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家を造ろう 4

一服してちょっと落ち着いたところで。


居間はとりあえず後回しの通過で何となくちら見して、次はトイレとお風呂。


LDKから廊下を挟んで扉が四つ、真ん中の扉を二つ開けると左側が洗面や脱衣場を兼ねた広めのランドリールームで、玄関ホールや廊下と同じナチュラルウッド風、右側がトイレだった。


ランドリールームの奥には、中心が青い薔薇のモザイクガラスの美しい扉があって、浴室へと続いている。


浴室は、浴槽も含めて全面白い大理石で、浴槽の向こうに大きな窓があり明るい光が射しこんでいた。


大理石には石の冷たさを感じさせないよう表面に透明の薄い柔かなフィルターを(かぶ)せ、あわせて浴室全体に軽量化と強度増加、耐震、耐熱、耐水、除湿、防カビ、洗浄浄化、現状回復が付与されている。


浴槽は、大きめの卵型。柔かな曲線のS字型の段差もあって、寝そべって入ることもできそうだ。


湯加減をみてから浴槽にお湯をはり始め、お湯が溜まるのを待つ間に、ランドリールームをぐるっと見回した。


オフホワイトで統一された洗濯乾燥機や洗面台、作りつけの収納戸棚(キャビネット)や藤製の脱衣かご。洗濯後に外干しもできそうなウッドデッキが窓から見えた。


廊下側とは別の扉もあり、たぶん寝室と通じているのかなと思っていると、給湯音が止まったようだ。一応見にいくと、お湯が溜まっている。どこにセンサーがあるのか、見た目ではわからないけれど、お湯が溢れる心配はないようで良かった。


さあ、早速お風呂に入ろ。


洗面台の隣、お風呂側のキャビネットに、化粧品や髪留め、シャンプーとボディソープ、洗顔フォーム、入浴剤等々を見つけてあったし、寝室側のたぶん衣類用のキャビネットからは、タオルや下着などの着替えを発見していた。


そういえば、ここで気がついた時に着ていた今の服は、以前の日本の服とは違っている。


さっきのブーツも見覚えが全くないものだったし、この裾や襟から肩口にかけて小花が刺繍された白いエプロンドレス風のふんわりした足首までのワンピースも、腰に巻き付けているサッシュ風の飾り帯みたいなものも、たぶんこの世界に来た時に身体と一緒につくりかえられたものなのかもしれない。


衣類用のキャビネットの横には、衣装を掛けられるクローゼットもあって、その近くに大きな姿見もあったのに、今の自分の姿もまだ見ていない。髪が以前とは違う色なことには気がついていたし、やっと好奇心が勝る程度の余裕ができたようだった。


で、その結果はといえば、もの凄い美少女がそこにいた。


小さな顔に切れ長の大きな目、通った鼻筋、髪は青味ががって光り輝く銀糸、虹彩が青緑がかった紫水晶(アメジスト)に輝く大きな瞳、抜けるような白い肌に薄桃色の唇。挙げ句の果てには、サッシュをほどいてエプロンドレスとシュミーズを脱ぐと、


私、脱いだら凄いんです!


を、地でいくボリュームのある胸、に反して細い腰から小さめの美尻、長い手足。これ、宝の持ち腐れじゃない?


お風呂に入って改めてわかったけれど、鏡ごしに見ても全身シミ一つない抜けるように白いしっとりきめ細かな玉のお肌。肘や膝、踵もつるつるピカピカで柔らかいし、髪も

艶々(つやつや)のサラサラ。天使の輪が二重三重に輝いている。


以前の踵カサカサな乾燥肌が、中年のやるせない哀愁を思い出させた。これは、日焼けやダメージをうける前に全身ケアしないとね。日焼け止めと潤いも逃さない、でも通気性の良い、防御も兼ねた強力結界を常に全身に纏うイメージで、美肌防御結界をこれ以上はないくらい真剣に念じた。


髪は最初に洗ってタオルを巻き付けたけど、ドライヤーはあったっけ?


バスタブで十分に暖まってから、ボディソープを泡立てて身体を洗う。うそっ、身体が超やわらかい、背中に手のひらが余裕で届くんですけど。


試しに爪先立って足を上げたら、反動をつける必要もなく、バレリーナのように軽々と顔まで上がってキープ、がずっとできた。ポテンシャル高し。


泡をシャワーで流して排水口をチェックしたら髪が抜けて集まっていた。可燃ゴミにするにはもったいない髪だよね。抜けた髪だけを集めておくことはできるかな、と思っていたら目の前で髪や泡はきれいになくなっていた。


何となくピンときて、ストレージをチェックすると、新しく【私の髪】が割り当てられている。ついでに、【可燃ゴミ】と【肥料】合計三個が新しく割り当てられているのも見つけた。


異世界初日、だというのに順調すぎるほどに順調で、のんびりお風呂に浸かっている。はぁ、極楽極楽・・・。


もう一度、肩までお湯に浸かってよく暖まってから、もったいないような気はしたけれど排水する。


潤いを残すように乾燥をイメージすると、髪まで乾いているし、お風呂の床や壁もいつの間にか乾いていて、窓や鏡に湯気の曇りもなければ、天井にも水滴一つない、排水後の浴槽も既にキレイだった。


お風呂上がりなのに、ドライヤーもタオルもバスマットすらも要らない。シャンプーとボディソープのボトルを持ってお風呂を出たけれど、お風呂の掃除は本来とても厄介なものなのに、お掃除不要でキレイが続くなんて、なんて気持ちの良いが簡単にできる生活なんだろう。


身体が暖まっているうちに、とりあえず下着だけ着て、化粧水をパタパタと優しく肌に伸ばす。軽く伸びをして前屈してから、背中を反らして腕を伸ばしたら、いとも簡単にブリッジができて、ちょっとだけ足に力をいれたら回って立てちゃった。これ、勇気があったらバック転できちゃう!?


勇気・・・ウ~ン、あんまりないよね。そもそも勇気があったら、ここに家造って引きこもるなんてたぶんしない。うん、勇気はあんまりどころか全くこれっぽっちもない。それで良い。少なくとも今は・・・。


ということで、タオルと着ていた衣類を洗濯乾燥機に入れて左上に一個だけあるスイッチらしきボタンを押すと、緑色だったボタンが赤くなった。洗剤不要っぽいマークといい、給水音や動作音も一切ない驚きの仕様だ。


手持ちぶさただったので、キャミソールとレギンス、靴下、スウェット素材の楽なワンピースドレス、カーディガンに着替えて、探検再開。でもここの靴下って、いわゆるガーターベルトで留める長靴下でちょっと不便、なんて思いながら寝室の扉を開いた。

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