるはずのないぽっかりと開いた目であなたを見つめ……、言葉になっていないのに口を動かしながら………………………。
最後までご閲覧していただきありがとうございます!
初めてのホラー物で文字だけで恐怖を与えることに苦戦をしましたが、いかがでしたか? 怖かったでしょうか? 怖いと思わなかったのであれば申し訳ございません。
今回も学ぶべきことを言く掴みつけましたので、これを糧にさらに頑張っていこうと思います。
重ねてご閲覧ありがとうございました!